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全面的に見て、平常心で臨もう 北京オリンピックが近づいたいま

 

欧州科学アカデミー会員 元中国外交学院院長 呉建民

 

  北京オリンピックが近づくにつれ、中国は次第に国際メディアの焦点となってきた。中国を敵視するさまざまな勢力は、中国を「悪魔」のように見なし、北京オリンピックを中国に対して圧力を加える絶好のチャンスだと見なしている。彼らはいろいろ企みをめぐらし、紛争をつくり出し、さまざまな騒音を発している。一部の西側のメディアは、こうした騒音をも大いに誇張し、事実を歪曲したさまざまな報道を行い、中国の人々と世界の華人の憤激を呼んでいる。

 

今日の情勢をいかに見るべきか。私は、全面的に見なければならないと考える。2001年7月13日、国際オリンピック委員会が2008年のオリンピックを北京で挙行すると決定したのは、決して偶然ではない。これは、二つの大きな趨勢が動かした結果である。

 

近代オリンピックの歴史全体をみると、1896年に第1回オリンピックが開催されてから、1968年のメキシコ・オリンピックを除いて、オリンピックは毎回、先進国で挙行されてきた。しかし、オリンピック運動は全人類のものであり、オリンピック運動がさらに発展するためには、先進国から発展途上国へと向かわなければならない。それはオリンピック運動が発展するために必要なことである。  国際関係の発展の変化から見れば、前世紀末から今世紀の初めにかけて、国際関係の中で、多くの発展途上国の勃興する大波が起こった。アジアでは東南アジア諸国連合(ASEAN)、インド、中国が勃興し、アフリカでは南ア、ナイジェリアなどが勃興し、ラテンアメリカではブラジル、メキシコ、チリが勃興しつつある。こうした国々の人口を加えると、全人類の人口の半分を占める。これは素晴らしいことではないか。

 

人類史上、世界の人口の半分を占める国々が同時に勃興した先例はない。発展途上国の勃興の大波は、21世紀の国際関係の際立った特徴であり、それは世界の姿を変えるに違いない。オリンピック運動はまさにこの歴史的潮流に順応している。

 

全世界の人口は66億人、その中で先進国の人口はだいたい10億人であり、発展途上国の人口が大多数を占めている。途上国は北京でオリンピックが開催されることを心から支持している。なぜなら北京五輪は、オリンピック運動の新たなフロンティアを開拓するものであり、今後のオリンピック運動がさらに途上国の世界へ向かうことを示しているからである。私たちは、北京オリンピックの聖火が途上国にリレーされていく過程で、現地の人々の反応から、このことを鮮明に感じとることができた。

 

たとえ先進国で、オリンピックを政治問題化し、中国を危険だとする人がいようとも、それは先進国の多数の人々の意見を代表するものではない。多数の人々は北京でオリンピックが開催されることを支持している。北京オリンピックは中国のものでもあり、世界のものでもある。

 

だから、北京オリンピックの開催は、世界の潮流の赴くところであり、各国の人心の向かうところである。少数の人が鳴物入りで騒ぎたてても、この大きな情勢を変えることはできない。

 

過去のオリンピックを振り返れば、各回のオリンピックはみな何か、事が起こった。これはオリンピックが世界的な盛大な集会であり、世界には各種各様の矛盾と対立が存在していて、各種の勢力がみなオリンピックの機会を借りて自分たちの訴えを表したいと考えているからである。

 

オリンピックは毎回、何かが起こったのだから、北京オリンピックも当然、その例外ではないだろう。事が起こったらどうすべきか。規則に基づいて処理すればよい。国際オリンピック委員会の規則と中国の法律で処理するのだ。中国は法治国家であり、中国に来て行なわれるいかなる国際的な活動も、中国の法律を遵守しなければならない。事が起こってもなんら恐れることはない。過去のオリンピックで事件が発生しても、オリンピックの成功に影響を与えたことはなかった。北京オリンピックも同じようになるだろう。

 

2008年の北京オリンピックは、中国人の百年の夢を叶えるものである。全中国の人々がオリンピックを一大イベントとしているのはとても自然なことだ。しかし同時に私たちは、オリンピックに対して、平常心で臨まなければならない。平常心とはどういう意味だろうか。

 

まず、北京オリンピックは中国の誉れであり、また私たちが世界に貢献するのだということをはっきり理解していなければならない。私たちはかつて、あまりにも貧しく、オリンピックを挙行することはできなかった。いまは少し発展したので、オリンピック運動を途上国の世界へ広げたいと思っている。だから、オリンピックを破壊することは、中国を損なうだけでなく、世界をも損なうものである。

 

次に、冷静、客観的に、北京オリンピックをとりまく各種の騒音や事件に対応しなければならない、ということだ。少し事件が起こったとしても、それは必然的なもので、予想の範囲内である。私たちは「風波の起こるに任せ、静かに釣り船に座っている」心境でなければならない。

 

第三に、平常心とは理性を重んじることである。一部の人はチベットを中国から分裂させようと企んでいる。これは当然、許されないことだ。私たちが強い憤慨の意を表明するのは、愛国行動であり、まったく正当なことである。しかし、愛国の言動は、理性によって指導されなければならない。真理も、度を過ごせば誤りになる。

 

反中国勢力の中国への中傷に抗議する波の中で、一部の過激な言行も現れた。例えば、カルフールのボイコットやフランス製品のボイコットを呼びかけ、客にカルフールに行かせないという。これらは明らかに理性的ではない。カルフールで働いているのは中国人であり、売られている商品は中国製である。中国人はどうして自分で自分をボイコットする必要があるのだろうか。

 

自分の国を愛するのは、世界各国人民の共通した感情である。とりわけ中国人は愛国感情が強い。しかし、愛国とは、抽象的なものではなく、具体的なものである。愛国は国家の核心的な利益と密接に関連している。

 

今日、中国の核心的利益とは何か。私はそれを「繁栄統一」という四文字に要約できるのではないかと考える。繁栄は統一の基礎であり、中華民族は必ず繁栄へと向かわなければならない。これが今日の中国の核心的利益である。

 

繁栄に向かうには、中国共産党の第17回党大会で定められた方針を真剣に貫徹し、「改革・開放」を続けていかなければならない。中国の「改革・開放」にとって不利な言行は、中華民族の利益に合致しないし、こうした言行を「愛国」ということは絶対にできない。

 

2008年は中華民族の勃興の歴史上、重要な年である。私たちはさまざまな試練と挑戦に直面するだろうが、直面している情勢を全面的に認識し、規則に基づいて事を運び、平常心を保ってこそ、さまざまな挑戦に適切に対応することができ、北京オリンピックを水準の高い、成功したオリンピックにすることができるのである。0806

 

人民中国インターネット版 2008年6月20日

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