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日本はTPPのバトンを受け取れるか?

 

米大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、オバマ政権は環太平洋経済連携協定(TPP)の推進に向けた努力をやめてしまった。だが日本の安倍政権は迷いなく「TPPのバトン」を受け取った。原因は何か。まず経済的要因が挙げられるが、安倍政権にとってはTPPがもつ地縁政治的な要因の方がより重要とみられる。日本の外交では中国への対抗の色合いが非常に濃い。トランプ氏の当選にともなって、日米関係には不確実性がみられるようになった。強固な日米同盟を基盤とする安倍政権の外交は今後変化するのだろうか。人民日報海外版が伝えた。

▽米国が退き、日本がトップに

日本紙「日本経済新聞」の報道によると、安倍晋三首相は14日に行われたTPP承認案・関連法案を審議する参院特別委員会で、「米国が政権交代期にある今、わが国こそが早期発効を主導しなければならない」と発言した。共同通信社の報道では、安倍首相は19日からペルーの首都リマで始まるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に先立ち、TPP参加12カ国による首脳会議を行うという。

トランプ政権が本当にTPPから撤退したり、重大な調整を行ったりした場合、TPPは発効可能なのだろうか。「日本経済新聞」の14日の報道では、安倍政権はTPP参加国に国内手続きの早期完了をはたらきかけたといい、米国抜きの状況でTPPをできるだけ早く発効させたい考えだという。メキシコのイルデフォンソ・グアハルド・ビジャレアル経済相はこのほど、TPPが米国抜きの11カ国で発効できるよう、条項の調整を行うことを提起した。

外交学院国際関係研究所の周永生教授は、「TPP成功の可能性はまだある。参加国は十分な話し合いを行ってきたからだ。ただし影響力という点では、新バージョンのTPPは当初の米国が主導するTPPとは同列に論じられるものではない」とはなす。

▽輪によって中国に対抗

TPPのバトンを米国から受け継いだ日本が、地縁政治的要因を考慮したことは明らかだ。日本にとって、TPPは単なる地域経済一体化の問題ではない。日本が国際的な発言権と影響力を追求し、中国を制御しバランスをはかるための重要なツールでありベクターなのだ。また日本が国際基準の制定に関わるための重要なポイントだ。

周教授は、「大きく言えることは、日本はTPPを通じて経済、安全保障、軍事面での実力を強化したいと考えていることで、狙いは中国と対抗することにある。多くの人が指摘するように、オバマ政権が日本を説得してTPPを受け入れさせることができたのは、日本の人々にTPPは米国がデザインした地縁政治にかかわる協定であり、中国を排除するものと信じさせたからだ。そこで日本は腰を上げることになった。TPPを通じて、日本は経済的に米国との結びつきを強化し、ひいては米国との各方面での協力を強化したいと考えている。またTPPを通じて日本にとって有効な勢力圏を構築し、新しい世界の経済貿易ルールを制定し、これを主導し、経済面で中国と肩を並べ、最終的にはこの経済圏を利用して政治・経済・軍事協力の全面的な連盟を構築し、中国に効果的に対抗しようとしている」と指摘する。

当然のことながら、TPPがもたらすとみられる経済的メリットは軽視できない。「日本経済新聞」が14日伝えたところによると、安倍政権にとってTPPは成長戦略の柱だ。発効できなければ、「アベノミクス」の土台が崩壊することになる。そこで少しでも可能性があるなら、これを手放さないように努力するしかない。日本紙「朝日新聞」が伝えた日本銀行の黒田東彦総裁の話では、「TPPは一里塚の意味合いのある協定であり、調印にこぎ着ければ、きわめて大きなメリットを日本経済にもたらす。反対に、議会を通過しなければ、この協定がもたらす巨大な利益が実現不可能になる」という。

現在、日本経済は楽観を許さない状況だ。共同通信社の行った最新の世論調査では、回答者の58%が「日本経済は衰退不振の状態にある」と答え、昨年6月に同じ質問をした時より15ポイント増加した。日本の専門家は、「安倍政権がTPPを重視するのは、日本の経済産業がTPPによる再生を必要としているからだ。日本の基幹産業の多くは長年にわたる発展の後、今はボトルネックの段階に入っており、日本だけでこれまでのモデルが抱える問題や構造的な矛盾を解決することは難しい」と指摘する。

▽日米関係はどのように発展するか

安倍政権の外交政策は強固な日米同盟を基盤としていた。日米同盟は日本の「防衛の生命線」とみなされていた。だがトランプ氏の当選により安倍政権に動揺が広がった。分析によって指摘されるのは、日米関係が米国の指導者の交代によって揺らぐなら、安倍政権が行ってきた外交努力は無駄になる可能性があるということだ。日本メディアは、トランプ氏はこれまで日米同盟を根本から揺るがすような一連の発言をしている。米国紙「ワシントン・ポスト」が伝えるように、オバマ政権の「アジア太平洋リバランス戦略」の柱の1つがTPPであり、TPPはトランプ氏当選後の最初の「犠牲者」になる可能性が高い。

日本紙「読売新聞」の報道によると、トランプ氏の当選後の12日と13日に同紙が行った世論調査では、今後の日米関係について「不安が期待より大きい」とした人が58%に上ったという。

周教授は、「トランプ氏の当選は日米関係に必ずマイナス影響を与える。だが安倍政権は見込み違いによる影響を補う努力を始めている」と話す。

「日本経済新聞」によれば、安倍首相は17日にトランプ氏と会談する予定だ。大統領就任前に会談するのは異例のことで、ここからできるだけ早く会談によって個人的な信頼関係を構築し、これまで手薄だったトランプ氏側との人脈づくりを急ごうとする意図がうかがえる。安倍首相はトランプ氏に日本の立場を率直に伝え、日米同盟を強化したい考えだという。

これから日米関係がどのように発展していくのか。安倍政権の外交政策にはどのような変化があるのか。しばらく様子を見守る必要がある。(編集KS)

 

「人民網日本語版」2016年11月18日

 

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