生産請負制から工場経営へ

 

鼎を鋳た農民 王三妮さん

 

2006年、中国政府は農業税を廃止した。2600年の長きにわたり続けられてきた農民への課税が、ついに終わったのである。

 

この年の11月、河北省霊寿県青廉村の農民、王三妮さんは70000元(約105万円)の費用をかけて、自宅の青銅器製造工場で一基の青銅の円鼎を鋳造した。「告別田賦」(地租との告別)と名づけられたこの鼎は、高さ1メートル、重さ250余キロ。

 

銘文の中で王さんはこう書いた。「私は農民の息子であり、先祖代々、田を耕し、布を織り、地租を納めてきた。今日、地租に告別した。私は農民を代表し、鼎を鋳て銘を刻し、後の人々にこのことを伝えたい……」

 

歴史的変化を鼎に込める

 

霊寿県は河北省中西部にある農業県である。王さんは今年、還暦を迎えた。一家は7人、土地は14ムー(1ムーは6.667アール)。1999年に青銅器製造工場を興したが、それ以前の年収は、自家用の食糧を除き、食糧を売って3000元近くだった。

 

しかし当時は毎年、国へ納める農業税が500余元で、さらに村や郷の内部留保金を払わなければならず、残りは1000元しかなかった。

 

2004年、霊寿県では農業税免除が試験的に始まった。その年、王さんは農業税を免除されただけでなく、98元の食糧補助金をもらった。「農作物を作っても税金を納めなくていいうえに、補助金までもらえる。これは農業の歴史的な大変化ではないでしょうか」と王さんは言う。

 

その後、王さんはこの改革を何とかして記念することはできないか、と頭をひねった。そしてある日突然、こんな考えが浮かんだ。「『告別田賦』の鼎を鋳造しよう」。中国では昔から、鼎は「国の宝」であり、鼎の銘文の多くは、国の大事が記載されてきたからである。

 

請負制からさらに発展

 

王さんは今でも「改革・開放」前の情景をはっきり覚えている。当時、すべての村民は、生産隊で働いていた。毎日、仕事に応じて労働点数を計算した。毎年の食糧生産は、1ムー当たり300斤(150キロ)余りだった。作柄の良い年は、みな腹いっぱい食べられたが、悪い年は食糧が足りなかった。霊寿県の80%の農民は、衣食が足りた状態ではなかった。

 

「改革・開放」後、農家ごとの生産高リンク請負制が急速に農村に広まった。霊寿県でも土地を各戸ごとに請け負った。新しい農業政策は大いに農民の生産意欲を刺激した。「当時、村民は、土地(の請負権)が分けられたのですっかり興奮し、やる気満々だった」と王さんは回顧する。その結果、全村の食糧生産は、1ムー当たり600斤以上に達し、80%の農民の衣食の問題が解決された。

 

農閑期には、農民たちは都市へ出稼ぎに行った。王さんの村でも、農閑期に若い人はみな出稼ぎに出た。また村では多くの人が、養殖業を興し、かなりのお金を稼いだ。

 

他の人たちが豊かになるのを見て、王さんもあわてた。彼は子どものころから粘土細工が好きで、彼が粘土で作った動物や人物は真に迫っていた。あるとき、金属の鋳造を勉強しないかと勧める人がいて、彼は興味をそそられた。

 

農家の多くが建て増しした

 

霊寿県は2000年以上前の春秋戦国時代には中山国に属していたので、多くの文物が出土していた。王さんは頭を働かせて青銅の文物そっくりの青銅器を鋳造した。

 

そうこうするうちに、王さんの青銅器は人々に気に入られ、多くの人が買いに来るようになった。数年の試行錯誤の結果、王さんは青銅器でお金を稼げるようになった。現在、王さん一家は毎年、3~4万元の収入があり、村の中では豊かな家庭になった。

 

王さんから見ると、もっとも彼の生活を変えたのは、第1に「改革・開放」初期の農家ごとの生産高リンク請負制の実行であり、第2はこの数年、政府が提起した新農村建設で、農業税を免除し、さらに農村の義務教育段階の子どもの学費と雑費をなくしたことである。

 

このほか、青廉村でも農村の新型の医療共済制度を実行している。この前、王さんの奥さんが腎臓を患って手術を受け、3800元を使ったが、村の医療機関から1800元以上還付された。こうした福祉政策は村民の生活の負担を軽くしている。

 

「王三妮」という名はいまや、村で有名になっている。近く行なわれる村委員会の選挙では、彼はもっとも人気がある候補者であるという。

 

メモ

1978年11月、安サユ省鳳陽県小崗生産隊の18戸の農民が率先して、農家ごとの生産請負を実行した。その後、政府は、農家ごとの生産高リンク請負制の生産方式を認め、全国に推し広めた。

2001年3月、中国は農村の税金の改革を行い、農村の各種の税を廃止したり標準化したりして、市場経済体制に適応する新たな農村の租税体制を打ちたて、適切なものにした。

2005年10月、中国共産党第16期5中全会で、「社会主義の新農村」のスローガンが打ち出された。「生産を発展させ、生活を豊かにし、郷土の雰囲気を礼儀正しくし、村の姿を整え、管理を民主的にする」という要求に基づいて、全面的に農村建設が推進された。

2006年、政府は全面的に農業税を廃止した。

 

人民中国インターネット版

 

 


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