夫 丈夫 大丈夫

 「夫」という漢字は、中国語、日本語とも意味は同じで、いずれも配偶者である男をあらわす。この意味の現代中国語では、「夫」よりも「丈夫」が多く使われている。

 「丈夫」という言葉は、春秋時代に始まった。本来の意味は成人の男子で、男子は、成人すると、背丈が一丈ほどになることから、「丈夫」とされたのである。当時の一丈は現在の一丈(約3.3メートル)よりずっと短かった。そうでなければ、古代の人びとは、いずれも3メートル以上の巨人になってしまう。近代になってから、「丈夫」の意味は、配偶者の男を指すようになった。ところで、「丈夫」は、日本語にあっては、「しっかりしている」「頑丈で壊れにくい」の意味で使われている。男は女より“強健”だからだろうか。中国人にしてみると、実に面白い。

 さらに面白いのは、「大丈夫」である。中国語の意味は、「男らしい男」のことだが、日本語では、「かまわない」「問題ない」の意味で使われる。「丈夫」以上にしっかりしている、つまり「大丈夫」は、全く問題ない、ということなのだろうか。

 中国語における「夫」「丈夫」「大丈夫」は、意味が近い。ところが、日本語における意味は全く違う。言語の転化と転義が奇妙で、中国人は、ただただ驚くばかりである。
ひとこと付言すれば、日本語における「丈夫」「大丈夫」には、あまり使われない読み方がある。それは「じょうふ」「だいじょうふ」で、この時の意味は、中国語における意味とまったく同じである。




 
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