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800万人が理想の教育に感動!
──なぜ読まれる『窓ぎわのトットちゃん』

 

 

孫雅甜=文・写真

 

窓辺的小豆豆』(『窓ぎわのトットちゃん』中国語簡体字版) 『絵本 窓辺的小豆豆』(『絵本 窓ぎわのトットちゃん』中国語簡体字版)

 

 

児童書ブームをけん引

女優・タレントの黒柳徹子さんによる自伝的物語『窓ぎわのトットちゃん』(以下『トットちゃん』と略す)は日本で広く知られる児童文学作品だが、実は中国でも2003年に新経典文化有限公司(以下「新経典」と略す)により正式に翻訳・出版(中国での書名は『窓辺的小豆豆』)され人気を博している。すでに累計800万部以上と日本での発行部数に肩を並べるほどのベストセラーになっており、教科書に採用している小中一貫校もあり、中国児童図書販売市場における一つの奇跡とさえ言われている。さらに、今年1月には、北京颶風社文化有限公司(以下「颶風社」と略す)から『絵本 窓ぎわのトットちゃん』(中国での書名は『絵本 窓辺的小豆豆』)が出版され、数えきれないほどの人々に楽しみと憧れをもたらした作品は、絵本という新たな美しい姿で子どもたちの心の扉をノックしている。  

近年、絵本に代表される日本や欧州、米国の児童向け図書が数多く紹介され、中国の子どもたちは海外の優れた書籍の魅力を知るようになった。従来からの中国の児童文学作品に海外作品が加わり、児童向け図書市場に豊かさと可能性が広がっている。こうしたブームをけん引しているのが『トットちゃん』なのだが、それでは日本人が書いた児童書が、中国の読者に愛されている理由はどこにあるのだろうか?

 

きっかけは編集長の記憶

 「『トットちゃん』はミラクルです」颶風社の理事長になる以前、新経典に十数年間勤務した猿渡静子さんは、「トットちゃん現象」についてこう話す。13年前に『トットちゃん』中国語簡体字版の版権を取得し、中国での同書出版を成功させたのがほかならぬ猿渡さんだ。  

 

猿渡静子・颶風社理事長

 

 

「2001年でした。新経典の陳明俊編集長が一緒に出版の仕事をやらないかと誘ってくれたのです。彼は、この数十年両国の間に恩讐が続く一つの大きな原因が、中国人の日本に対する理解不足であり、両国はもっと交流すべきだと考えていました。そして、図書による交流は影響力が最も長く続くものなので、日本の書籍を中国に紹介したいというのです」  

当時、中国の図書市場における日本の書籍はごくわずかで、児童書に至ってはほぼ皆無だった。日本に出張した際に、書店で絵本を見つけた陳編集長が猿渡さんに向かって「これは何ですか?」と質問したこともあったという。「中国には日本のような絵本という形の児童書はまだなかったのです。彼は驚いて、『日本の子どもたちはこんな本を読んでいるんですね』と感心した様子で話したものです」  

二人は日本の書籍の版権取得に着手した。「2001年の末、陳編集長がある本を探してほしいと言ってきました。子どもの頃に読んだ日本の本で、活発な少女の物語だったが書名が思い出せないというのです。退学になった主人公を新しい学校が入学させてくれた物語で、『そうそう、授業中彼女は窓ぎわにいるのが好きです』との説明でした」。猿渡さんはその日のことを振り返ると、今でも微笑まずにはいられない。「そう、『窓ぎわのトットちゃん』です。でも、日本で出版されたのは20年も前のことですし、私はすぐには思い出せませんでした」。そしてある日、猿渡さんは「窓ぎわ、窓ぎわ」と無意識につぶやいていた時に、突然書名を思い出した。新経典はさっそくエージェントを通じて版権を取得、こうして『トットちゃん』が中国にやって来たのだ。

 

人民中国インターネット版 2015年5月22日

 

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