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生活感込めイ族の風情描く

 

本誌特約ライター・諾曼

日常を拾い上げ描く

プロフィール
孔紫(Kong Zi) 1952年河北省唐山市生まれ。解放軍芸術学院美術学科卒業。現在は中国国家画院所属画家、国家一級美術師、文化部高級職称評審委員会委員、中国芸術研究院中国画院研究員、中国美術家協会理事、中国女性画家協会主席。代表作『児子(息子)』で中国人民解放軍創設75周年全国美術作品展金賞受賞。

イ(彝)族の村を流れる川の水は澄み、青々としたコウリャン畑や黄金色に実ったトウモロコシ畑が続く……これこそ孔紫氏の絵画作品から人々が感じ取るものだ。彼女はこれについて「生活は芸術の源で、私は日常生活の中から自分が表したいと思うものを拾い上げ、創作言語に置き換えているだけです。これが私が解放軍芸術学院卒業後に持つようになった意識です」と話している。

農村と農民は彼女の作品にしばしば登場する表現内容だ。特にその絵筆で描かれるイ族の女性は、まったくおしろい臭さや人に媚びる様子がなく、伝わってくるのは素朴な心を持つ人物で、濃厚な田園の息吹を放っている。これらの作品の中では、人物の造形はいささかの簡略化とデフォルメがなされているが、よりはっきりと素朴さや温厚さが見られる。

彼女はまた「子どもの頃に住んだ農村のわが家での素晴らしい思い出と、中学校時代の農村体験実習で少女たちと結んだ友情が、私を田園作品の創作に熱中させるのかもしれません。田園を題材にした一連の作品の創作は、私に一種故郷に帰省するような気持ちを持たせてくれます」と語る。

筆墨の処理において、彼女は線、色、墨を有機的に結びつけており、線は重厚に用い、補助的に繰り返し皴法(筆のタッチにより質感を表現する技法)を用いて、空間の厚みを出している。これらユニークな造形と豊かな個性を持つ線は、彼女独特の表現手法を形成しており、一種のたゆまぬ向上心と不屈の生命力を表わしている。

常に革新を目指す

孔紫氏の作品の風格ははっきりとした創作意識から来ており、彼女は創作の中で自身の個性に合致するイメージと言葉を見出している。『高粱青青』から『青春華彩』、また『児子』『三伏』などにかけての作品では、彼女は作品ごとに自分のスタイルを羽毛が抜け替わるように変化させ、その都度全国的な展覧会でグランプリを獲得し、美術界で自らの独特な画風を確立していった。彼女は自分の創作の個性について次のように話している。「芸術の源は客観にあり、それは必ず『真実』とは限りませんが、必ず誠実でなければなりません。これは芸術を成り立たせる基本的な品質であり、ゴッホの『ひまわり』がなぜ人々に感動を与えるのかという理由の所在でもあります」。こうした前提に立ち、孔氏の一連のイ族を扱った作品は時に応じて現れたものだ。

イ族を扱った作品は学術的に認められ多くの栄誉を勝ち得た。彼女は「これらの作品は、私が極めて大切にしている芸術の実践と成果で、軽々しく捨て去ることはありません」と語っている。しかし、それらの作品から、彼女が一貫して自身固有の創作理念を打ち破る試みを続けているのを見て取ることも難しくない。彼女は、良い作品は一種類の形式にこだわるところにはないと考えており、より深く掘り下げたものを探す努力を続けている。「創作時には自らの心に近づき、自身固有の手法に妥協してはいけません。一つの適切な表現方法を探し出すのは良いことですが、それがどんな題材にでも通用するわけではありません。私は自分が絶えず飛躍する中で芸術的革新を実現し、より成熟した見聞によって人生を解釈できるようになりたいと願っています」

『記憶~晨霧』

2011年 200×245cm

 

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