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『静観八荒』シリーズ6(179cm×96cm) |
2013年12月1日から12日にかけて、「八荒通神――新人文・盧禹舜作品展」が広東美術館で開催され、「中国美術新人文主義」の開拓者の一人である盧禹舜氏の作品百枚以上が展示された。この作品展は『静観八荒』『精神家園』『天地大美』『河山錦繍』『彼岸理想』の5つのシリーズに分けられており、盧禹舜氏の30年にわたる絵画創作や芸術的思考を総括したものであった。
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プロフィール |
盧禹舜(ろ・うしゅん) 1962年黒龍江省ハルビン市生まれ、満州族。1983年ハルビン師範大学美術学部卒業。現在は中国国家画院常務副院長、中国芸術研究院博士課程指導教官、中国美術家協会理事、中国画学会副会長、ハルビン師範大学副学長。 |
『八荒通神』は氏の代表的な作品シリーズの名称である。これは1990年代初期に創作が始められたもので、天と地と人が互いに作用し、依存しあうという老子の道家思想をもとに、中国北方の果てしない山河、丘陵、黒い大地を描き、自然、人生、人間と社会の関係、人間と自然の関係に対する思考を体現し、人間を中心に置く現代のヒューマニズム精神を表現している。
黒い大地への感情を込めて
盧禹舜氏は幼い頃から父の指導のもとで絵を学び、また画壇の大家である甲申、林彦、孫月池らの各氏に師事した。1983年、彼は大学卒業作品を上海・天津・ハルビン三市青年美術作品展に出展し、一等賞を受賞した。それをきっかけに、彼は中国の画壇で頭角を現し始めた。故郷を深く愛する盧禹舜氏は、香港に行くチャンスを放棄し、大学に残って教鞭を取り、29歳の若さで教授になるという破格の抜擢を受けた。
その後、盧禹舜氏の作品は第6回全国美術展覧会の展示作品に選ばれた。この時期、彼の作品は故郷の美しい自然に影響されており、描くものすべてが黒龍江省の風土や人情であった。天地や大自然が持つパワーが生きた素材となり、彼に無限のインスピレーションを与え、創作の原動力となった。彼は伝統的な山水画の画法を改めて解釈し直し、新しい意味を与え、写意技法(情趣の表現に重きを置く手法)をその本質から理解したのである。
しかし、盧禹舜氏は北方の自然のありのままの姿を描くことだけに満足していたわけではなかった。持ち前の鮮明な創作スタイルを保ちつつ、1986年に彼は中央美術学院に入り、学び直すことで、芸術の新たなる一歩を踏み出した。この時期、盧禹舜氏は新しい思考によって北方山水画を開くことになった力作『静観八荒』シリーズを創作した。『静観八荒』は1988年に開催された北京国際水墨画展覧会で優秀賞を獲得し、美術界の注目を集めた。
2000年以降、盧禹舜氏はロシアや他のヨーロッパの国々にスケッチ旅行に行き、『ロシア写生』『欧州写生』などのすぐれた作品を生み出した。写生シリーズ、『静観八荒』『唐人詩意』という3つのシリーズ作品から、盧禹舜氏の芸術活動の全貌をうかがい知ることができる。
同時代の中国画画家の中でも、盧禹舜氏は新しい思考に基づいて創作活動を行い、大きな成果をあげている一人である。東北の大自然が彼の豪快・奔放な性格に浸透し、作品の中で強烈な東北の自然のスピリットと個人の心の内にあるヒューマニズムの理想とが互いに結びついて、北方の静寂で神秘的な山水のスピリットを表現し、天と地と人の三者の関係に対する思考を体現して、新しいヒューマニズム精神を十分に顕示しているのである。
『精神家園』シリーズ17
(137cm×68cm) |

『静観八荒』シリーズ19
(143cm×364cm) |

『精神家園』シリーズ6
(137cm×68cm)
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美術評論家による作品解説
張暁凌氏 『静観八荒』の澄み切った静けさの味わいから、『唐人詩意』の古典精神とふるさとの物語、そして異国のヒューマニズムの美を描いた『欧州写生』まで、盧禹舜氏は数多くの作品の中で、神秘的な精神の輪廻を完成させると共に、山水画の新たな風格を創りあげた。
水天中氏 盧禹舜氏の山水画は人間の小ささをはっきりと認識した後に、崇高かつ永遠なる自然を礼賛している。しかし、彼は意気消沈したり、人間の精神の価値に悲観的な態度をとるわけではない。われわれは彼の山水画から意気軒昂たるヒューマニズム精神を感じとることができる。
邵大箴氏 盧禹舜氏の山水画は新鮮で神秘的で、今まで目にしたことがない独特の風格を持ち、20世紀末に美術界をリードする若手画家としての名声を確立した。ここ十数年、盧禹舜氏は「心で自然を感じる」という理念の下で、その筆の表現力はさらに熟練し、豊かになって、また、情趣の格調により重きが置かれ、北方の茫漠とした広大さと南方の精緻な奥深さを併せ持つようになった。(本誌特約ライター・文君)
人民中国インターネット版 2014年2月21日
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