悩とナウ

 「悩」という字は、日本の常用漢字体では「悩」、中国の簡体字では「ナウ」と書く。字の形はほぼ同じだし発音も似ている。ところがこれに「殺」という字がつくと、違った意味になってくる。

 日本の芸能雑誌などを読むと、ナントカという女性歌手がファンを「悩殺」した、といった記事がときどき目に入る。だが少し日本語をかじっただけの中国人には、これがわからない。この歌手は観客に受けなっかたのか、と思うのだが、記事に添えられている写真を見ると、逆に観客席は大変熱狂的だ。さてこれはどういうことか?

 「ナウシャー(シャーは殺の簡体字)」という字から中国人が思い浮かべるイメージは、非常にうんざりするとか、気がすっかり滅入ってしまう、といった感じものもで、男が女性的魅力のとりこになるというような意味は全然ないのだ。

 「ナウシャー」という言葉は、現代中国の話しことばではあまり使われなくなっているから誤解が生じるおそれはまずないけれど、日本語の「悩殺」と中国の「ナウシャー」とは違うということをお忘れなく。




 
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