通訳泣かせの字

 いうまでもなく漢字は中国で発明された文字だが、少数ながら日本で発明された漢字もあって、日本ではそれを「国字」と呼んでいる。「辻」「畑」「畠」などがそれだが、この字を見ると中国人の日本語通訳はイヤアな気になる。

 例えば辻先生という方が中国に来られたとする。この字は、現代中国の標準的な辞書である『現代漢語辞典』にも載っていて、発音は十と同じく「シー」と読み、「日本漢字、十字路のこと。日本姓名に多用」と説明されているが、その辻先生を中国人に「こちらは十字路先生です」と紹介するのもへんだ。シーといっても同音の字がたくさんあるので、「走之児(シンニュウのこと)に数字の十」と説明はしても、それでわかってもらえるかどうかは疑問。まして「辻川先生」という方を「十字路川先生です」などと紹介したら、川が十字路になってるとは日本も珍しい国だねェ、などということになりかねない。

 行き来する(シンニュウの原義)十字の場所が「辻」、乾いた田は「畑」、山の上り下りの分岐点が「峠」……うまく作ったもんだと感心はするが、日本漢字が通訳泣かせの字であることには変わりない。




 
本社:中国北京西城区車公荘大街3号
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。