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月への夢をかなえる 衛星「嫦娥1号」
 

宇宙観測の第一歩

 

 「嫦娥1号」の月探査は、中国の宇宙観測の第一歩に過ぎない。計画によると、中国の月探査プロジェクトは、次の3段階に分かれている。(1)月周回軌道を飛行(2)2012年前後に月面への軟着陸を実現(3)2017年までに月の土壌と岩石を採集して地球に持って帰る。

 

もっとも注目されているのは、有人の月面着陸の実現はいつかということだが、これについてはまだ具体的な計画はない。プロジェクトの総指揮官である欒恩傑さんは、「今回の打ち上げは、月への片道切符に過ぎません」と笑う。

 

このプロジェクトを実現させた後、中国は月をジャンプ台としてさらに広い宇宙空間で科学的観測を進める予定だ。

 

月は、人類がより広い宇宙空間へと向かうための理想的な乗換駅である。大気層がほとんどなく、重力も小さいため、月面から宇宙観測機や有人ロケットを打ち上げるのは、地球に比べて簡単なのだ。必要なエネルギー量も少なくてすむし、ロケットを打ち上げるときに使う原料も月で直接調達できる。

 

このほか、将来、火星の探査を行うときにキーポイントとなる技術もすべて月面でテストできる。宇宙飛行士の訓練も可能だ。月面上で徐々に宇宙生活に慣れることによって、火星およびさらに遠くの星への飛行の準備となる。

 

中国は現在、第2段階、第3段階の月探査プロジェクトのために、月面車の開発を進めている。この月面車は、月だけに用いられるわけではない。科学者たちは、将来の月面車を少し改良し、その後の火星着陸にも応用したいと考えている。

 

「嫦娥1号」と「かぐや」

 

1999年に月探査計画を始めた日本の月探査衛星と、2004年に始めた中国の月探査衛星が、偶然にも、どちらも自国の月に関する伝説の登場人物にちなんで名づけられているというのは興味深い。日本の「かぐや」は「嫦娥1号」の1カ月ほど前に打ち上げられた。しかしその働きやミッションは異なり、競争関係は存在しない。かえって、相互補助の関係にあるといえるだろう。

 

「嫦娥1号」の主要目的は月面の元素と土壌の特性を観測することにある。この観測は、月の資源の探求の始まりでもあり、最終的に高効率でクリーンなエネルギーの採集を目指す。一方「かぐや」の主要目的は、月の起源や太陽の月、地球に対する影響を研究することにあり、より高度な科学的探究の意義を含む。

 

高精度な月面の映像を撮影し、月の環境を観測するという役割の上では、「嫦娥1号」と「かぐや」はある程度重なるところがある。両者とも、今後、月面基地を建設するための準備をしているのだ。

 

打ち上げの瞬間 メーンコントロールルーム
 中国、日本以外にも、インドやEUの国々が相次いで月探査計画を打ち出しているが、目的や働きはそれぞれ異なる。昔に比べ、今日の月探査プロジェクトはより開放された科学探究活動となっているといえるだろう。

 

中国も今回のプロジェクトの過程の中で、米国や日本、ロシアなど多くの国と協力して学術会議を開き、観測データを共有して、宇宙を探求するという人類の夢をともに実現しようと試みている。  (高原=文)

 

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