東 西

 東、西といえば方角をあらわす言葉で、中国語でも日本語でも同じ意味だが、中国語ではこの2字を一つの名詞にして「物」の意味に使うことが多い。日本語の「もの」は非常に意味が広く、形のないものでも「もの」と言うが、中国語の「東西」は必ず一定の形を持つ。

 だが、方位詞の「東西」が物という意味を持つようになった理由を知る人は、中国人でもそう多くはない。朱子学の祖となった大学者の朱熹さえよく知らなかったのだ。

 ある日、朱熹が道で友人の盛温如に出会った。盛温如が竹かごをもっているので、どこへ行かれるのか、とたずねると「買東西」という答えが返ってきた。買う物がどうして「東西」であって「南北」ではないのかと重ねて聞かれて盛温如は「五行」ですよ、と答えた。五行の木金火水土は方位詞の東西南北中と対応する。つまり東は木で西は金だ。木と金は竹かごに入るが、南は火、北は水だから竹かごに入れることはできない、という意味だったのだ。

 中国語の「東西」は人を指す場合もある。たとえば「小東西」といえばガキとかチビッ子、「壊東西」といえば悪いヤツとなり、好ききらいの感情が入ってくる。日本語の「もの」も、中国語の「東西」も、ともにむずかしいモノではある。




 
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