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日本人俳優「南京!南京!」出演で多くの涙

映画「南京!南京!」で日本人兵を演じた日本人俳優・中泉英雄さんにずっと注目が集まっている。映画「カミュなんか知らない」に出演するなど、日本でも知られている中泉さんが、北京の新聞「信報」のインタビューに応じた。

角川の地獄の旅の始まり

「撮影が始まった時から、終わった今でも心が疲れていて、まるで戦いのようです」と話す中泉さんは、中国を侵略した日本軍の中でも若い兵士の角川役を演じた。

角川は、南京から2キロ離れた塹壕の中で南京城に入るのを待っていた。それは地獄の旅の始まりでもあった。南京では人生で初めて日本人慰安婦の百合子を愛するようになり、戦争と人間性に対しても初めて徹底的に反省する・・・。

「南京!南京!」では、角川の視点で多くの細かい場面が描かれているが、角川にとってその全ての「最初」が人生の「最後」になった。

ある女性客の言葉に涙

撮影中は日本人俳優として非常に大きなストレスに耐えたという中泉さん。しかし我慢できずに涙を流したこともある。「こんなにスケールの大きな映画で、うまく自分が演じられるかどうかと考えていました。そして撮影が終わったあとは、この映画を観客はどう見るかということがプレッシャーになったのです。ですがこうした気持ちは他の俳優も同じだったようです」

杭州の試写会では、中泉さんに怒りをぶつける観客もいた。しかしすぐに立ち上がってをサポートする女性も現れ、「日本から中国に来てこのような役を演じるのはなかなか勇気がいること」と言う言葉を聞いた中泉さんは、声を上げずに泣いた。

「今まで自分はこんなに感情的だとは思わなかった」と、中泉さんは当時のことを思い返しながら話し、休憩室に戻ってから声を上げて泣いた理由をこう説明する。「こういう感覚は言葉では言い現せない。心は本当に複雑です。確かにある言葉を聞いた時には確かに辛くなったけれど、泣いたのは罵られたためではなく、ある女性客の『ありがとう、あなたは勇敢な俳優』という言葉を聞いたからです」

共感した陸川監督の一言

中国に来て「南京!南京!」に出演するのを決めたときから、中泉さんは覚悟していた。「2006年に東京で陸川監督と会い、それに陸川監督の『ココシリ』を見て、非常に真実を描いている映画だと感じました。そしてこのようなグローバルな映画に出るチャンスはとても貴重だと思ったのです」

陸川監督と初めて会った時の様子についてはこう話す。「監督に初めて会い、その時に監督が話した一言に共感しました。それは、人と人との間の気持ちを描きたいという言葉です。この映画は心を描くシーンが多く、演技をするにはいいチャンスだと考えました」

家族や友人がこの映画出演を支持しているのかと質問すると、「多くの友人が今回の出演を応援してくれ、自分自身や映画に対して自信を持つことができました」と答えた。

毎日、戦争中のような雰囲気

「どの都市に行っても緊張していました。でも多くの人たちが応援してくれるのを見て本当にうれしかった」。これは中泉さんが試写会に出た時の率直な気持ちだ。

演技をしている時の中泉さんの心は綱引きのようで、「戦っているかのように心が疲れていました。撮影中は、一体いつ終わるのかと常に思っていましたし、出演者全員も毎日戦争中のような雰囲気の中で、私も一人の人間として感情がありますからとても辛かった」と話す。

日本人兵士・角川の目を通して、中泉さんは当時の角川が経験した全てを経験した。角川は臆病で敏感な人間だ。これから生きていくなら一生、その苦しみに耐えなければならない。しかしそれができず結局、自殺を選んだ。「角川の心は非常に辛く、自殺が最も簡単な方法だったのかもしれません」

出演は正しい選択

中泉さんがほっとしたことは、この映画を見た多くの観客が「南京!南京!」を評価していることだ。「この映画に出るために、多くの史料を参考にし、中国の人がどうしてこんなに憤っているのか理解しました。今やっと私は、この映画の出演は正しい選択だったということが分かりました。私たちは映画という形を通してこの時代の歴史を振り、みんなに警告し、再びこうした歴史が繰り返されないようにしなければなりません。本当に世界の平和を願っています」

中泉さんはこの映画に出演したことを後悔していない。もしこの映画が日本で公開されれば、自分の親友にもすすめるという。今後の日本での俳優活動に影響があるのではないかという質問に対しては、ユーモラスにこう話す。

「もともと出演した作品は多くなかったし、この映画に出たために他の作品に誘われなくなるということもないでしょう。こうした問題は、事前に多くのことを考えることはできません。後で考えるしかないのです。今回の出演で中国の映画界の人たちが優秀だとを知りました。ですからこれからは中国でがんばりたいと思っています」

家族などへの影響を考えて映画のPRは辞退

各都市で行なわれる試写会が終わると、必ず泣いてしまうという中泉さん。それは映画のシーンや観客の冷淡さや情熱あふれる反応に耐えられないためで、この若い日本人俳優は、撮影中から撮影後も泣き続けており、今まさにある懲罰を受けているかのようだ。

そんな中泉さんのストレスも日増しに大きくなり、次の数カ所の都市で行なわれる映画のPRを辞退した。どの都市に行っても彼の歴史への理解が問われ、その回答で家族や親友が影響を受けることを心配したからだ。そこで中泉さんは、「南京!南京!」の撮影が行われた長春で中国語の勉強を始めることに決めた。

中泉さんのほかにも何人か日本人俳優がこの映画に出演している。試写会に出る彼らは本当に勇敢だ。

 

「チャイナネット」2009年5月11日

 

 

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