懐かしき茶道部の日々

中国人民大学外国語学院 陳穎艶

 『源氏物語』とか、芭蕉の俳句とかではなくて、アニメが私と日本との出会いでした。アニメに惚れた私は、その故日本語を専攻にして大学に入りました。一年、二年経つと、三年生の時は交換留学生として、一年間長崎で留学しました。

今年の「中日青少年友好交流年」が私の大学で開幕式が開催されました。長い歴史を持つお茶の文化をお互いに味わうために、お茶会も行っていました。私はその時ふっと二年前茶道部で過ごした留学の日々を思い出しました。

日本に行ったばかりの頃は、日本の友だちもいませんでしたし、日本語の音にも,なかなか耳が慣れません。寂しい毎日でした。好きなアニメを見ても心が晴れません。そんな時,大学に茶道部があると聞いて、考えました。国では経験しにくいことだ、やってみようか,と。美味しいお菓子も出るという話でしたし,心が落ち着くということで,いいかも!と思ったのです。

初めてのお稽古のときはどきどきしました。茶室に入ると、皆が神妙な顔をして、ちょこんと正座していたんです!こちらでは当たり前なのでしょうが、私にはびっくりでした。日本式の正座はしたことがありませんでした。さあ、正座デビューだ!でも、最初の2分間で、足の感覚が無くなってしまいました。先生はニコニコして、「茶道では、和敬清寂という精神を重んじます。和敬は穏やかに心を和らげて敬うこと、静寂は心の安定で・・・」とか説明してくれましたが、この辛い座り方で、どうすれば和敬静寂なんか感じられるのか、不思議でたまりませんでした。まるで拷問だ、「早く終わってくれ~」としか考えていませんでした。30分耐えて、やっと解放されました。立つことさえできず、唸って、呻いていました。

「大変でしょう、初めての正座は。」気がついたら、先生が傍に座っているんです。「早く慣れるといいのにね。そんなにちゃんとしなくても大丈夫。私は70年、正座して来たけど、足が悪くなってしまって・・・。もう正座は無理。膝が悪くてね。」先生は、小さな椅子に座って、おっしゃるのです。「陳さん、茶道のこころを習って、ぜひ国の人々にも教えてあげて。また、来週是非いらっしゃってね。」先生の熱意に、私はびっくりしました。70年も、正座ができなくなるほど正座し続けたなんて、すごいですね。

その後、毎週茶道部にお稽古をしに行きました。先生と先輩達は熱心に教えてくれました。分からない時は簡単な言葉で繰り返し、説明してくれました。基礎から、一つずつ教えてくださったので、以前は道具の名前さえ分からなかった私が、自分で美味しい抹茶を点てられるようになりました。

学園祭の時には、先輩達や先生達と一緒に、お茶会の券を売ったり、お茶とお菓子を運ぶのを手伝ったりしました。今度は、私は初心者のお客さんに、「大変でしょう、初めての正座は」と慰めました。

忙しい一日が終って、先輩達と「大成功!!!」と叫んだ時、凄く嬉しかったです。やっと、茶道部という集団のメンバーになった、日本ではじめて自分の居場所を見つけた、と言う気持ちで、胸がいっぱいになりました。

寂しさは、そのころから消えて行きました。その後は先輩達と一緒に、お稽古に来る留学生に教え始めたのです。茶道は、私を日本に、そして日本の友達に、結び付けてくれました。

最後に、茶道を愛する一外国人として、一つ提案をさせてください。正座という習慣は外国人にとって非常に慣れないものです。時々テーブルと椅子でやりませんか?それでお茶の心が失われたりはしないと思います。むしろ、もっと多くの人がお茶の心に触れられるようになるのです。そして、お茶と一緒にいただく、あの上品な和菓子も悪くありませんが、よかったら、時々チョコレートやマシュマロにしてくださいませんか?どこの国でも気楽にできる、もう少し国際的な茶道になってほしい、というのが私の願いです。どうも失礼しました。

創作のインスピレーション

日本に行ったばかりの頃は、寂しかったです。母に電話した時には、思わず涙が出てしまったこともあります。幸いなのは、留学先の茶道部に参加することができました。優しい先生と先輩たちは、道具の名前さえ分からなかった私に基礎から少しずつ教えてくれました。茶道部のメンバー達と一緒にお稽古をしたり、お茶会を行なったり、正座したりして、忘れられない留学の日々を過ごしました。抹茶は非常に美味しいです。お茶と一緒にいただく和菓子も美味しいです。でも正座だけは勘弁してください。時々テーブルと椅子でお茶会を行なっていただけませんか?茶道部は日本にいる私に初めての居場所を与えてくれました。茶道を通じて、私は日本の友達と、心を通わせることができました。「一期一会」の縁ではなくて、茶道部の皆さんとは、きっとまたどこかで会えるのでしょう。

 

人民中国インターネット版 2008年12月4日

 

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