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17回党大会の会場(写真・沈暁寧)

 

中国共産党の第17回全国代表大会(17回党大会)は、世界の注目を集める中で閉幕した。この会議はまさに、中国共産党の執政58年目、中国が改革・開放を旗印にした新たな時代に入ってから30年目に開かれた。中国の経済の発展と国力の上昇にともなって、発展の過程や経済体制の転換期のさまざまな矛盾や問題も、中国共産党の執政能力にとって試練となっている。絶えず世界と一体化する中国の未来は、どのような姿になるのだろうか。

 

今回の会議は、国の経済と人々の暮らしにかかわる多くの重大問題を詳しく論じ、確定した。ここで、10のキーワードを慎重に選んでみた。これはおそらく、国際世論が注目しているホットな問題を理解し、17回党大会とその後の中国を理解するうえで、助けとなるだろう。

 

 「科学発展観」(科学的発展観)  「以人為本」(人間本位)

持続可能な発展の道を歩むため、稚魚を放流する子供たち(新華社)

 2004年2月、中国共産党の部長(大臣)・省長クラスの官僚たちが北京の中央党学校に集まり、「いかにして科学的発展観を樹立し、実行するか」という特定のテーマについて検討した。その後、「科学的発展観」は中国共産党の執政の新たな理念の一つとなり、全国に速やかに伝えられた。

 

中国の新たな指導者が提起した「科学的発展観」は主に、この10数年、中国が高度成長を遂げた後に出現したさまざまな問題に、正面から立ち向かっている。例えば、一面的に経済の発展の速度を追求し、資源や環境の保護をおろそかにすること、都市と農村、地域と地域、経済と社会の間の発展の不均衡が激化していること、収入の格差が拡大し、鉱山の災害など安全生産にかかわる事故が頻発していること、などである。

 

「科学的発展観」は「以人為本」(人間本位)をとくに強調し、社会と経済の全面的で調和のとれた、持続可能な発展を実現し、経済発展の質と効率をさらに重視し、資源の節約と環境の保護をさらに重視し、発展は人民のためであり、発展の成果は人民すべてがともに享受することをいっそう強調している。

 

最近数年の科学の発展の中で、中国は資源節約型の、環境に優しい国づくりを提唱している。中央政府は一連の優遇政策を打ち出し、中西部地区の発展の加速を支援している。また、農村経済を発展させ、新農村の建設に重点を置いている。

 

17回党大会で、「科学的発展観」は党規約に書き込まれ、中国共産党の当面の核心的な執政の理念になった。それは今後、中国の社会・経済の発展のそれぞれの面に深い影響を及ぼすであろう。

 

湖南省の農民たちは、納税の「負担カード」に別れを告げた(CFP)

 先ごろ、湖北省黄石市政府は『農民工問題の解決に力を入れることに関する意見』を公布し、農民工が都市住民と同じ公共サービスを享受するよう規定し、とくに農民工が、戸籍や給与、子どもの入学、社会保障などの面で都市住民と同等の待遇を受けられるよう強調した。これは、中国共産党が進める「以人為本」(人間本位)の執政の理念を具体的に体現したものであると言うことができる。

 

「以人為本」とは、「もっとも広範な人民の根本的利益を実現することが、すべての発展の根本である」ということである。中国の社会と経済の調和のとれた発展を促進するために、人々がもっとも関心を寄せ、もっとも直接的で現実的な利益にかかわる問題を解決することが、党と政府の仕事の重点となった。

 

人民の利益を守ることから出発し、この4年の間に、中国政府は、2000年以上にわたって延々と続いてきた農業税を廃止し、1億4800万人の農村の小、中学生の学費を免除し、2204万人を超すレイオフされた人々の再就職の実現を助けた。もちろん、中国の人々が得た実益は、はるかにこれに留まるものではない。

 

今日の中国社会では、「幸福指数」「快楽指数」などの言葉が流行語となっているが、これも人々が生活の質を追求するようになったことの証である。17回党大会の報告の中で、「人道的配慮と心のケアを重んじ、正しいやり方で人間関係を処理する」ということを初めて提起した。これは、相互に尊重しあい、信頼しあい、助け合う社会の空気を造成するためであり、政治をつかさどる者が、人々の物質的利益から精神生活まで、全面的に配慮していることを表している。

 「創新型国家」(創造革新型・国家)  「資本市場」

フランクフルトのモーター・ショーで「吉利」は独特な新車発表を行った(張燕燕)

 10数年前、民営企業の吉利公司が自動車製造事業を始めたばかりのころは、困難ばかりであった。銀行は信用してくれず、業界では認められず、自動車部品会社は部品を納品してくれなかった。しかし今は、数十万台の吉利自動車が全国各地を走り回り、外国にも輸出されている。製品はすべてデジタル・シミュレーションで開発され、グレードアップが加速され、自ら研究開発し、生産された自動変速装置などの核心の部品は100%国産化された。

 

企業は、技術の創造革新の主体である。しかし長い間、中国の企業の自主的な創造革新の能力は弱かった。「1台のコンピューターを売っても、ネギ一束の銭を稼ぐことしかできない。10億枚のワイシャツを売って、やっと1機のボーイング機しか買えない」といった困ったことを、つぶさに体験してきた。そうした厳しい現実が、「メード・イン・チャイナ」から「中国開発製造」へ転換しなければならないという中国政府と企業、科学研究部門の共通認識をつくり上げる助けとなった。

 

2005年、中国の全社会が投入した研究開発経費は合計2450億元で、国内総生産(GDP)の1.34%を占めた。政府は、2010年には、これを約5300億元に飛躍的に増やしたいと計画している。それと同時に、各地で続々と、創業を奨励し、創造を尊重し、創造革新を呼び起こす一連の政策と措置が打ち出された。中国のシリコンバレーと呼ばれる北京の中関村は、海外で学んで帰国し、創業する人たちを多く集め、彼らの創造革新の活力は、北京にとどまらずさらに広い地域を発展させるエンジンとなっている。

 

「自主的な創造革新の能力を高め、創造革新型の国家を建設する」。これは、将来の国家発展戦略の一つとなっている。

 

ナスダック株式市場のオープンニングベルが北京で鳴らされた(新華社)

 2007年4月3日、米国のナスダック株式市場のオープニングベルが北京で鳴らされた。ナスダックのロバート・グレイフェルド総裁は、これをもって、世界経済に対する中国経済の大きな貢献に感謝し、あわせて40社の中国企業がナスダックに上場したことを祝う、と述べた。

 

中国はすでに、株式制度が資本主義制度の産物であるとの過去の認識を改め、株式制度を社会主義市場経済の重要な構成部分と見なしている。1990年末、上海と深シンの二つの証券取引所が設立され、現在は1500以上の上場企業を擁しており、今年の9月までに株価総額は、24億5300万元を突破した。

 

この4年の間に、中国の株式市場は全体的に値上がり、家庭収入は増えた。これにより1億3千万を超す大陸民衆は、株式やファンドに投資する財テク方式を選んだ。このほど、中国国家外貨管理局は、大陸部の居民が直接、香港株式市場に投資することのできる試験的地点を設け、初歩的に個人による投資と国際証券市場がつながることを許した。

 

この30年で、中国・大陸部では、個人経営、私営及び外資企業からなる非公有制企業が全国企業総数の95.7%を占めるようになった。昨年、中国が吸収した外資の直接投資は630億ドルに達した。世界のトップ500の企業の内、約480社が中国に投資し、事業を起こし、71の外国銀行が中国に支店を設立した。世界の75の国々が、中国が完全な市場経済の国であることを認めている。

 

中国の経済体制の市場化改革は、迅速に進んでいる。

 「社会建設」  「民主政治」

中国の企業の定年退職者は、基本の養老年金が全般的に引き上げられた(写真・任衛紅)

 「子供を育てて老後に備える」というのは、中国人の伝統的な観念である。中国古代の思想家、孟子は「自分の親をいたわる心を他家の親にまで及ぼす」という社会の理想を唱えたが、それは夢に過ぎなかった。現在、中国政府は都市と農村の養老保険を推進し、養老年金を増やすなどの措置を通じて、社会の養老保障体系を完全なものにしている。これは中国共産党が、経済を発展させる基礎のうえに、ますます社会建設を重視していることを示す一つの重要な内容である。

 

17回党大会は民生の改善を、今後の中国の社会建設の重点とした。これは、中国共産党が全面的に、よりいっそう人々の生活の質を高めることを執政の理念に組み入れ、人々の収入を増やすよう努力することを基礎として、その上に教育や収入の分配、医療、就職、養老など人民の幸福と健康に関わる社会管理とサービスシステムを建設し、完備することを示している。

 

2002年以来、政府は政策上の扶助と財政支出を通じて、都市住民の失業率を4.3%以下にとどめ、4500万を超える都市と農村の貧困人口が最低生活保障を享受することができた。昨年1月、国は個人所得税制度を調整し、高額所得者が多く税を納め、中・低額所得者は少なめに税を納めるという合理的な納税システムが完成するよう促した。今年、国はまた、貧困学生を経済的に援助するため454億元を支出したが、来年はそれを倍増し、約2000万の大学生や高校生、中学生が奨学補助金をもらえる見通しだ。

 

公共サービスを拡大し、社会管理を整え、社会の公平と正義を促進することは、すでに中国共産党の執政の新たな目標になっている。

陜西省の農村で行われた村民委員会の選挙(写真・李新民)

 「当選すればこの地の国内生産総値を4倍にする」と公約した陳国華さんは、有権者の3分の2の票を得て、重慶市渝北区竜興鎮の党委員会書記に当選した。

 

中国は3年前から、末端組織の党委員会書記を「公開で推薦し、直接選挙する」ことを始めたが、こうした党の末端組織の政治体制改革はすでに重慶市、四川省、湖北省の200余りの郷と鎮で展開されている。さらに全国では90%を超す行政村が、直接、その村の村民委員会を選挙している。

 

中国共産党はいま、政治体制改革を発展させている。2002年の16回党大会で提起された「積極的かつ確実に、政治体制改革を推し進める」方針を基礎に、17回党大会では「政治体制改革を深化させる」ことを提起した。

 

17回党大会の代表選挙は、候補者が定数を上回る「差額選挙」で行なわれたが、候補者の定数超過の比率は、ほとんどが15%以上で、16回党大会の時より5%が高くなった。省クラスの党代表大会代表の選挙の差額比率はさらに高い。

 

つい数カ月前、共産党員でない自動車の専門家である万鋼氏と医学専門家である陳竺氏が、それぞれ科学技術部部長と衛生部部長に任命された。

 

「民主」という言葉は、17回党大会の報告の中に60回以上現れた。胡錦涛総書記は「各レベル、各分野で公民の秩序整然とした政治参加を拡大し、人民にもっとも広い範囲で働きかけ、法による国の事務や社会の事務の管理を行なわせる」ことを強調した。

 

米国のブルッキングス研究所の中国研究専門家のデビッド・シャンボー高級研究員は「中国共産党が現在行なっている政治体制改革は、活力に溢れる有機体を再びつくり上げることを目指している」と語っている。

 

 「懲治和予防腐敗」(腐敗の懲罰と予防)  「生態文明」(エコロジー文明)

「国家予防腐敗局」の看板が掛けられた(写真・李濤)

 官僚の腐敗は、中国では庶民がもっとも関心を寄せている話題の一つである。各種の世論調査は、腐敗の問題に対し民衆がもっとも不満を持っており、政府に解決するよう望む切迫した問題の一つでもあることを示している。

 

長年、中国共産党は絶えず腐敗反対に力を入れてきたにもかかわらず、最近の4年間に、前政治局委員で上海市党委員会書記だった陳良宇を含む29人の部長・省長クラスの高官が審査を受け、処分された。しかし、腐敗の問題を根本的に抑え込むことはできていない。中国の改革の深まりや経済、社会、利益構造の調整にともない、新しい社会の矛盾と問題が絶えずに出現している。腐敗の問題は、一部の分野においてさらに際立ったものになっている。

 

執政党の生死存亡にかかわるこの難題を解決するため、中国共産党はしっかりした態度で臨み、市場経済という条件の下で外国が腐敗を退治した経験を積極的に参考にしながら、制度の整備をさらに重視し、権力の制約メカニズムと監督メカニズムを絶えず充実し、権力が白日の下で行使されるようつとめている。2005年10月には、中国は『国連反腐敗公約』に加盟した。2007年5月31日には、腐敗を予防する国家クラスの専門機構である「国家予防腐敗局」が設立された。

 

腐敗を防ぎ、根治する長期間で有効なメカニズムを打ち立てることは、中国共産党の腐敗反対の新しい知恵と考えられている。17回党大会の報告が「その根源から腐敗を防止し、根治する活動の範囲を拡大する」と述べたのは、国が立法、司法、行政などの手段を総合的に運用し、根本から腐敗を予防し、根治しようとしていることを意味している。

 

開発際しエコロジーの保護を忘れない。フクロウの雛たちが安心して暮らせる新しい家を提供した(写真・陸綱)

 湖北省の洪湖のほとりに住んでいる張聖元さんにとって、水鳥や魚、エビ、レンコン、ヒシの実は、楽しかった子どものころの思い出になっている。しかし、1980年代の中ごろから、水産物の人工養殖をやりすぎたため、湖水はひどく臭くなり、水産物もほとんど捕れなくなった。

 

洪湖のような悲劇は、中国では決して珍しくない。これに対し中国共産党は、人と自然の調和の促進、経済発展と人口、資源、環境との調和の実現を打ち出した。2003年から2006年まで、500万ヘクタール以上の耕地が元の森林に回復し、3000万ヘクタール近くの牧場が元の草原に戻った。2006年、中国は標準炭換算で3000万トンのエネルギーを節約し、都市の汚水と生活ゴミの無害化処理率はともに50%を超した。2007年前半に国は、汚染が激しく、エネルギーの消耗が大きい小型の火力発電ユニットと、資源浪費がひどく、生産事故が頻発している小型の炭鉱の多くを閉鎖したり、生産を停止したりした。

 

このようにして、洪湖も効果的に整備された。今、湖水の水質は好転し、水鳥の数は5万羽以上になり、水生植物が95%以上の湖面を覆っている。洪湖の鳥類保護員になった張聖元さんは、昔の洪湖の美しい風景が再び見られるようになったことをうれしく思っている。

 

17回党大会で、「エコ文明の建設」が初めて執政党の戦略目標の一つになった。これは、伝統的な工業文明に対し、理性的に再認識した結果生まれたものであり、「エコ文明」が中華民族の生存と発展にとって重要な意義を持つことを十分に体現しており、中国が責任ある大国であるというイメージを示したものだ、と専門家は考えている。

 「和平協議」(平和の合意)  「和諧世界」(調和のとれた世界)

大陸部から中国民航機が初めて台湾に到着した(写真・何自立)

 中国共産党は「海峡両岸関係の平和的発展の枠組みを構築する」ことを打ち出し、話し合いを行って、平和の合意を達成するよう呼びかけた。「和平協議」という言葉が党大会の報告の中に現れたのはこれが初めてである。

 

海峡両岸の同胞は、同じ源から発し、血がつながっており、共通の祖先と共通の文化、共通の故郷を思う心を持っている。この事実は永遠に変えることはできない。

 

報告が「13億の大陸部同胞と2300万人の台湾同胞は、血のつながっている運命共同体である」などと述べたことについて、江蘇省昆山の台湾同胞投資企業協会の李寛信会長は「17回党大会は広範な台湾の企業家に優れた投資環境とその舞台を提供してくれました。私たちは大陸部からの関心と支持を深く感じています」と感慨深そうに述べている。

 

1987年に海峡両岸が交流を始めてから今年の7月までに、海峡両岸の貿易額は累計で6699億ドル、台湾の大陸に対する貿易黒字は4386億ドルに達した。台湾企業の投資プロジェクトは74000件近くに達し、大陸部はすでに台湾の最大の貿易パートナー、最大の貿易黒字の源泉、最大の投資の目的地になっている。大陸部に常駐する台湾企業家とその家族の数もすでに百万人を超している。これらのデータから、海峡両岸の経済貿易交流の盛んな繋がりの一端を見ることができる。協力のレベルを高め、互いに利益がある「ウィン・ウィン」を実現することを、海峡両岸はともに待ち望んでいる。

 

台湾問題を解決する基本原則として、17回党大会は「一つの中国」を重ねて言明した。そこから、中国共産党の将来の台湾に対する政策をうかがい知ることができる。それは、最大の誠意をもって、平和に希望を託し、「台湾独立」分裂活動に反対する最低ラインは絶対に譲歩しないということである。

 

インド洋津波被災地で活動した中国の国際救援隊の隊員たち(写真・呉敏)

 2007年10月、中国は、スーダンのダルフール地方に、初めて平和維持部隊の配置を始めた。これは国際社会で広く関心を集めているダルフール問題の解決推進のために中国が行なった努力の一部である。

 

中国は、世界の平和と発展を促進し、人類が直面している共通の挑戦に対応する中で、自らの責任を引き受けている。世界貿易機関(WTO)のパスカル・ラミ事務局長は「開かれた中国は、真に責任を負う強国にもなるであろう」と語っている。

 

2006年11月、中国アフリカ協力フォーラムの北京サミットが挙行され、中国とアフリカは新しい形の戦略的パートナーシップを打ち立てると宣言した。中国政府の提起した、中国とアフリカの発展を推進する8項目の政策と措置は、広く歓迎された。世界銀行の最新のレポートは、中国のアフリカに対する投資が、アフリカの経済成長にプラスの影響を与えている、と指摘している。世界は今、南北格差が引き続き拡大する状況下にあるが、中国は独特なやり方で貧富の格差を除去し、弱者を助けるという面で自ら貢献している。

 

「和諧」(調和)という考えは、中国の伝統文化の真髄である。中国古代の哲学家、孔子は「和而不同(和して同ぜず)」という思想を、次のように詳しく解説してている。「世の中には違いや矛盾が充満しているが、君子は矛盾と衝突の中から平衡を求め、和諧を実現することができる」と。

 

実際、経済を発展させるとともに世界平和のために努力することは、中国自身の平和的発展を対外的に延長したものである。だから、17回党大会では、中国がこれからもずっと平和発展の道を変わらずに歩み続け、平和を永続させ、ともに繁栄する、調和のとれた世界の建設を推進することが強調されたのである。

 

 (本誌編集部)

 

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