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中日「互恵」時代への期待

 

「氷を割る旅」から「迎春の旅」へ

 

2007年12月、初の「中日経済ハイレベル対話」が北京で開催された。中国からは曾培炎副総理、日本からは高村正彦外相が団長として参加した



 江原 昨年は日中国交正常化35周年でした。その間、日中関係は「熱烈歓迎」「冷静実務」「政冷経熱」と変わり、そして現在、「戦略的互恵関係」が構築されようとしています。

 

長い日中関係で、今日ほど日中両国が「互恵」関係になった時代はなかったのではと思います。日本は遣隋使、遣唐使の時代以来、中国から制度、技術、文化を学び、中国も特に明治時代、日本をフィルターとして近代化を実践しようとしてきたと思います。日中両国は、一方がもう一方から学ぶという片側通行の時代が続いてきました。

 

中国の「改革・開放」により、日中両国は相互に影響しあうようになってきています。日本にとって、今や中国は最大の貿易相手国になりました。また、中国にとって日本は、もっとも重要な投資受入れ先の国ではないかと思います。経済では、双方向の交流が活発化しているわけです。胡錦涛主席の訪日で、こうした経済関係に加え、政治、外交関係も含めた全方位での双方向交流がさらに高い次元で実践される基礎固めができるのでは、と期待しています。

 

張季風 胡錦涛主席の訪日は、1998年の江沢民主席の訪日以来の国家主席の日本訪問で、意味深い大きなできごとです。一昨年の安倍首相の訪中は「氷を割る旅」であり、昨年の温家宝総理の訪日は「氷を融かす旅」でした。今回は「迎春の旅」、つまり花を咲かせるための旅といえます。枠組みのできた「戦略的互恵関係」を充実させ、21世紀に向けた日中経済交流の道を拓くことになるでしょう。「戦略的互恵関係」に関する第四の声明または宣言(注1)が出されるのでは、と期待しています。

 

同時に今の中日関係は、むしろ「政熱経冷」になっているのではと心配しています。最近の中日トップレベルの相互訪問で、政治・外交面は熱く回転してきましたが、その回転スピードに経済面がついていっていません。

 

昨年の中日貿易は10%の伸びで、低くはありませんが、中国の対外貿易が30%ほどの伸びを示しているのに比べると、やはり低い。日本の対中投資を見るとさらに明らかですが、2005年までは日本の対中投資は順調だったのが、一昨年は30%減少、昨年は25%の減少と、2年連続で大幅減となっています。世界の対中投資は一昨年、昨年とも伸びているのに、残念なことです。

 

待たれるビッグ・プロジェクト

 

新しくつくられた北京の地下鉄5号線のプラットホームの風景(写真・劉世昭)



 江原 日本の対中投資が一巡したことや、自動車関連の大型投資が出そろったことなどが背景にあるとされていますが、最近、省エネや環境保全の分野で日本企業からの投資を受けたいというミッションが相次いでいます。環境保全や省エネは中国の最大関心事ですから、今後こうした分野やサービス産業などで日本の対中投資が伸びると期待できるでしょう。

 

ただ、人件費の上昇、加工貿易の制限、優遇措置の調整、人民元高など、投資環境が変化していることも、日本の対中投資に影響していると思います。

 

また、中国は輸出先としての魅力も増しているようです。富裕層が拡大しており、これをターゲットにした新しい輸出需要の拡大が期待されていますし、中国政府が輸入の促進を積極に展開しようとしていることも、日中貿易の拡大にとってチャンスでしょう。日中経済関係は成熟してきており、伸び率より中身が重要です。

 

張季風 中日経済関係は、貿易がハイレベルで「徘徊」(横ばい)、投資は急減している状況にあります。中日貿易は中国側の赤字(注2)となっており、バランスさせる努力が必要です。これからは、農産物などの輸出入を増やすなど、双方にメリットのあるような仕組みを作らなくてはなりません。

 

日本の対中投資では、両国政府間で決断しなくてはならないような大きなプロジェクトがほしいですね。例えば、北京―上海間高速鉄道(新幹線)、原子力発電所の建設、身近な例では、北京の地下鉄や都市鉄道などです。

 

北京は大都市ですが、東京、ニューヨーク、パリなどと比べると、地下鉄も都市鉄道も比較にならないほど総延長が短い。こうした都市交通網の発達は、交通渋滞、環境汚染など、中国が抱える問題を軽減する上で大きな力となります。日本が集中的に協力すれば、中国人民から感謝されるでしょうし、対中ビジネスにも市場拡大などでプラス面が非常に多いはずです。

 

もう一つ、中日関係では対中ODAのことに触れなければなりません。日本のODAは「改革・開放」政策に貢献し、ビッグ・プロジェクトも多く、日本企業の対中ビジネスにも役立ったと思います。対中ODAでまだまだやるべきことは多いのですが、残念ながら2008年で終了します。

 

今後は、三北防風林(注3)の建設や中国のモータリゼーション対応型のプロジェクトなどで、ODAに代わる中日共同プロジェクトを展開し、世界にアピールしたらいいと思います。

 

この点では、日本の自動車メーカーが中国の合弁会社でハイブリッドカーなど、環境にやさしい車づくりを実践しているのは、非常に高く評価できます。

 

胡錦涛主席の訪日で、大きな中日共同プロジェクトが出てくることを期待したいですね。

 

江原 ビッグ・プロジェクトもよいですが、中国から日本への投資が増えてほしいですね。双方向の交流で今後、何が一番重要かといいますと、中国の対日投資だと思います。日本の対中投資に比べたら比較にならないほど少ないわけですが、中国は「走出去」(注4)を国家戦略として強力に推進しており、また、日本にも、とくに地方には、中国から投資を受けるメリットが少なくありません。そう感じている人も増えています。

 

中国からの投資が増えれば、両国間で水平貿易関係が構築され、貿易赤字もそれほど問題にされなくなるでしょう。日中双方向の経済交流の拡大という視点から、中国の対日投資が今後どう展開するか、注目しています。

 

そのためには、両国間の情報交流や相互理解をもっと深めるための枠組みづくりが必要です。これも日中間の大きなプロジェクトといえます。

 

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