天 井

 天井という言葉も、中国語と日本語で意味が違っているものの一つだ。

 読者の中には、四合院という中国の伝統的な住居形式をご存じの向きも少なくないだろう。四方に建物を配し、真ん中を野天の庭にした、その四合院の中庭を院子というが、またの名を天井ともいうのは、この四合院の全体図を上から見たときに井戸の囲いのような形になるからだ。

 もともと天井という言葉には、三つの意味があった。

 第一は、四方を山に囲まれた窪地のことで、孫子の兵法には、こんなところへ軍隊を出動させてはならぬと書かれている。今日の天井は、恐らくここから意味が発展してきたのだろう。

 第二は、部屋の上の梁の間に張りつけた板のことで、その形がちょうど「井」のようになっているところからきたもの。今日の中国語ではこれを「天花板」といっているが、これこそまさしく日本語の「天井」にほかならない。

 そして第三は、古代天文学で考えられた二十八宿の一つ、井宿(和名ちちりぼし)のこと。

 中国語と日本語で意味は変わってしまったが、いまも住居という共通項を持っているのが、おもしろいところだ。




 
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