老 婆

 まだうち若い妻を紹介するのに、「これがわたしの老婆です」と語り始めたら、それこそ日本人の客人はびっくり仰天してしまうことだろう。

 しかし、不幸にも(!)、現代中国語にあってなお、こうした解放前からの男尊女卑用語が生き残っているのである。

 日本語の「愚妻」に通じるものがあるとはいえ、「老婆」ではあまりにヒドいではない。
実は邸宅でも「寒舎」と言うのと同様で、中国人の“けんそんしすぎ”から生まれた言葉なのである。

 新中国になってから、夫が妻を、妻が夫、第三者に紹介する時に、「愛人」の呼称が使われるようになったものの、「老婆」は今も生きている。

 おもしろいのは、妻の方からの“逆襲”もあって、夫のことを「我老頭」(うちのじいさん)と呼ぶ言語習慣があること。「老婆」と呼ばれたら、「老頭」デ言い返せば、つまり、“男女平等”ということに。

 それでは、ほうとうの老婆は何と言うか。「老太婆」。こちらは語調もやわらかく、しかも敬老の意味合いも加わる。

 「老婆心から忠告する」は「苦口婆心地忠告」。口に苦いでしょうが、老婆心から、といった意味。




 
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