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天下の黄河が寧夏を富ます

 

悠々と流れる黄河。古来より寧夏を潤してきた


 黄河の上流域に位置し、昔から「天下黄河富寧夏」(天下の黄河が寧夏を富ます)と称されてきた寧夏回族自治区。今年10月、成立50周年を迎えた。

滔々と流れる黄河、霞みたつ黄土高原に悠久の歴史が息づき、ロマンを掻き立てられるが、目下の課題は、砂漠化した土地の緑化と立ち遅れた経済の発展。50周年を迎えた今日、その思いをよりいっそう新たにしている。

民族の融和を目指して

寧夏回族自治区はその名の通り、回族を主体とする少数民族の自治区である。中国国内の回族人口は約1000万人。55の少数民族の中で、チワン族(壮族)、満州族に続いて三番目に多い。回族は中国全土に広く散らばって居住しているが、寧夏には、中国の回族人口の約21%にあたる214万人が暮らす。

回族の起源は唐代に遡る。栄華を極めた唐の時代、陸と海の交通路を使ってやって来たアラブやペルシャの商人が、回族の直接の祖先と言われている。そして13世紀、モンゴルの西征により、中央アジアのイスラム教徒が大量に中国に入った。こういったイスラム系の外来人と在来の中国人が通婚することで、現在の回族が徐々に形成された。

銀川市内のモスク「南関清真大寺」

 イスラム教を信仰し、それにのっとって生活している回族の人々には、漢族とは異なる文化や風習がたくさんある。とりわけ、豚を口にしないなど、食に関する禁忌は多い。このため、寧夏にはいたるところに「清真餐庁」(ハラール料理店)がある。

また、回族の宗教活動の場となる「清真寺」(モスク)も目立つ。質素な民家が点々とする農村にも立派な「清真寺」があり、回族の人々にとって宗教活動がいかに大切であるのかがうかがえる。

寧夏には回族のほか、満州族、蒙古族、トンシャン族(東郷族)などの少数民族も暮らす。そこで、民族の融和と豊かな民族文化の発展を重視している。

とくに教育は、もっとも重要な課題と位置づけている。

寧夏南部の固原市にある固原回民中学(日本の中学と高校に相当)。2007年9月に建設されたばかりの新校舎は、民族色がほどよく表現され、落ち着いた雰囲気だ。

友好都市関係を結んでいる島根県の高校を視察したという李永智校長は、「印象深かったのは、緑が非常に豊かで、垣根や石畳など自然を生かした設計が施されているということです。子どもたちの学ぶ場はそうあるべきだと思いました。本校もまだ建設の最中ですから、日本の学校を参考に、温かみのある学校にしたいと考えています」と話す。

現在は中学部と高等部が併設されているが、08年9月からは中学部の生徒募集はせず、高等部だけに移行させていくという。「ここ数年、教育水準が大幅に向上し、進学率も上昇しました。今後はさらに、教育設備の充実や教師の増員をはかり、教育の質を高めていこうと考えています。また、生徒の割合は、回族53%、漢族47%です。異民族間の相互理解を深めることも、本校の教育目的のひとつです」

白芨灘の緑化作業の様子
 一人一人の意識で砂漠化を防ぐ

寧夏の中部は黄土高原に属し、荒漠とした土地が広がる。春先、日本にも飛来する黄砂の発生地のひとつでもある。そんな寧夏中部の都市、霊武市で、20年以上、砂漠化防止と植樹造林に力を注いでいる人がいる。白芨灘国家自然保護区管理局局長の王有徳さんだ。

白芨灘国家自然保護区はモウス(毛烏素)砂漠の周辺に位置する。1985年、王さんは白芨灘防砂林場の責任者に任命された。当時、白芨灘林場は苦境に陥っており、砂漠化防止事業は滞っていた。そこで王さんは、必要のない人員の削減や能率給を実施し、職員の士気向上をはかった。その結果、職員たちは積極的に仕事に取り組むようになった。

王さんは霊武市のある村で生まれた。周りを砂漠に囲まれた村だった。10歳を過ぎたころ、砂漠化が深刻になり、よその地に移住せざるをえなくなった。「砂漠化防止に一生を捧げる運命は、このときから決まっていたのかもしれません」

緑化作業のため真っ黒に日焼けした王有徳さん

 白芨灘では植樹造林のほか、「草方格」という方法が用いられている。これは流動性を持つ砂漠の緑化方法のひとつで、麦わらや樹木の枝を砂中に押し込み、低い柵を1メートル×1メートルの格子状につくって、砂の動きを抑えるというものだ。防風・砂の固定効果が高いうえ、自然の素材でつくれるため、環境に影響を及ぼさないといったメリットがある。しかし非常に手間がかかり、大きな労働力を必要とする。王さんは職員に対して、一人あたり毎年一万個の「草方格」をつくることを目標にした。

王さんの強いリーダーシップと職員一人一人の意識により、白芨灘の緑化はおどろくほどの成果をあげた。これまでの流砂防止面積は40万ムー(1ムーは6.667アール)に及ぶ。また、モウス砂漠の中に、東西の長さ42キロ、南北の幅10キロの「緑の壁」をつくり、寧夏平原の砂漠化を防いだ。

しかし緑化した土地はごく一部に過ぎない。まだまだ広大な砂漠が広がる。「砂漠化は寧夏だけで解決できる問題ではありません。中国だけでも解決できません。国際社会の協力が必要です。日本の政府や島根県はこれまで、白芨灘の緑化を資金や技術の面で支援してくれました。本当に感謝しています」

 

 

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