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中国も日本も「改革途上国」

 

「環境で協力」の時代に

対談中の馮昭奎さんと加藤嘉一さん


 円借款は、中国流に言えば「政府間の資金協力」ですね。円借款の時代が終わり、これから資金協力としてやったらいいと思うのが「中日環境基金」です。中国と日本は距離的にも非常に近いので、環境問題はまさに「共通利益」です。

私が名古屋にいた時にも、中国から吹いてくる黄砂を体験しました。黄砂はもちろん中国のみで発生したものだけではなく、中央アジアやモンゴルなどからも吹いてきます。名古屋の市民はみな清潔好きで、黄砂で車が汚れるとすぐ洗車場で車を洗っていました。こうした状況を見て、環境問題が中日両国にとって如何に共通の利益でありうるかを考えさせられました。

加藤 日本の対中ODAが中国の「改革・開放」を促進したという以外に、日本自身のためにも有益だったという点は強調すべきだと思います。例えば日本が中国から輸入している商品には、日本企業が中国市場に進出し、そこから日本に逆輸入しているものも多いですから。

 対中ODA、特に円借款を通じてインフラ建設を強化し、それによって中日間の貿易を発展させてきました。

加藤 日本の対中ODAは「ウイン・ウイン」だったということですね。

 はい。私が先ほど提起した中日環境基金も「ウイン・ウイン」です。黄砂だけではありません。たとえば、中国国土面積の三分の二が酸性雨の被害にあり、日本の一部もその影響を受けている。酸性雨物質は風の流れに乗って、パスポートなしで、自由に移動するのです。環境問題は両国の共通の利益というだけではなく、中国にとっては、環境が非常に大きな産業になっていくでしょう。排出権取引の問題もあります。中国の環境産業はこれから大きく成長し、中日経済協力の新しいインセンティブになると思います。

加藤 日本は戦後復興、高度成長期の際、四大公害病などを含め、経済と環境の共存に関してさまざまな試行錯誤を繰り返してきました。いまの中国もまさに同じ性質の矛盾に直面していると思います。これまでの経験を生かして、日本は今後、中国環境産業の発展にどのようにかかわって行くべきでしょうか。

 まずは日本がこれまで蓄積してきた技術の移転ですね。発電所の脱硫装置などはその一例です。省エネ技術の移転も非常に重要です。現在、単位当たりのGDPを創出するために消耗するエネルギーでは、中国は日本の9倍です。中国のエネルギー利用効率はまだまだ改善する余地があります。環境、省エネなどの分野で戦略的互恵関係を実践していくことは現実的に可能と言えるでしょう。

日本語で言う、「ポンプの水」の役割ですね。つまり、多くの水を引き出すには、まずは水を少し注入する必要があるということです。政府が少しお金を注入すれば、多くの民間投資が期待できるのです。日本は今後、中国の環境産業において大きな投資効果を期待できると思います。

加藤 排出権取引など、最近は国際社会でも「環境」はホットなイシューですよね。さまざまな問題・テーマが横たわっている中日関係において、「環境協力」という分野はどれほどの位置を占めるでしょうか。

 現在、政府は中日のさまざまな協力プロジェクトの一つとして環境協力を挙げていますが、私は賛成しません。環境協力を経済協力の「一部分」と位置づけるべきではありません。環境協力は、東中国海の共同開発、エネルギー協力、貿易投資などとは全く別次元の問題です。ケタが違いますよ。

加藤 環境協力を単独のテーマとして考えなければならないということですか。

 中日協力のトップに位置づけるべきです。環境問題は21世紀の中日関係における新たな共通の脅威となります。以前はソ連でした。多くの人々が「戦略的関係」と言っていますが、私はこの「戦略」という言葉には敵や脅威、つまり何らかのターゲットが存在すると考えます。現在その脅威は、まさに気候変動、温暖化をはじめとする環境問題にほかなりません。

「環境は経済の一部でしかない」という位置づけは的を射ていないと思います。環境問題にともに対処することは、21世紀の中日関係の新たな「紐帯」になると信じています。

いぜん未完の「改革」

加藤 「改革・開放」に関して、それを国策として掲げる中国だけでなく、日本も実質的に「改革・開放」というミッションに直面しています。国民レベルでは、まだまだ本格的な議論がされているとは思いませんが、「第三の開国」「第三の改革」「構造改革」などといった言葉は象徴的です。馮先生は以前、「日本も中国も改革途上国」という見解を述べられておられましたが……

 中国も日本も改革の半ばにあるということです。両国の改革の現状を俯瞰してみると、まず共通点としては、トップダウン方式です。両国ともに、基本的には政治レベルで改革の輪郭を決定し、実行していく形をとっています。相違点としては、中国に比べて、日本はそのプロセスが緩慢であることです。両国にはそれぞれ国会、人民代表大会という機構がありますが、中国は基本的に決定してから推し進めるまでの流れが速い。それに比べて日本は、法案一つ通すにも、さまざまな政治勢力が絡み合い、相当な時間とエネルギーを要する。とくに「ねじれ国会」のもとで、政策決定の鈍さはなおさらです。

加藤 日本と中国は、改革のプロセスで具体的に何を変えていく必要があるのでしょうか。

 資本主義そのものです。最近の資本主義は拝金主義、行き過ぎた市場原理に傾いています。サブプライム問題はその典型といえるでしょう。中日だけでなく、米国も含めて、全世界的に資本主義を見直す時期に来ているのです。

例えば小泉首相時代は、改革が唱えられましたが、基本的にはアメリカの要望に応えようと、つまりアメリカンスタンダードを実行しようとしただけです。戦後復興と経済発展を支えた日本独自の優れた部分までを変えようとしました。政府と市場の関係も含めて、今後どのようにグローバルスタンダードと独自の良い部分をミックスさせるかは、改革というテーマにおいても、とても重要になると思います。

価値観の共通点を共有

加藤 中日両国はこれから新たな時代に入っていくという認識が必要だと思います。「改革・開放」というテーマを両国の共通課題として、何を変えるのか、どう変えるのか、何を開くのか、どこまで開くのか、両国民が互いに学ぶという姿勢でこの大きなテーマに取り組んでいきたいですね。

 まずは両国での価値観共有を強調すべきです。中日両国では、確かに価値観は異なりますが、ともに平和と発展を追求し、環境保護を重視し、テロリズムに反対しています。民主主義や人権問題に関しても、中国はそれらを否定していません。中国の民主主義はまだ不十分であることは否めませんが、経済社会の発展に合わせて、社会の安定と秩序を保ちながら、漸進的に民主化への道を進んでいるのです。

昨今の中国は、発展段階から見れば「発展途上国」、経済体制から見れば「改革途上国」、社会制度から見れば「模索途上国」です。資本主義より合理的な社会制度を模索しようとしています。社会主義初級段階にある中国は、社会主義の理想社会を実現するため十数代、あるいは数十代の努力と模索が必要だと主張しています。それはまさに中国の「改革」の本質です。

日本でも資本主義をもっとも理想な社会とは考えない人々がかなりいるようです。日本としては、より合理的な社会制度を模索している中国と真っ向から対立する理由はないでしょう。多様化する文明世界で、異なる社会制度を持つ国々は平和共存することができるはずです。日本の一部の政治家が吹聴するいわゆる「価値観外交」は時代遅れのものだと思います。むしろ、中日両国の価値観の共通点、例えば「共に平和発展を追求する」などという認識を共有することのほうが大切なのではないかと思うのです。

 

人民中国インターネット版 2008年11月10日

 

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