拡大する「富裕層」がカギ

 

成熟社会を見る視点

 

 消費の拡大につながる富裕層の拡大は、内需主導の経済成長を目指す中国にとっても、また、中国市場での販売促進を狙う内外企業にとっても歓迎すべき事態といえます。

 

 しかしながら、富裕層に属する人たち、特に富豪と呼ばれる人たちの中には、社会的責任感、法律遵守の精神、慈しみの精神に欠けている人も少なくないようです。例えば『フォーブス』誌が発表した2005年版の長者番付に載った富豪の中から、契約詐欺事件を起こしたり、また、脱税、贈賄などにかかわっていたりした人が出たことから、「長者番付転じて指名手配書」など、悪い冗談になったほどです。

 

 しかし富裕層のほとんどは、合法的に財を蓄積しています。国家もこうした人民の財産を保護する『物権法』を採択するなど、「先富論」を実践できる環境づくりを急ピッチで進めています。

 

 高度成長を遂げた中国は、今、社会保障の充実、環境保全に力を入れ、また、企業は社会的貢献に積極的に取り組みつつあります。成果を社会の発展のために還元するという姿勢が前面に押し出されてきています。

 

 一足早く豊かになった人が、「先富論」の「豊かになった人は社会に還元せよ」の「暗示」をどう実践するか、中国社会の成熟度を知るカギがそこにあるようです。  (日本貿易振興機構海外調査部主任調査研究員 江原 規由)

 

  注1 中証ネット 2007年7月2日。

注2 不動産関係者以外では、物流、IT、銀行業の株主など。

注3 先に豊かになれる人から豊かになれとした論。

注4 『中国証券報』2007年10月7日。

注5 70年代の三種の神器は腕時計、自転車、ミシン。

 

人民中国インタ-ネット版

 

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