交流のバリアフリー

 

パラリンピックの開催をきっかけに、障害者たちの生活状況に関心が集まっている。北京市の政府や民間団体は、 障害者の生活条件を改善し、彼らの社会参与を支援するために力を尽くしてきた。北京が障害者にやさしい真のバリアフリー都市になることを、誰もが願っている。

大偉の解説を興味津々に聞く視覚障害者たち
北京市鼓楼西大街のある四合院住宅の中に、「心目映画館」と呼ばれる30平米の部屋がある。ここにはテレビ、DVDプレーヤー、拡声器が1台ずつと、数十脚の椅子があるだけだ。しかし土曜日になると、多くの目の不自由な人たちが北京市内のあちこちからやってきて、王偉力さんが弁士をつとめる映画を「聞く」。人々は彼を「大偉」と呼ぶ。

大偉が映画の弁士を始めるようになったのは3年前のある夜からだ。大偉が米国映画『ターミネーター』を見ていると、目の不自由な友だちがやってきた。そこで彼は、画面を見ながら台詞や音声にあわせて語り、スクリーン上で今、何が起こっているかを友だちに教えた。

映画が終わった後、思いもかけなかったことに、その友だちはとても興奮して、大偉を抱えあげて何回もぐるぐる回りながら、「すごい。僕も映画が見えるんだ!」と叫んだ。自分のしたこんな小さなことが、他人にこれほど大きな喜びをもたらすとは、思いもよらなかった。

この経験が大偉の心に、視覚障害者のための「映画館」をつくろうというアイディアを芽生えさせた。そして誕生したのが「心目映画館」である。 目の不自由な人のために映画の弁士をつとめるうえでもっとも重要なのは、彼らがもっとよく映画の内容を理解できるように、視覚情報の欠落を補うことである。

「心目映画館」の中で重量挙げの基本について学ぶ視覚障害者たち
映画を分かりやすく語るため、大偉は事前に映画を3回見て、重点的に説明すべきシーンを書きとめておく。目の不自由な人が外界をどのように感じるかを体験するため、大偉はよく眼帯で目隠しをして散歩に出かける。こうやって散歩から帰ってくるたびに、映画の語り方について新しい考えを思いつくのだ。

視覚障害者たちはみな、大偉が弁士となって語る映画が大好きだ。「目の不自由な友だちに電話をかけて、『映画を語るよ』と言うと、いつもうれしそうに『やった、やった!』と叫ぶ。実は彼らは人と交流したい、社会とつながりたいと強く思っているのです」と大偉は言う。

始めのころは、一日中家にこもっていて、身なりもかまわない人が少なくなかった。長い間洗濯していない服を着て映画を『聞きに』来る人もいて、臭いがした。しかし、映画を『聞く』ことを通して、彼らは次第に外の世界を知るようになり、身なりにも気をつけて、清潔な服を着るようになりました」と大偉。

北京五輪の開催中、大偉は視覚障害者たちに試合状況を解説した
大偉の「心目映画館」は、視覚障害者のために外の世界をつなぐ橋を架けた。うれしいことに、現在、ますます多くの人がこの公益事業に参加するようになった。「心目映画館」では、各業種からきたボランティアが無報酬で、映画を「語って」いる。また健常者が視覚障害者の生活状況や心理状態を理解できるように、「3日間、真っ暗の世界で暮らしたら」という体験教育プロジェクトを挙行している。

身体障害者たちが社会から離脱する重要な原因の1つは、情報の交流が順調でないことだ。だから身障者と健常者とのコミュニケーションを強化するために、政府や民間団体はさまざまな取り組みを行っている。たとえば、社区が行なう身障者の学習活動、大偉さんの「心目映画館」、学校内の手話学習サークル……。

現在、インターネットの普及のおかげで、身障者が外の世界の情報を得ることがずいぶん便利になった。たとえ足が不自由で、長く家にこもっていても、いつでも各方面の最新情報を知ることができる。たとえ目が不自由でも、専門の音声ソフトを通じてネットに接続し、「声を出す本」を「読む」ことができる。科学技術の発展は、身障者により広い活動の空間を提供したと言えるだろう。(高原=文 馮進=写真)

 

人民中国インターネット版 2008年9月2日

 

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