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外にも内にも開かれる中国文化人の目

 

辻井喬・日中文化交流協会会長に聞く

 

左側は弊社社長の徐耀庭、右側は辻井喬・日中文化交流協会会長(写真・孫立成)

半世紀以上にわたって、中国と日本の文化の架け橋となって活動を続けている日本中国文化交流協会。2004年から会長を務める辻井喬氏は、著名な作家であり、詩人でもある。弊社の徐耀庭社長は訪日を機に、中国との文化交流に意欲を燃やす辻井会長に、両国の文化交流の過去と現在、未来についてインタビューした。

──日中文化交流協会は、どのような状況の中で誕生したのですか

1950年に日中友好協会が、ついで1954年には日本国際貿易促進協会があいついで設立されました。第1次日中民間貿易協定の締結、中国紅十字会代表団の来日、日本学術文化視察団の訪中など、民間の交流も始まっていました。さまざまな国際会議の場で、日中の文化人が接触する機会も増えていきました。

日本の文化人の多くは中国文化や中国人に対し、強い尊敬の念を抱いており、親近感を持っていました。文化の恩恵を受けた中国に日本が侵略したことを深く反省していた文化人たちは、一日も早く日中の国交正常化を実現しなければならない、新中国の文化人と交流したいという気持ちを強めていったのです。そのころ、周恩来総理をはじめ中国の指導者も、日本に、幅広く文化界を結集することのできる組織が生まれることを願っていました。

1956年3月23日、「文学、芸術、学術、報道、スポーツなど、広い分野にわたる交流を推進し、両国人民の友好と文化交流を促進する」ことを趣旨として、協会が創立されました。

──貴協会は中日国交正常化の実現と『中日平和友好条約』の締結に向け、国民世論を形成するうえで大きく貢献されました。その間の日中文化交流のエピソードを紹介していただけますか

協会が創立された年の5月、京劇の花形名優の梅蘭芳氏が来日しました。協会は歓迎実行委員会を設けて、戦後初の中国京劇代表団を歓迎しました。この時、梅蘭芳、欧陽予倩の両氏は、谷崎潤一郎氏と31年ぶりの再会を果たしています。

そして、日中友好の気運を一気に盛り上げたのが1971年の「ピンポン外交」と一九七二1972年の「舞劇外交」でした。

1970年に訪中した中島健蔵理事長の毛沢東主席との会見、周恩来総理との会談が、1971年3月に名古屋で開かれた第31回世界卓球選手権大会への中国チーム参加の大きな推進力となりました。この大会を舞台に、いわゆる「ピンポン外交」が展開され、日中国交正常化、米中関係正常化に大きな役割を果たしたことはよく知られています。

1972年7月、協会の招請で208人の上海舞劇団が来日し、東京、大阪などでバレエ『白毛女』『紅色娘子軍』を上演して友好ブームを盛り上げました。初日には三木武夫氏や中曽根康弘氏ら閣僚が出席し、田中角栄首相と孫平化団長との非公式会談が実現するなど、日中国交正常化を急ピッチで推し進めました。

──今年は中華人民共和国が成立してから60周年を迎えますが、どのように評価されていますか。とくに文化面の変化についてどう思われますか

60年の間、中国の変化と発展は目覚しいものがありました。1978年からの「改革・開放」、とくに1992年の鄧小平先生の『南巡講話』から、中国の経済は飛躍的な発展を遂げてきました。

経済の発展だけではなく、文化、教育などの発展もすばらしいと思います。この間、長春師範大学、四川外国語学院で日本語学科の学生たちと交流する機会がありましたが、学生さんはみなすばらしい日本語を使っていました。これは今の東京でもあまり聞けないきれいな、正しい日本語でした。言語だけではなく、学生さんたちは私たち以上に外国の文学や芸術について通暁していました。この変化は大きいと思います。

一人の文化人としての経験で言いますと、中国の芸術、文化に携わる人々の目が世界に開かれてくると同時に、中国の本来の文化、芸術にも開かれてきました。これはもっとも心強い変化の進み方だと思います。その間には、芸術上ではさまざまな傾向が生まれますし、中にはあまり健康的でないもの、中国の文化、芸術の伝統から見て、疑問に思うものも入ってくるでしょう。しかし、中国の人々は非常に賢明に、良いものを選択してきたと思います。

中国の映画もすばらしいと思います。例えば、最近観た『さくらんぼ 母と来た道』『花の生涯—梅蘭芳』などはみな良い映画でした。優れた演技、俳優、監督、音楽、おそらく中国の映画は国際的にも一流のレベルに達しているのではないでしょうか。同じように音楽にも、絵画にも、いろいろな変化が生まれています。そういう点で見ると、本当に日進月歩、私たちは中国のあらゆる芸術のジャンルから刺激を受ける状態になってきていると思います。

これだけ良い映画が作られているので、映画のスターを日本にお招きして、「華流」ブームを作ることができれば、と思っています。

──今後の中国の発展と中日両国の交流について、会長はどのように展望していますか

中国は、今の世界的な経済不況を乗り越え、経済的にも社会的にも文化の面でも、引き続き大きく変化、発展していくでしょう。

去年の北京オリンピックは、大衆的に中国を考え直すとても良い機会になりました。来年の上海万博もすばらしい機会だと思います。この機会を私たちは100%活用して、多くの日本人が今の中国を理解するよう働きかけていきたいと思っています。

現代中国の文化芸術は、日本人のかなり高い関心を集めてきました。私たちにとって非常に仕事をしやすい状況が生まれている一方、中国の芸術、文化を日本に紹介する自分たちの努力は、まだまだ十分ではないと思っています。

 

人民中国インターネット版 2009年10月

 

 

 

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