往来の道を踏み固め、幅を広げよう

南京大学 朱暁蘭

 中日両国は一衣帯水、隣国であります。中国の秦漢時代から、両国の先人たちは、往来を始めてきました。中日は二千年の友好往来の歴史を持っています。しかし、1894年中日甲午戦争(日清戦争)以来、1945年の日本敗戦まで、中日両国は対立してきました。近代の50年間は不幸な時期でした。

このように二国間で長い歴史を持っているのは、世界の中でも中国と日本しかありません。

敗戦後、日本の政府は経済回復に専念して、日本経済は目覚しく発展しました。六十年代には、アメリカに次ぐ世界第二位の経済大国になりました。一方、中国も改革・開放政策を実施以来、経済が速いスピードで発展してきました。これにしたがって、中日両国間の交流は飛躍的に発展して、いまや両国は経済的に高度な相互補完関係にあります。

しかし、おかしなことに、中日両国の国民の親近感の低さと不信感はびっくりするほど拡大しました。これは一体なぜなのか。経済の発展につれて、なぜ両国の国民はお互いに対する距離感がだんだん出てきたのでしょうか。

これは中日双方でメディアによる客観的な報道が足りないのが原因だと私は思います。

中国では、日本についてのニュースが本当に少ないのです。もしあったとしても、日本の政府関係者が、靖国神社を参拝したなど悪いことだらけです。まるでそれによって、日本という国はなんて悪いのだろうと中国人に思わせようとしているみたいです。

一方、日本では、中国の食物は安全ではない、環境も悪化している、などのマイナスなニュースがよく報道されています。日本の一部のテレビで作られる中国のイメージは、貧しく、汚く、偽物を造り、がやがやと騒ぐ、というものばかりです。この両国のメディアは「良い面を避けて、悪い面ばかり報道する」傾向となっています。ここから作られる相手国に対するイメージは、現実とはかけ離れたものになってしまします。

メディアによるイメージではなく、実際にそれぞれの国を知っている人は別な見方をしています。中国で2002年に行われた世論調査によると、日本と交流したり、日本に住んだことのある人の約60%が、日本に対し「親近感」を持っていると答えています。そうした経験のない人で日本に「親近感」を持っている人は約6%に過ぎませんでした。60%と6%。この差は、日本あるいは日本人と交流体験したことがあるかどうかによるものだと思います。日本人も、中国に来たことがある人は、中国に対して「親近感」が非常に高いのです。中国のことについても深い関心を持っているようです。

私は昨年の四月から今年三月まで日本の奈良で一年間の留学生活をしてきました。この一年間日本でいろいろ見て、聞いて、考えました。私は日本へ留学に行く前は、歴史的な原因と中国のマイナスな報道で、日本民族に対して、多少、敵意や反感を持っていました。しかし、実際に行って日本人と一緒に生活すると、日本国民はとても親切だと感じました。まわりの友達はいつも親切にしてくれました。それに、彼らも中国に来た(行った)ことがあります。中国に深い興味を持ち、中国語の勉強もがんばっているのです。彼らと一緒にいると、いつも中国のことを話題にしていました。私は初めての海外生活でしたが、全然寂しくありませんでした。日本に対する敵意や反感はすっかりなくなり、奈良での生活はとても楽しいものでした。やはり「百聞は一見に如かず」です。報道メディアによって作られたイメージではなく、自分の目でみて実際に体験することが必要です。

多くの人が、中日両国は人の往来と交流を拡大しなければならない、と提案しています。しかし、両国関係を真に改善するためには、一般の人たちの交流を大幅に拡大する必要があると思います。これには、各領域、各業界の人々の交流を始め、旅行や留学、修学旅行による中高生の相互訪問、大学生や学者、メディア関係者の交流、そして文化、芸術の関係者、タレントの相互訪問などあらゆる階層の人たちのできるだけ多くの往来が必要です。

昨年は中国と日本が国交を正常化してから35年目になりました。ここ数年間、一時冷え切っていた両国の政治関係は、友好と協力へと動きだしました。

2年前、安倍晋三首相が中国を訪れ、中日間の氷を砕き、昨年4月には、温家宝首相が日本を訪問し、砕いた氷を融かしてくれました。昨年12月には福田康夫首相が「迎春の旅」として中国を訪れ、今年5月には胡錦濤国家主席が「暖春の旅」として日本を訪れました。この2年間、中日首脳が4回も相互訪問して、中国と日本の往来の道を作ってくれました。このあとは、両国のできるだけ多くの国民が往来して、この道を踏み固め、道幅を広くしていく必要があると思います。私もその一人として、これからさらに日本語を勉強して、中国と日本のために、この道を往復したいと思います。

創作のインスピレーション

このたび、『人民中国』雑誌社によって主催された作文コンクールに参加し、三等賞をいただきまして、とても嬉しく思っています。この作文に関するのですが、なぜ私はこの『往来の道を踏み固め、幅を広げよう』というテーマを取り上げたのかについてですが、その理由を説明させていただきます。

私は二〇〇七年四月から二〇〇八年三月まで日本の奈良女子大学で一年間留学した経験がありました。そして実際に日本の社会や日本人と触れ合って、本当の日本を少しだけ知ることができまして、それによって、今までの日本に対するイメージもどんどん変わりつつあります。しかし、私の周りの人々が日本に対するイメージはやはり様々な誤解があるみたいで、一方で、日本人も中国に対するイメージや観点にも様々な誤解があるみたいです。これは単なるカルチャーショックとはいえなく、やはり両国間の交流が足りないのではないかと私はそう思います。特に、両国のマスコミは相手国を伝えるのに重要な役割を果たしているのです。そして、もし両国のマスコミはもっと相手国のことをより詳しくより正しく伝えたら、両国民は相手国についての誤解もだんだん減るのではないかと私は考えています。ですから、私はこの文章の中で中日両国はもっと交流して、相手の本当の姿を知るべきだと述べました。

相手国のことを知らないゆえに生じた誤解は少なければ少ないほど良いと思います。これからの中日関係もどんどんうまく進めるように願っています。

 

人民中国インターネット版 2008年12月4日

 

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