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生態系の保護が発展を呼ぶ

 

山に緑を寧夏回族自治区 彭陽県

原 絢子=文・写真

寧夏南部の山間部は生態環境の修復が進み、緑を取り戻している

寧夏回族自治区の南部は黄土高原の丘陵地帯に属し、乾燥化と土壌流出が深刻な地域である。この地に住む人々の主な生活手段は農業であるが、丘陵と谷が交錯する当地の農業生産性は低く、長年、貧困から脱却できずにいる。

彭陽県は寧夏の東南端に位置する。総面積は2528平方キロ、そのうち耕地は1400平方キロ。農業人口は23万人で、総人口25万人の92%を占める。

「退耕還林」プロジェクト

彭陽県は1983年に設立された。この地はもともと古い歴史があり、4000年以上前の新石器時代にはすでに人間が居住していたと言われている。前漢の時代には、町が形成され始めた。

県内の地質構造は非常に複雑で、険しい丘陵と深い谷が連なる。標高は1248~2418メートル。数十年来、厳しい自然環境とむやみな耕地拡大によって生態環境が破壊され、悪化の一途をたどってきた。彭陽県を設立する前は、水土流失面積が総面積の92%を占めていたという。これにより、土地の退化が深刻化したばかりか、気候の悪化も招き、自然災害が頻繁に起きていた。「10年に9回災害が起こる。10件の災害のうち9件が干ばつだ」と言われるほどで、当地の農業や農村経済の発展の大きな障害となっていた。

このため彭陽県は、設立以来、「生態環境の修復」をキーワードに、荒れた山地に草や木を植えて緑化することを重視してきた。2000年には、耕地を森林や草地に戻す「退耕還林(草)」プロジェクトを全面的にスタートさせた。

環境に適した作物が植えられ管理の行き届いた彭陽県の山村

「退耕還林」とは、1999年から実施されている中国の国家政策で、急傾斜地の農耕や放牧をやめて草や木を植え、農村振興を実現させながら生態系のバランスを回復させようという巨大プロジェクトである。西部大開発の一環でもあり、環境と開発の調和を目指すものだ。06年末までに、荒地を含む計3億6400万ムー(1ムーは6.67アール)の土地を森林や草地に変え、生態環境の回復に大きく貢献した。

しかし実施から8年経った07年、食糧確保のために「退耕還林」は見直しの時期を迎えた。国務院は関連通知を出し、「『第11次5カ年規画』期(2006~2010年)の耕地を少なくとも18億ムー確保するため、同期間にもともと計画していた2000万ムーの『退耕還林』は、06年に実施済みの400万ムーを除いて、しばらく実施しない」と発表した。

彭陽県は06年までに、当初計画していた124万ムーを上回る139万ムーの土地を「退耕還林」した。森林面積はプロジェクト実施前の74万ムーから192万ムーに増え、森林被覆率は22.4%上昇した。

「退耕還林」は黄色だった大地を緑にしただけではない。農業の産業構造を変え、当地の農民の収入を増やした。彭陽県は「飼料となる草を栽培して家畜を飼育する」ことを農村振興の方法のひとつとし、その発展に努めてきた。07年末、飼料となる草の栽培面積は149万ムーに達し、生産量は80万トンにのぼった。そのうち、ムラサキウマゴヤシの栽培面積は102万ムーで、寧夏のムラサキウマゴヤシ栽培総面積の6分の1を占める。農民の1人当たり収入は、99年の1041元から2266元にアップした。

飼料を栽培し家畜を育てる

ムラサキウマゴヤシを刈るムーヤンランさん

いくつもの丘や谷を越え、くねくねと曲がりくねった山道を走ること数十分。小さな村落が見えてきた。彭陽県古城鎮北部の劉溝門村である。人口は1149人、ほとんどが回族だという。

劉溝門村も数年前までは周辺のほかの村と同様、環境破壊と貧困にあえぐ地区だった。しかし近年来、何とか貧困から脱却しようと、「退耕還林」プロジェクトをチャンスに、「飼料となる草を栽培して家畜を飼育する」方法で増収の道を探ってきた。ムラサキウマゴヤシの栽培面積は3200ムーに及ぶ。飼料となる草の栽培面積は耕地面積の52.5%を占める。

村の総面積は9.84平方キロ。日干しレンガでつくられた簡素な民家が点々と散らばる。民家を取りまく畑には、ヒマワリやジャガイモ、トウモロコシなどが植えられている。民家から少し離れた丘の傾斜地には、紫の花をつけたムラサキウマゴヤシが栽培されていた。

太陽がさんさんと照りつける中、ムーヤンランさん(46歳)が、70歳の母親と全国統一大学入試を終えたばかりという息子といっしょにムラサキウマゴヤシを刈っていた。自宅では牛と羊を飼っていて、このムラサキウマゴヤシはそれらのエサにするのだという。

劉溝門村を見る限り、植生が乏しく、やせた土地が広がる荒地という、これまで抱いていたイメージは覆される。生態環境を考えて段々畑が切り開かれ、当地に合った作物が植えられ、視界一面に緑、黄、紫、青などさまざまな色のモザイク模様が広がる。しかし村を出て車で少し走ると、緑がまばらで、地表がむき出しになった荒漠とした土地も残る。改めて、この地の美しい自然景観は、生態環境を修復しようという人間の努力の賜物だということに気づかされた。

中国初の生態文化協会が発足

植生が豊かな四川省の青城山は、古い樹木が空高くそびえ、炎天下の夏の日でも涼しく快適である。2世紀には天師道の道場が建設され、道教の発祥地の一つとなった。この地は森林文化や山水文化、エコロジー文化の意味を体現している

今年10月、中国生態文化協会が北京で結成される。協会の目的は、生態文化を大いに発揚し、環境を大切にする生活を提唱し、ともにエコロジー文化を打ち立てるところにある。この目的のために協会は、全社会に対し大いにエコロジー文化の考え方を宣伝し、自然を尊重し、自然を保護し、自然資源を合理的に利用する理念と行動を提唱し、人と自然の調和を促す。また環境を大切にする生活を提唱し、環境に優しい産業を発展させ、資源を節約し、環境に優しい制度の体系を構築し、省エネ省資源と生態環境の保護の発展方式と消費方式をつくりあげる。さらに社会全体の力を結びつけ、共同でエコロジー文化の建設を推進する。

中国生態文化協会の業務の範囲は広い。エコロジー文化の理念の宣伝、生態文化の知識の普及、環境に優しい生産、生活方式の宣伝、環境に優しい消費への誘導のほか、生態文化の分野での理論研究を組織・展開し、その成果を応用し、模範を示すよう促す。また、「中国生態文化模範基地」を定期的に選び、「中国生態文化高級フォーラム」を定期的に開催する。さらに、生態文化産業を振興し、生態文化の製品を豊かにする。生態文化の分野での国際的協力と交流を展開する。さらに各種の生態文化の交流活動を展開し、生態文化の宣伝刊行物を出版する、等々である。

生態文化の内容は豊富である。このため、中国生態文化協会の下には森林文化、竹文化、花文化、茶文化、園林文化、民族文化、名山文化、草原文化、砂漠文化と科学普及、国際交流、メディアなどの分科会が設けられる。

中国生態文化協会の初代会長には、全国政協人口資源環境委員会の副主任で、中国林学会理事長の江沢慧女史が就任する予定。

 

 

人民中国インターネット版 2008年12月11日

 

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