愛   人

 ある日本からの代表団が中国人の家庭を訪れたときのこと、日本語がちょっと分かるご主人が、妻を指さしながら「これが私の愛人です。」と紹介した。

 聞いてびっくりしたのは日本人の客。「ほんとうに愛人だろうか」と小声でささやきあったという。明らかに誤解である。

 ご主人は、「これが私の妻です」の意味で、中国語の「愛人」を日本語読みしたのだった。

 「愛人」という言葉は、中国語も日本語も元は同じで、いずれも「愛する人」の意、つまり「恋人」の意味だった。

 ところが、両国の社会も言語環境も違うために、異なる新しい意味が加わり、日本語では「情夫」「情婦」の婉曲な言い方として用いられるようになり、中国語では「夫」「妻」の“代名詞”として普及したのである。

 解放前の中国では、「男尊女卑」の観念から、日本で夫を「主人」と呼び、妻を「家内」と呼ぶのと類似したさまざまな言い方があった。

 解放後、男女平等を反映して「愛人」が夫婦間の“代名詞”として使われるようになった。

 いまのところ、日本語には、こうした新しい夫婦間の“代名詞”がまだ確立していないが、いつかは「ご主人」「奥さん」に代わる“代名詞”が確立するのでは……




 
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