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日中関係改善のための提案

 

佐藤瑞貴

 日中関係の未来はまさに私たち若い世代にかかっています。頻繁に目にする関係悪化のニュースによって、日中間の問題は乗り越えられないのかと日本国民は絶望させられています。しかし日中関係改善のためには両者が歩み寄らなければ何も進展しません。習近平国家主席と安倍首相による日中首脳会談は実現されないまま長い月日が経ってしまいました。最近では2014年11月に開催されるアジア太平洋経済協力会議で日中首脳会談が実現する可能性が高いとメディアでは報じられており、私は非常に期待を寄せています。

 しかし、関係改善のために歩み寄るべきなのは両国の政府同士に限った事ではありません。むしろ政治的、軍事的にうまくいかない日中は別の側面から歩み寄りを図ることが望ましいと思います。二国関係が冷え込んでいるときこそ、民間の交流を活発に続けて互いを理解する気持ちを大切にしていくべきです。そこで私は3つのことに注目し、関係改善のために提案したい事があります。一つ目は中国人観光客、二つ目は少子高齢化社会、三つ目は環境問題です。

 まず一つ目の中国人観光客です。日本観光局のデータによると2014年8月には昨年度比56%増加の25.4万人もの中国人観光客が来日しました。日中関係は悪化の一途を辿っていますが、円安や格安航空会社の就航に後押しされて訪日中国人はここ最近激増しています。実際に日本に来てもらうことで、日本の伝統文化からポップカルチャー、習慣、日本人の人柄も肌で体感してもらう絶好のチャンスとなっているはずです。また私が特に驚いたのは中国人団体観光客が一人一つ、日本のメーカーの炊飯器をお土産用に持っているのをターミナル駅で見かけた事です。日本のメーカーの品質が信頼されているという事も忘れてはなりません。想像のみで日本人の姿を思い描くだけに留まらず、実際に来日して日本人と触れ合い、日本の質のいいサービスや製品を知ってもらって日本を好きになってもらいたいです。

 二つ目の少子高齢化は日中両国とも頭を悩ませている問題です。日本は既に人口減少が始まり、一方で65歳以上の高齢者人口は25%を超えています。今後も高齢者が占める割合が増え、介護を必要とする高齢者の数もさらに増えて行く事となります。中国は今や世界一の人口を誇っていますが、生産人口は既に減少し始めており、15年後には人口が減少し始めると言われています。恐らく日本と同じように少子化の中で要介護の高齢者人口が増え、その上一人っ子政策により若い世代一人当たりの介護の負担が大きい事が問題をより深刻にしています。日本ではある程度介護施設や介護のシステムが整備されていますが、中国では儒教の教えに基づいて介護は自分たちでやるという意識が根強いために未だに身内で介護をする事が多く、ただでさえ負担は大きいものです。未来を担っていく若者たちにとって両親や祖父母の介護は通れない道で、高齢化対策において日本が協力できるところがあるに違いないと思います。厳しい状況にある中国に日本の介護ノウハウを共有、或は相互に情報交換が出来れば若者同士が共通の課題に意識を持って取り組み、お互いに歩み寄るきっかけになれると思います。

 最後に三つ目の環境問題においての日中間の協力です。中国では現在PM2.5による大気汚染に悩まされており、都市部ではマスクや空気清浄機なしには生活できず、多くの人が呼吸器系を患っているとニュースで報じられているのを見ました。日本もかつて高度経済成長を迎えた時代に公害でたくさんの人が苦しみましたが、高度な技術を以て環境に優しい国へと成長しました。そこから得た学びは今の中国のPM2.5にも生かせるはずですし、日本の技術を生かして大気汚染が改善されれば中国の人からの信頼も得られると思います。何より日本は中国の東側に位置するためにPM2.5が九州地方等へ飛来してきており、PM2.5の対策は中国だけに留まる事ではありません。日中両国の大気を澄んだ状態で保つためにも、共に手を打って行きたいです。

 最後に、私たちが知っている互いの姿はメディアを通して見たごく一部でしかないと思います。日中間での衝突のニュースが流れるたびに私たち日本国民の間では嫌中や反中の感情が高まっていると感じるように、中国でも日中間の問題が報道されるたびに日本に対する悪い感情が高揚していることでしょう。私たちは報道に煽動されてしまって互いの本当の姿が見えなくなってしまっているのではないでしょうか。いよいよ来年、2015年には終戦70周年を迎えます。これまでにも散々取り組んできた歴史認識の相違はなかなか解決せず、もはやこの壁を乗り越える事はとても難しい事と思います。しかし戦争を直接経験していない若い世代は、戦時中の痛みを知らないが故に先入観を持たずに関わっていく事が出来るはずです。政治的、軍事的には対立していても民間の個人レベルでの交流を活発にしていかなければ心は離れて行くばかりです。それに、お互いの心が通っていれば日中間で何か起こってもお互いに排外的なナショナリズムが煽り立てられる事は無いと思います。東アジアの二大経済大国である中国と日本が良好な関係でいられる事が地域全体の安定につながるに違いありません。1972年の日中国交正常化の際に首相を務めた周恩来が残した言葉に次のようなものがあります。「若い人で、何度かつまずいたり、障害にぶつかったりしない者はいない。しかし、障害にぶつかっても落胆してはならない。いちばん苦しいときでも、気を落としてはならない。前進を続ける気概をもて。勇気をもて。希望の光が、我々を照らしている」。日中両国は何度となくぶつかってきました。しかし、希望の光が私たちを照らしているはずです。きっといつか両国にまたがる問題を乗り越え、良い関係を築く事が出来る日がくることと信じています。

 

人民中国インターネット版 2014年12月

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