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──なぜ読まれる『窓ぎわのトットちゃん』

 

孫雅甜=文・写真

 

 

劉岳・講談社北京文化有限公司総経理

 

 

日本の書籍に多様なニーズ

 中国に紹介された数多い日本の書籍の中で、『トットちゃん』は際立って大きな成功を収めたが、それは中日双方の出版社の努力と工夫なくしてはあり得なかった。

 新経典と協力して『トットちゃん』の中国での出版を成功させた日本の講談社は、著作権取引などさまざまな形で中日間の書籍交流に長く携わってきた。講談社北京文化有限公司の劉岳総経理によれば、1966年には当時の講談社社長野間省一氏が戦後初の日本出版界代表団を率いて北京を訪れ、廖承志氏と中国出版界の熱烈な歓迎を受けたそうだ。その後、講談社は文物出版社、人民美術出版社など中国の出版社と協力し、大型叢書『中国の博物館』(全8巻)や大型写真集『中国の旅』など中国文化や自然風景に関する中国の書籍を日本で出版しヒットさせた。『中国の旅』は日本人の中国旅行ブームの大きなきっかけになった。中国と日本の交流が長い間途絶えていたため、それらの本は中国を知りたいという日本の人々の知的欲求に大いに訴えたのだ。

 近年、中国の出版社は講談社から著作権を取得した『德川家康』、東野圭吾の一連の推理小説、『講談社 中国の歴史』など、ベストセラーや評価の高い優れた書籍を出版している。一方、講談社は『神なる狼』『初恋の来た道』『悲しみは逆流して河になる』など数多くの中国の話題作を日本に紹介している。「中日間の書籍交流は双方向でなければなりません」と劉総経理はきっぱりと話し、中国の読者の日本の書籍に対する需要がますます多様化していることを指摘している。「若い人たちは漫画などのサブカルチャーに対する興味が強くなっています。昨年、中国語版の『講談社 中国の歴史』が出版されてから、社会科学類の書籍への需要も増え、以前はあまり人気のなかった書籍まで版権争奪競争の対象になっているほどです。そして日本の伝統文化に関する書籍も再び注目されるようになりました。これは中国人が日本に大変興味を持っていて、できるだけ多く、もっと全面的に日本を知ろうとしていることを裏付けています」

 

若い作家の育成が課題

『トットちゃん』を代表とする海外の児童書は中国の子どもたちに新たな楽しみをもたらし、多元化した児童書市場は子どもたちの心を豊かにしているが、中国国内の童話や物語の人気も依然として高い。曹さんのほか、鄭淵潔、楊紅桜、伍美珍といった児童文学作家の作品は長い間親しまれているが、実はこの20年間、「売れる」作家の顔ぶれにはほとんど変化がない。中国児童文学の新たな担い手はどこから現れるのだろうか?  

「中国児童文学の勃興は非常に遅かったのですが、葉聖陶、張天翼、陳伯吹ら初期の童話作家たちは優れた作品を創作しました」。自らも童話作家で雑誌『児童文学』の編集者余晋さんはこう話す。「でも、この数年間に優秀な青年作家が多数登場し、文壇に新鮮な息吹を送り込みました」

 

童話作家、雑誌『児童文学』の編集者余晋さん(本人提供)

 

 

余さんは毎日数十編の投稿を受け取るが、大部分は童話だ。「独創的な童話が多くなりました。多くの作家は非常に努力しており、絶えず探求と試みを行っており、題材からスタイル、表現方式まで常に革新を続けています」。童話作家の話になると余さんは口調もなめらかだ。「例えば、浙江省の童話作家湯湯さん。彼女の作品は素晴らしいオリジナリティーと中国的な味わいを持ちます。湖北省の蕭袤さんの童話はユニークで、豊富な想像力に満ちています。明確な意義を見出だせないこともありますが、読み手を楽しませる魔力があります」

2014年、『児童文学』社の児童書ブランド「童書館」から24人の青年童話作家の代表作が『中国童話新勢力叢書』(全2巻24冊)として出版された。若く活力に満ちたこれらの作家は、創作を通じて新しい童話の観念を実践し、新しい領域を探り続けている。『トットちゃん』などが開拓した市場に、中国童話創作の新たな力が育ちつつあるようだ。

では、中国では優秀な作家はどのようにして育っていくのだろう? 一般的には、出版社の編集者が潜在能力のある作家を発掘し、彼らの創作活動をサポートし、作品の宣伝・出版を行う。作家自身の創作スキルと作品が優れたものと判断されれば、出版社の重点支援対象とされる。しかし、作家の育成は出版社だけの事情で行われるものではなく、国家と社会がより大きな責任を負うべき問題だ。余さんは出版社の努力以外に、作家を育む「土壌」も非常に重要なものだと考えている。「国家が文化、文学を重視し、ふさわしい支援措置があれば、作家は落ち着いて作品を創作でき、優秀な作品も生まれてきます。また、社会も同時に進歩できます。多くの人が読書を好み、子どもを愛し、子どもの読書問題と資質を伸ばすことに注目するなら、作家はさらに創作意欲を刺激されるでしょう」

 

 

人民中国インターネット版 2015年5月22日

 

 

 

 

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