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大草原を駆ける生命を描く細密画家 呉団良 氏

 

本誌特約ライター・諾曼

 

プロフィール
呉団良(Wu Tuanliang)字は凱健。1952年、内蒙古自治区生まれ。ダウール(達斡爾)族。黒龍江省の芸術学校を卒業後、中央美術学院中国画学部に進み加山又造日本画高級研修クラスで学ぶ。加山又造のほか盧沈、蒋采頻など著名画家の指導を受けるなど、しっかりとした学術的背景のある実力派画家。

豪放さの中の細やかさ 

幼い頃から内蒙古の大草原で育った呉団良氏は、作品の多くで北方の草原を題材にし、中でも馬を好んで描いている。彼の作品が一味違うのは、草原風景をただ再現するのではなく、草原に満ちる野性的な美を蒙古族の剛毅さ、荘重さ、屈強な精神を通して表現していることだ。 

表現手法の上では、細密画の伝統様式を踏襲しているが、そこに新しい造形観念と技法を融合している。形のデフォルメ、線の装飾、色彩の一元化などは伝統的な細密画の技法を受け継いだものだが、作品全体の風格は伝統細密画とはかけ離れたものだ。このため、「豪放」あるいは「整然」といった言葉で彼の画風を総括するのは難しい。彼の作品は、豪放さの中にきめ細かさを内包しているのだ。

 

にじみ出る生命の活力 

人物は呉氏の作品の中でも重要な題材だ。彼が描く人物は、西部劇の登場人物のような豪胆さを漂わせている。特に人物の表情や動きには、その心の内に潜む原始的な純真さと美がにじみ出ている。 

彼にとっては、人物の形を把握しその特徴を描き切ることができなければ、人物の心の世界を深くまで描写したとは言えないのだ。彼は人物の顔から衣服の紋様に至るまで、しっかりとした墨の線を用いて描いており、濃淡の配色も巧妙だ。これによって画面はしなやかさと重厚さを兼ね備え、調和して一体となり、一種の空間感が生み出されている。この特色が作品を現在の人物画創作手法から超越させており、創作の境地における精神の追求姿勢と人生に対する自信を見事に表している。 

呉氏の作品には、見る者に一種の深い感銘を抱かせる雄壮な美が表現されている。大胆な構図や力強い筆遣いで外面の美を描き出すことによって、内面にある感情の世界を映し出しているのだ。彼の作品を鑑賞する時には、私たちはまるで大草原の上に身を置いたように感じる。そしてすさまじい勢いの生命の活力と画家本人の芸術的個性を感受できる。これこそが彼が創作する人物画の最も貴重な芸術的本質だ。

 『草原月夜』

160×178cm

 

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