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伝統を継承し新機軸も 版画家 王煒 氏

 

「蓮池恋情」 240cm×184cm(2003年) 

本誌特約ライター・李艶平   

初めて王煒氏に会ったのは、昨年10月に行われた氏の70歳誕生展覧会の時だった。その日、「王煒七十書画展及び王煒七十漸入佳境(次第に佳境に入る)作品集・文集出版記念式」が中国美術院美術館で開催された。現場には多数の著名芸術家が集い、彼の父親でもある中国版画界の大家・王琦氏、元中国美術館長の楊力舟氏、書画の大家・劉海粟氏の娘で画家の劉蟾女史ら100人余りが出席し、芸術について熱心な交流が繰り広げられた。王煒氏は、始終笑顔を絶やさず、精力的に著書へのサインを行っていた。

 

プロフィール 

 王煒(おう・い)1942年、重慶で芸術家の家系に生まれる。関山月、黄永玉、古元、彦涵、王琦ら巨匠芸術家に学び、長く版画、水墨画、油絵、書道の創作にあたってきた。現在は中国芸術研究院中国版画院院長、中国美術家協会会員、中国書法家協会会員。

そして先ごろ、王煒氏の娘である王萌女史が企画にかかわった「きらめく芸術――第16回北京国際芸術博覧会」閉幕後に再会を果たした。王萌女史立ち会いのもと、私は北京市内北東部・望京の住まいに彼を訪ねた。ピンクのシャツ姿の王煒氏は、心のこもった握手で迎えてくれた。作業台の上や応接室の中央には、おそらく今年の新作と思われる木版画作品が置かれている。アートな感覚のスタンドライトが、未完成の木版の上を照らしており、オレンジ色の光の輪の中で、禅とハスが舞い、静と動が共生している。私たちは、まず彼の芸術一家について話し始めた。

芸術の名家に生まれる

王煒氏の父親である王琦氏は中国の著名な版画家であり、教育家、国際芸術活動家でもある。95歳の現在も、現役として画壇で活躍している。2013年4月、彼は中国美術館で第33回の個展「王琦芸術生涯七十五周年及び九十五歳誕生記念――王琦水墨の新たな旅路書画展」を開催した。

魯迅が提唱した中国新興版画運動の初期からの参加者、開拓者の一人として、王琦氏は一時代を代表する中国版画作家で、芸術的にも人間的にも優れた人物である。1937年、彼は上海美術専科学校に入学、劉海粟に師事し、西洋絵画と版画を学んだ。1938年には、延安魯迅芸術学院で版画を学び、新中国成立後は、中国中央美術学院版画科の教授と西洋美術史の教授を兼務した。1989年からは全国美術家協会常務副主席を10年務め上げた。これまでに中国新興版画傑出貢献賞、中国美術金彩賞生涯功労賞、日本の東京富士美術館栄誉賞などを受賞している。生涯に創作した版画は200点以上あり、その作品は大英博物館、日本の東京富士美術館、東京現代美術館など20余りの海外の著名博物館や美術館にも収蔵されている。

多様な芸術家の薫陶

その王琦氏の長男として、王煒氏は幼い頃から、後に芸術の大家となった関山月、新波、余所亜、陽太陽、黄永玉、李樺の各氏とよく対面してきた。これら芸術家たちの向上への楽観、学術に対する自由な精神は、王煒少年に少なからぬ影響を与えた。後に、彼は上海の行知芸術学校や、北京五老胡同16号院で木版画、写生、水彩画、油絵、静物画、レリーフ制作などを学んだ。そして、14歳の時、「踢足球(サッカーをする)」という木版画作品を発表し、美術界の注目を集めた。その後、中央美術院付属中高から、芸術の最高の殿堂・中央美術学院に進学した。彼の芸術を学ぶ道はまさに順調だった。

1950~60年代の高度な学術交流、中国で開催されたソ連や東欧各国の美術展や国際芸術交流は、彼の視野を広め、芸術に対する深い思考を啓発した。中央美術学院は北京でも文化の中心地にあり、世界でも高いレベルの芸術展のほか、世界的バレエ団の公演なども鑑賞することができた。踊りや音楽、映画や詩歌など、さまざまな芸術の名作に触れることで、彼の芸術に対する情熱はいっそうかき立てられた。

 「燃焼――画家石魯」 46cm×80cm(1985年)

 「紅軍不怕遠征難(紅軍は遠征の困難を恐れない)」 82.5cm×58cm(1969年)

生活が生み出した作品

生活による鍛錬は彼のその後の創作に対する養分となった。軍事訓練、工場体験、農業体験、入隊経験など、生活の最も深い部分で彼は人生を版画に刻んでいった。後に、王煒氏は雑誌『紅旗』の美術担当編集者となり、中国木版画の最高生産量の時期を目にしてきた。彼は迫真の肖像作品制作に魅せられていった。「沈思――詩人艾青」「燃焼――画家石魯」「孜孜不倦――馬克思(マルクス)」「白求恩(ベチューン)」などといった歴史的人物は生き生きとして感動的で、一時期を代表する作品となっている。

現在、彼は自然から美を悟り、生活の中で芸術を磨いている。北京の西山にあるアトリエでは、彼は清らかな静けさを求め、自然生活に溶け込み、池のハスや青空に浮かぶ雲に親しみ、人と自然が調和した美意識に達している。人は夏に艶やかさを競うハスを描くが、彼は冬の日に雨風を受けても倒れまいとする枯れ残った命の素晴らしさを描く。彼はハスの花のさまざまな姿を借りて生活の豊かな楽章を歌い上げている。「荷塘奏鳴(蓮池のソナタ)」「霞光中的荷塘(光芒の中の蓮池)」「荷之吻(ハスの口づけ)」「亭亭玉立(美しい立ち姿)」などしなやかで美しい作品は、水墨画、油絵、版画、書道の多様な形式で表現されており、徹底して自由自在に美を表現している。白黒木版画「荷塘風姿(蓮池美景)」は、そのうちでも傑作とされ、中国優秀版画家作品選に収められ、ドイツのシュローダー前首相が収蔵している。

「鶴之舞」 80cm×58cm (2010年) 

発展する「中華大版画」

古代から魯迅が提唱した創作新版画運動まで、中国版画には1500年余りの歴史があり、宗教、時事、文学、年画、宮廷版画から創作版画まで、多彩な伝統がある。宮廷から民間まで幅広く行われてきた版画芸術は政治、社会、文化などの分野で肯定的な働きをしてきた。新しい時代に、中国版画家の集団は常に壮大であり、質素な心で勤勉に創作を続け、中国版画繁栄の時代を迎えたのだ。彼らは、「中華大版画」は幅広く国内外に吸収した東西美術理論と芸術研究の成果を基礎とし、東方現実主義表現手法を兼ね備えており、今後も伝統の上にさらなる発展を続けていくはずだ。

 

人民中国インターネット版 2013年10月

 

 

 

 

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