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描線と水墨で新疆描く肖像画家 龔建新 氏

 

本誌特約ライター・諾曼

 

プロフィール
龔建新(Gong Jianxin きょう・けんしん) 1938年新疆ウイグル自治区ウルムチ市生まれ。1956年に中央美術学院中国画学部に進学。水墨肖像画により新疆ひいては中国の現代人物画壇で名前が知られている。卒業後、天山山脈の南北を訪ね歩き、西北地方の特色と新疆ウイグル自治区の民族風情のある作品を数十年にわたって数多く生み出してきた。現在、新疆の多数の青年画家も彼の影響を受けている。

天山山脈に絵画の源泉 

龔建新氏は少年時代から絵画にこだわり始めた。何の束縛も受けず方法も問わず、筆あるいは筆の代わりになるものさえあれば思うがままに絵を描き、生き生きとしたイメージの世界と固い絆を結んできた。龔氏によると、中央美術学院の教室で石膏像をデッサンしていた時、静止した塊と面の構成や明暗の対比を通じ、人間の描写に強い興味を抱いたという。だが唯一残念だったのは、それが本物ではないことだった。大学卒業後、龔氏はためらうことなく天山山脈のふもとにある故郷に帰った。なぜなら、彼のくめども尽きぬ絵画の源泉がそこにあったからだ。 

龔氏は新疆ウイグル自治区に生まれ育ち、新疆各民族の人々の暮らしと切っても切れない関係にあるため、地元の人々の表情や気質を描くことに特に長けている。龔氏の性格は辺境を死守する武将の勇猛と剛直、文人の含蓄と気高さを併せ持つ。このため龔氏の描く踊りの場面と誇張された壁画の造形は勇ましい力の爆発となっている。一方、彼の肖像画は深い含蓄のある心、そして人生と芸術への冷静な思考の表れだ。 

龔氏にとって美の概念は正確で完璧な肖像画そのもので、全ての描線と墨の色が自分の激情をさらけ出している。龔氏は「私は自分が描いてきた全ての人々に感謝の気持ちを抱いている。身近に彼らの目つきと表情が見える機会を与えてくれたからだ。私は彼らを選び、彼らも進んで私の前に座ってくれた。これは人と人の調和の表れだ。この調和こそが私の肖像画に自然な美しさを与えてくれた」と話す。

東西の技法で独自画風 

龔氏は大学で中国と西洋の異なる技法を学び、葉浅予氏、李可染氏ら大家の教えを受けた。当時から肖像画の中で二つの技法を融合し、描線と水墨で対象のリアリティーを表現し、人物を今の生活に近づけようと思っていた。 

人物画を写実的に描くなら、生活に深く入り込みリアルな人物のイメージを捉えなければならないことを龔氏はよく理解していた。そのため彼は新疆のほとんどあらゆる場所に足を運び、現地の人々のリアルな生活をスケッチで捉えた。先代の絵画技法を踏襲するとともに、西洋画のデッサン技法を輪郭線の描写に用い、水墨肖像画という独自の画風を徐々に作り上げた。 

著名な美術評論家の劉曦林氏は「龔氏の肖像作品は西洋画の造形意識を取り入れ、描線で骨格をつくり、また水彩画のようなぼかしで人物の血肉を表現し、隙のない構成の中で筆と墨、造形の美しさを生み出した。彼の肖像画は非常にリアリティーがあり、正真正銘の新疆の人々を活写している」と評価する。

 

 『天山楽舞』  2007年 

220×129cm

 

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