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オリンピックは中日両国国民の感情をさらに近づけることになる

 

8月15日、北京五輪の中日女子サッカーの準々決勝を観戦するつもりの加藤嘉一さんは多少緊張気味で、この試合は「友好的な雰囲気の中で行われてほしい」と思っていたとはいえ、この北京大学の日本人留学生はやはり「8・15」という特殊な日に気づいた。「この日は第二次世界大戦の日本降伏63周年にあたる日である」。試合の前、加藤さんはイギリス『フィナンシャル・タイムズ』紙のコラムに文章を発表し、「今晩何か事が起こることなく、スポーツはスポーツ、政治は政治で、両国の選手が全く試合に打ち込み、友情をを深めるよう願う」と書いた。

でも、試合が始まった後、加藤さんはすぐこの懸念を払しょくした。「試合の雰囲気は非常に良かった。」彼は『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙の記者に、「選手たちは『スポーツマン・シップ』に則って、観衆たちは『スポーツはスポーツである』という精神に則って今回の試合に参加し、観戦した」、「応援団の振る舞いも非常に秩序整然としたものだった」と語っている。

加藤さんは、中日両国の国民は北京五輪をきっかけにして心と心の外交をくり広げ、相互間の理解と信頼を深めることになったと見ている。

日本のスポーツ選手たちは「中国の元素」を示すことに力を入れた

加藤さんだけでなく、北京五輪の開幕式を見た中国の観衆たちも、オリンピックは中日両国国民の心と心の交流をさらに促すものであると感じた。「私は、日本のスポーツ選手たちが会場に入った時に手にしたのは中日両国の国旗であったことを覚えている」、「その時私は、日本の選手たちがこうしたことは本当に悪くないと思った」と人民大学の学生の余敏さんは振り返った。長春に住んでいる唐露薇さんは、日本選手団の先頭を行く旗手は卓球選手の福原愛さんであると気づいた時、とりわけ興奮し、「福原愛さんはすごくかわいい人であり、私はとりわけ彼女が好きである」、福原愛さんの出場によって私は日本代表団に対してさらに好感を抱くようになったと語った。「日本代表団のメンバーたちが日本の国旗と中国の国旗を手に持って入場したことは、日本のスポーツ選手たちの自発的な行為であり、彼らはそれによって中日関係が友好的であってほしいという願いを示したのである」とTOC会長の竹田恒和氏は『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』に語った。

中国の観衆を興奮させたことは日本のスポーツ選手たちがさらに北京五輪の競技場で「中国の元素」を提示したことである。順義区にあるオリンピック水上パークで、人々は日本チームの選手たちがまとっているユニホームの上に漢字が印刷されていることに気づき、これは試合の際に中国の観衆たちに更に自分たちがどの国のものかを見分けやすくするためであり、応援してもらうことを願う気持ちを表わしたものであると語った。

体操競技場で、日本選手の鶴見虹子さんの床運動は在日中国人音楽家の呉汝俊さんの伴奏曲を選んだ。曲の中の京胡(弦楽器)の演奏に対し、その場にいた中国の観衆たちはひとしお親しみを感じ、鶴見虹子さんがその体操演技の中で演じた少林寺拳法のような動作は、更に満場の喝采声を巻き起こした。

「これらの『中国の元素』は日本のスポーツ選手たちが中国の観衆たちに好感をもってもらいたいという気持ちを私に感じさせた」と余敏さんは語った。

中国の観衆たちが日本チームを応援

でも、日本の共同通信の記者の目の中では、中国の観衆たちの「一番お気入りの選手」はやはりずっと中国でトレーニングを受けている福原愛さんであった。8月14日、福原愛さんはオーストラリアの中国系オーストラリア人選手のミャオミャオさんと対戦した時、観衆たちは一辺倒といってもよいやり方で「陶磁器のお人形さん」と言われている福原愛さんを応援した。「負けないで!」「福原愛さん、頑張れ!」という応援の声は一方で下火になれば他方が盛り上がった。日本の記者の報道によると、ある中国人観衆に至っては1000元で人づてに入場券を買い、競技場に来て福原愛さんを応援し、この観衆は、「陶磁器のお人形さん」が出ている試合でさえあれば、自分は「どんなことがあっても応援する」と語った。

試合の後、福原愛さんが取材を受けた時によく流暢な中国東北なまりの言葉で「北京は私のホームグラウンドであると感じている」と語ったことも無理からぬことである。

日本で発行部数最大といわれる『読売新聞』紙も中国の観衆たちの日本人選手たちに対する親しみと尊重の気持ちに気づいた。8月11日の『読売新聞』紙の夕刊に掲載された記事は、中国の観衆たちはオリンピックの試合を観戦する中でエチケットをちゃんと守っていたと伝えている。

その記事はさらに次のように述べている。水泳競技の授賞式で、中国の観衆たちは金メダルに輝いた日本の北島康介選手に熱い拍手を送った。日本の国歌の演奏の時に、中国の観衆たちもすべて中国の国旗を振り回して祝賀の意を表した。8月10日の夜、男子66キロ級柔道で一位となった日本の内柴正人選手に対する授賞の際、競技場全体の中国人観衆数千人はほとんどすべてが日本の国歌の演奏の際に起立した。ある北京の観衆は『読売新聞』紙に、「チャンピオンは中国人であるか、それとも日本人であるかを問わず、私たちはいずれも敬意を表すべきで、まして中国は主催国でもあるのではなおさらである」と語った。「ここ数年間に中日関係が経てきた風雨と屈折を自分の目で見てきた若者として、中国の観衆たちが日本の選手たちを応援する場面を見て、非常にうれしく思った」と加藤さんは語っている。

在北京日本外交筋は観衆に「ルールを守る」ことを注意

中国の観衆たちの親しみの深さと好意はさておき、事実上、良好な雰囲気は日本人観衆たちの競技場の規定に対する順守と切り離せない。在北京日本外交筋はわざわざ北京五輪を前にして、自国の観光客に、「日本がんばれ!」という字が書いてある応援旗などを持って試合場に入ることは避けては、とアドバイスする人もいたと言われている。外交筋は要注意事項を内容とするPR小冊子をたくさん印刷し、旅行社などを通じて観戦に来た日本人に配ったという説もある。このほか、北京五輪の期間に、在北京日本外交筋はまた数人のスタッフを派遣し、サッカー、野球などの観衆が激昂しやすい試合場に行って、試合がスムーズに進むよう協力した、といわれている。

長富宮ホテルに設けられた「日本人の家」の従業員は『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』に、北京五輪をきっかけに中日両国国民の相互理解を深めるため、長富宮ホテル1階のサービスセンターでは中国へ観光、旅行に赴く知識も毎日展示している。外交筋が観光客に配ったPR小冊子の中には、日本人観光客が観戦のルールを守るよう呼びかける以外、中国観光についてのいくつかの細かい注意事項も紹介している。

「これは良性循環の始まりである」

「競技場における中日間の友好的な雰囲気は中日関係がこのところ極めて大きく緩和した成果を具現するものであり、良性循環の始まりである。」中国社会科学院日本研究所研究員の金煕徳氏も北京五輪の試合場における中日間の友好的な雰囲気を自分の目で見た。金煕徳氏は、両国政府はこのところ「中日関係の暖かさを取り戻すために多くの仕事をした」、政府の提唱の下で、民衆は呼びかけに応じてより多く民間の交流を展開し、これによって更に政府間の協力を促進し、「良性循環に入った」と見ている。

しかしながら、氏は同時に、「中国の民衆の中から自発的に芽生え出した日本に対する友好的な感情は、今は形成し始めたばかりである」と強調し、「韓日関係を例として、1回のスポーツのイベントを通じて中日間の歴史問題を帳消しにすることを期待することはできない」と語った。

このため、金煕徳氏が見るには、北京五輪の後に中日関係がいったいどのように発展するのかということのポイントは、「日本の右翼勢力が再びしゃしゃり出てくるかどうか」を見なければならない。

「例えば、これからまた靖国神社参拝があるのかどうか?中国人民の感情を逆なでる言論の発表があるのかどうか?今後日本の教科書はどのように改正するのか?」と金煕徳氏は三つの問いを出し、民間関係を含む中日関係が引き続き暖かくなるかどうかはさらに日本政府の今後の姿勢を見なければならないと見ている。

加藤さんはコラムの中で、「北京五輪は中日両国国民の相互理解を促すことになる。北京五輪が終わった後、中日関係がさらに発展し得るかどうかは私たちがさらに関心を持つことに値する」と書いている。

 

「チャイナネット」2008年8月21日

 

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