鳳凰単欉を訪ねて

 

棚橋篁峰

中国茶文化国際検定協会会長、日中友好漢詩協会理事長、中国西北大学名誉教授。中国茶の国際検定と普及、日中交流に精力的な活動を続ける。

烏龍茶というと、日本では鉄観音や武夷岩茶、凍頂烏龍茶が有名ですが、もう1つ大事な種類に鳳凰単欉があります。今回はその鳳凰単欉を訪ねてみましょう。

独特の自然に育まれる

鳳凰山の山並み
鳳凰単欉は、広東省東部、福建省近くの潮安県が茶産地です。旧名は海陽県です。雨量は豊富で、空気は湿潤、年平均降雨量は1668.3ミリ、気候は温暖で、夏が長く冬はあまりありません。年平均気温は21.4度です。

潮安県の北部は鳳凰連山が屏風のように連なり、南側には烏崠山、大質山、万峰山など1000メートル以上の高山が10あります。主峰の鳳烏髻は広東省の東部で一番高く、標高は1497.8メートル。「潮汕屋脊」(潮州と汕頭の屋根)といわれ、北方の寒冷気象の侵入を防いでいます。

南部の桑浦山は標高484メートル、名茶生産の気象条件が整い、独特の自然環境ができあがっています。茶産地区が集中しているのは、北部の山岳丘陵台地に位置する鳳凰鎮です。鳳凰鎮へは、刺繍のハンカチで有名な汕頭を出発、潮州を経由して2時間半ほどで到着します。

「宋種」単欉茶の原木
鳳凰鎮から見える標高1391メートルの烏崠山の頂上には、古い火山のカルデラ湖があります。面積は4ヘクタール、「天池」と称されるこの湖は、1年中氷結することがなく、豊かな水をたたえています。そのため、茶畑の気象環境条件を調節する役割を担っているのです。

伝説によれば、南宋末年(1278年)、宋の皇帝が南に逃れ、鳳凰山までやって来たとき、咽の渇きを覚え、水もなく苦しんでいました。侍従たちは山上にある1本の木の葉を探し、咀嚼した後、生唾で渇きを止めたのです。これよりのち、人々はこの木を植えるようになり、「宋茶」といわれるようになりました。

鳳凰茶はまたの名を「鳥嘴茶」ともいいます。なぜ「鳥嘴茶」と呼ばれるようになったかには、2つの説があります。1つは、鳳凰茶の葉の先が湾曲しており、鳥の嘴に似ているというもの。もう1つは、鳳凰が嘴に茶の枝を1本と、茶の実を2つ銜えて、宋帝の前に置いたというものです。茶の枝は宋帝の渇きを癒し、茶の実はあちらこちらに散らばって「宋種」という茶樹になったと伝えられています。鳳凰が持ってきてくれたので、「鳥嘴茶」と呼ばれたというわけです。

老茶樹
「宋茶」伝説によって知られ、鳳凰山の原種の1つで「宋種」と呼ばれる茶樹は、標高1000メートル以上の烏崠山李仔坪村の高地に生長しています。

当地の茶農によると、原木は1928年に枯れてしまい、10本に分枝したそうです。茶摘みのときには、10人が木に登って摘みます。

1954年、茶葉の生産技術員であった梁祖文がかつて枯渇した株の地上部分の調査を行った結果、幹の直径は46センチあることがわかりました。現在、古樹のあった場所に保存されている鳳凰山最古の老茶樹は、分枝された1株で、「伝樹葉」と呼ばれています。

この茶樹の樹齢は400年、1988年の実測によれば、高さは5.8メートル、茶樹の広がりの最大部分は7.3メートル、幹の部分は3本に分かれ、平均の幹の直径は34センチでした。この大茶樹は、「宋茶」として護られ、現在も生き生きと生長しています。

二分紅く八分緑の茶葉

若緑があざやかな茶葉の新芽
伝説によって生まれた名茶、鳳凰単欉はどのように作られるのか、茶産農家を訪ねました。一般的な烏龍茶とは1寸違っています。

まず茶摘みは、一芯一葉になって2、3日経った新芽を摘みます。茶摘みの時間も厳しく、朝、雨、ひざしの強い日には行いません。普通、晴天の午後2時から5時に行い、茶葉を優しく採ります。

製茶は、茶摘み→晒青(日光萎凋)→涼青(室内萎凋)→掽青(揺青・籠に入れ揺らしながら香りを出す)→殺青(酸化酵素の働きを止める)→揉捻(揉む)、そして乾燥の手順で行われます。

製茶の中でもっとも重要な工程は掽青です。一般的には揺青といわれるもので、鳳凰単欉の独特な品質が形成できる肝心な作業です。この工程は、揺らすことと休むことを繰り返すのです。普通は5、6回繰り返します。力の加減は徐々に強くなり、揺らす回数を徐々に増やします。休む時間は、茶葉の変化の状況によって決めます。こうして揺青した茶葉は徐々に色が変化して、二分紅くなり八分緑になります。これを「紅辺緑腹」といいます。

「紅辺緑腹」になった茶葉
茶摘みをした茶葉はその日のうちに加工するので、普通、夕日が沈む頃から製茶が始まり、朝日が昇る頃にできあがります。

こうしてできた鳳凰単欉は品質が極めて高く、「形は美しく、色は青緑、香りは豊か、味はまろやかで甘い」という4つの特徴があります。雅で清らかな自然の花の香があり、濃厚でまろやか、後味が甘くてさっぱりしています。このような素晴らしい鳳凰単欉は、数回淹れても味、色、香が変わりません。

独特の味を持つ鳳凰単欉には、熱烈なファンがいます。また「潮州工夫」というこの地方の茶芸は、今日の中国茶芸の基礎になったと言っても過言ではありません。次回、紹介することにしましょう。0809

 

人民中国インターネット版 2008年10月

 

 

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