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中日関係の過去、現在、未来を語る

賈秋雅=文・写真

創価大学で開かれた中日関係のシンポジウム

『中日平和友好条約』締結30周年にあたり、9月14日、中日関係の過去、現在、そして未来について語るシンポジウムが創価大学で開かれた。  

創価大学法学部の高村忠成教授が基調講演を行い、その後、中日両国の著名な学識者がそれぞれの研究分野から意見を述べた。その要旨を紹介する。

  新しい戦略的チャンス期を迎えた  

中国社会科学院日本研究所副所長 金煕徳

中日両国関係がさらに大きく発展するためには、四つの基本的な条件が必要である。一つ目は相対的に緊張のない国際環境、二つ目は両国の指導者の先を見通す政治的見方、三つ目は互いの相違や矛盾を適切に処理する能力、四つ目は両国の民意と世論の熱い支持である。

1972年、1978年、1998年に中日関係は大きな進展を遂げ、それぞれ『中日共同声明』『中日平和友好条約』『中日共同宣言』という三つの重要な政治文書を締結したのは、当時、上述の条件が基本的に備わっていたからである。

2001年以来、小泉純一郎首相が第二次世界大戦のA級戦犯が祭られている靖国神社に参拝したことが主な原因となり、中日関係は非常に悪化し、長い「政冷」期に入った。これと同時に、両国の国民感情と世論も絶えず悪化した。  

2006年の安倍首相による「氷を割る旅」以来、中日の指導者の間の「氷を融かす旅」「迎春の旅」を経て、今年5月の胡錦濤主席の「暖春の旅」に至り、中日関係は新しい戦略的チャンス期を迎えた。  胡錦濤主席の訪日中に締結された第四の政治文書は、未来を見据え、古い問題にこだわらない精神を体現し、共通の利益の推進と「ウイン・ウイン」協力の実現に着目している。新しいスタートラインに立った中日関係は、「ウイン・ウイン」に向かう目標をすでに持っているが、それを現実のものにするには、道はまだ遠い。

大局観に立った趨勢と発展方向

北京大学国際関係学院院長 王緝思  

20世紀初頭の世界の覇権争いから20世紀後半の東西冷戦、そして今日の経済のグローバリゼーションに至るまで、国際情勢の変遷は中日両国の関係に大きく影響してきた。中日関係の過去を振り返り、その未来を展望するとき、両国の内部と両国関係だけに目を向けるのではなく、国際的な大局を重要な要素として考慮しなければならない。

現在の国際情勢の主な特徴と発展の趨勢は以下の通りである。

世界の大国は、競争の中で協力し、しかも協力を主としている。グローバリゼーションのマイナス面は日増しにはっきりと現れ、地球規模の問題が際立ち、エネルギー、食糧、環境など従来にはなかった安全の問題がより深刻になっている、等々である。  

こうした背景のもと、中国は日本との協力を強めなければならない。中国は日本から資源・エネルギーを節約し、環境に優しい、技術集約型の発展モデルを学び、社会の調和と持続可能な発展を促進しなければならない。

中日関係の未来は、両国が未来の世界秩序に関わる重大な国際問題において手を取り合うことができるか、これまでになかった安全の問題を処理する国際メカニズムを共同で構築することができるかにかかっている。

さまざまな問題を前にして、中日両国は政府間の戦略的対話を強化し、将来のグローバルな管理の問題と地域の協力問題について常に意見を交換し、共通認識を追求するべきである。視野を広げ、将来を見据えれば、「一山に二頭の虎なし」という考え方から抜け出すことができ、中日両国は世界の中でそれぞれの独自の役割と共同の役割を果たすことができるだろう。

 「政冷経冷」の日中関係を築く

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授 天児慧

言うまでもなく、中国の総合的な国力は年々強くなっている。少なくとも今後10年間は、引き続き強くなるだろう。今後5年から10年の間に、東アジアにはEUやNAFTA(北米自由貿易協定)に匹敵する地域経済圏が出現するというシナリオがある。しかも、中国がその中心に位置するという可能性がますます大きくなっていることを認めざるを得ない現実がある。

日本人の中には、「肥大化する中国」「脅威の中国」と言いながらも、同時に「遅れた中国」「共産主義の中国」といったステレオタイプのイメージも依然として強い。いかにして相互の誤解を減らし、健全なパートナーシップを築くか、そして日中関係だけにとらわれず、いかに日中が協力してアジア・太平洋の平和で安定した秩序と調和的相互依存構造を創造するかが問題である。 

小泉首相時代の日中関係を語るとき、よく「政冷経熱」という言葉で論じられた。当時私は「政冷経熱」論に賛成せず、むしろ「政熱経冷」であると主張した。ここで言う「熱」は、活発な関係を言うのではなく、すぐ感情的になって騒ぎまくるという意味であり、「冷」は、冷えた関係という意味ではなく、冷静でクールという意味である。

こうした意味で日中関係の将来は、できれば「政冷経冷」がいいのではないか。政治もクールに、経済もクールに、自然体で付き合えるようになれば、何も大げさに「中国の脅威」「反中感情」を叫ぶ必要がなくなる。  「冷静で、かつ温かい日中関係の構築」は容易なことではない。しかし着実に日中関係は成熟してきている。日本と北京五輪を成功させたばかりの中国との関係はますます緊密になってゆくだろう。若い人たちの時代になればきっと素晴らしい日中関係が実現していると確信している。(0811)

 

人民中国インターネット版 2008年12月29日

 

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