「�ｹ林絵画名作展」の打ち合わせをする左から中川夫人、�ｹ林さん、中川氏、沈文玉・人民中国社長（北京で）

　広島県福山市にある中川美術館の館長・中川健造氏は、ｵﾋ林さんの絵画について、こう語る。

　「ブドウを描いた彼女の作品に強くひかれ、私の最初の著書『中華人民共和国絵画名作集』（1985年、山手書房）に、著名な画家に伍してその作品を紹介した。その後、お目にかかる機会があり、親交を深めている」

　「『�ｹ林絵画』の大ファンとなった私は、89年に�ｹ林絵画展を中川美術館で開催。そのときにいただいた彼女の経歴を見て初めて、彼女が中国の最高実力者・�ｹ小平氏（当時）の長女であることを知った。堂々たる画風に納得がいった」

日中国交正常化30周年の記念切手に採用された�ｹ林さんの絵『紫藤花』を前に中川氏（右）。互いに絡み合いながら、大きく美しい花を咲かせようという気持ちが、この絵に託されている。それはまた日本と中国の関係を示しているという

『秦風』。大らかに手をとりあい、ブドウの実の如くみずみずしいたくさんの果実を実らせたい――伝統的な水墨画ににじみ出る�ｹ林さんの想いだ。

『天女』。日本の空に舞う「鯉のぼり」を見たときに、敦煌の壁画に描かれた天女の舞を連想して描いたもの。風に向かって舞う勢いを表現したかったという

　「画風には含蓄があり、朴訥で稚拙ささえも漂わせていたが、�ｹ小平氏の長女の風格が画面ににじみ出ていた。中川美術館での最初の絵画展は大成功で、多くの人々の共感を得た。私も大満足であった」

　世界のいたるところで、社会が急速に変貌をとげている。現在、絵画芸術の世界でも「精神の発露」のある作品こそが、21世紀の現代絵画界のトップ作品になるといわれている。

　西洋絵画では20世紀初頭にフォービスムが台頭し、画面上に「勢い」を強調した。近年、世界の美術評論家は、中国の絵画理論家・謝嚇の唱えた「気韻生動」を芸術作品に求めている。その傾向の中で、「勢いと精神の発露」のにじみ出たｵﾋ林絵画に、いま世界中の美術評論家が熱い視線を注いでいる。

　�ｹ林さんは、中国の「文化大革命（文革）」中に、多くの試練をうけた。中国の名門・中央美術学院の在学中に「文革」が勃発し、父・�ｹ小平氏が追放され、�ｹ林さんも苦しい環境の中での生活を余儀なくされた。長い期間、不遇で困難な生活を送った�ｹ林さんは、父の復帰とともに再び絵筆を握ることになる。こうして、ためていたエネルギーが一気にあふれ、芸術性の高い「気韻生動」のあるｵﾋ林絵画が生まれたのである。

10月から開かれる日中国交正常化30周年記念「�ｹ林絵画名作展」の案内

　その�ｹ林絵画の秀作をあつめて紹介する、日中国交正常化30周年記念「�ｹ林絵画名作展」が10月12日から11月25日まで、中川美術館で開かれる。中川館長は「『鳥ないて、その友の声を求む（詩経）』の心境だ。多くの方々に、この名作絵画を見てもらいたい。21世紀の名画を『今見て、今語ってほしい』」と抱負を語っている。

�ｹ林絵画名作展

主　催　中川美術館、人民中国雑誌社
後　援　中国大使館、
　　　　日本中国文化交流協会
会　場　中川美術館（〒720―0411広島県福山市熊野町鶯の里）
会　期　2002年10月12日〜11月25日
開　館　午前10時〜午後4時
入館料　高校生以上900円
休館日　毎週火・水曜日

[�ｹ林さん略歴]
　
女流画家、故�ｹ小平氏の長女。1967年、中央美術学院・中国画学部花鳥学科卒業。著名な画家・李苦禅に師事し、伝統的な水墨画を学ぶ。名画家・李可染にも教えをうける。89年、中川美術館で�ｹ林絵画展を開催。2001年、中川美術館「中国絵画ニイハオ・西洋絵画グッドバイ展」に参加。東方美術交流協会会長、中国美術家協会会員（2002年10月号より）