恩に感謝する心

北京市 曹雅春

「中国人民は皆さんを永遠に忘れません!」 2008年7月、訪日中の胡錦涛国家主席が日本の国際救援隊、国際医療チーム代表との会見で感動して言った言葉である。四川省の汶川で大地震が発生してから、日本の国際救援隊、国際医療チームが国際援助機関の第一陣として被災地に入り、積極的に被災者の救出を行った。素晴らしい救援活動は、中国人民に深い印象を与えた。中日関係が困難な時期に、この活動は疑いなく両国関係の“雪解け”を早めた。

「水を飲めばその根源を思い、恩を知れば報いようとする。」ちょうどIOCのサマランチ会長が北京オリンピック開催中に話したように、中国人民は、困難な時その手を差し伸べてくれたことのある友邦のことを永遠に忘れない。

中日両国は谷底を脱し、雪解けを経て、二千年の交流の恩讐を総括し、一つの基本的な結論を得た。両国は和すれば共に利益を得、戦えば共に傷つく。両国関係の基礎は民衆にあり、平和の希望は青年にある。重要な問題は、中日関係を推し進めていく過程で、如何に両国の青年が善意を持って平和的に交流するか?如何に両国の青年に建設的な役割を果たすよう促すか?如何に両国の青年を平和、協力、友好の世代へと動かすか?ということである。こうした問題は、いずれも両国関係の長期的発展における戦略的課題であり、両国政府にとっての試金石でもある。

中国の一青年として、“我々の世代は、感謝を学ぶというところから平和と友好のバトンを受け取るべきである。”と私は思う。青年は、常に感謝の心を持ち、善意のある、報恩の気持ちを込めた、謙虚な心で向き合い、歴史的な観点に立った、明るい、平和の心で未来をじっくり見つめるべきである。

中日両国の二千年余りに及ぶ交流史には、一時的な憎しみ合いがあったが、両国が恩恵を授け合い享受しあうエピソードと美談もあった。しかも、そちらの方が更に多いのである。

中国北部の港町、葫芦島は、かつて日本軍の大陸侵攻の際、石油を送る地区だった。何基か残っている石油タンクの傍には一基の石碑が聳え立っている。そこには、終戦直後の交通が不便で物資も極度に欠乏しているという状況下、中国人民が全力をかけて105万人の日本移住者を無事帰国させたという歴史の一幕が刻まれている。

その時、葫芦島から帰国したある日本の女性が、しみじみと自らの受けた感銘を振りかえって言った。「二百人以上の日本人の子供が石頭村の寒い夜にしていただいた救援も、送還の途中で受けた救済も、東寧のお百姓さんの非常食も、葫芦島の甘酸っぱい柑橘も、どれもこれも深く印象に残っています。もし、善良で寛容な中国人が、私たちの落ちぶれ果てた魂を慰めてくれなかったら、私たちは家に帰る船にも乗られなかったでしょう。」

2006年6月、日本の村山前首相が葫芦島の記念行事に参加した際、「あの大規模送還は、まさに中華民族の広い度量と人道主義の精神を体現したものであり、この上なく大きな恩義です。」と話した。

同様に、我々は、中華民族が発展をとげてきた幾多の局面において、日本民族や日本の友人から心のこもった協力を得てきた。近代、先陣を切って現代化した日本は、中国人が世界を理解し変革を求めるための窓となり、多くの知識人が中国から海を漂い扶桑の国日本に渡り、救国の大計を求めた。

改革開放以来、日本は、中国の発展のために多くの資金や技術支援を提供している。中国に対する日本の援助メカニズムには複雑な部分があり、その運用について、一部の中国人は十分には理解していない。例えば、低利の円借款については、我々もよく知っているが、技術援助となると十分には分からない。研修や奨学金の制度は知っているが、中国にいる日本のボランティアについては分からない。私は、幸い貴州省のとある貧困地域で一人の日本人ボランティアに出会ったことがある。その若者は、辺鄙な場所にある学校で日本語を教えており、子供たちと同じ暮らしをしていたので、皮膚は黒く日焼けしていた。彼は、子供たちに笑い声を届け、子供たちは、彼を通して世界を知っていった。

情は心から生じ、和は恩から来るものだ。歴史を鏡にし、強調すべきことは、憎しみ続けることではなく、歴史から教訓を汲み取ってより良い未来を拓いていくことである。恩に感謝することを強調するのは、忘却を身につけるためではなく、平和を唱え、友好を促進するためである。中日両国は、両国の平和を愛する全ての青年に対して、感謝の心を持って手を携え、二千年も前から点っている平和の火種を高く掲げ、我々が共に歩む前途を照らすように呼びかけるべきである。

 

人民中国インターネット版  2008年12月4日

 

 

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