メディアは時に「びっくりミラー」

米国のCNNの創業者、テッド•ターナー氏とはこれまでに何回か会ったことがある。あるとき彼から「私のCNNはどうでしょうか」と尋ねられた。

そこで私はこう言った。「CNNは必ずしも公正とは言えませんね。中国やアジアのことを報道するとき、ややもすれば暗い面を主に取り上げています。もし北京に、花が満開のところが7カ所あり、ごみ箱が置かれたところが3カ所あるとすれば、あなたたちは7分間ごみ箱を、3分間花を撮るでしょう。結局、それを見た人は、北京はごみだらけの都市だなあと思ってしまうのです」  

私の答えを聞いて彼は「そういうこともあるかも知れませんね」と応じた。

1950年代に中国では、毛沢東主席の提案で『参考消息』という新聞が創刊された。この新聞は毎日、世界の各主要メディアが報じた大きな国際ニュースや論評、とくに中国にかかわる報道を、迅速に、忠実に翻訳して掲載している。その中には正しい報道ものもあれば、一面的なものもあり、歪曲されたものもある。

この新聞を発行した目的は、中国人がさまざまな角度から世界を理解し、さらに客観的、全体的に世界を見ることができるようにするためである。創刊してから数十年、『参考消息』は国際政治に関心をもつ読者から、ずっと愛されてきた。

新聞学の一部の理論では、ニュース報道は「平面鏡」でなければならず、事実そのものに対して、それをいささかも歪めてはならないという。だが実は、これはただの願望にすぎない。

テレビというメディアは、客観的に存在しているものに対して常に真実を記録しているように見える。しかし、同じ重大な国際事件についての報道が、各国、各通信社の記者やカメラマン、編集者の素材の選択と解釈の違いによってさまざまに違った結果になることを、私たちは知っている。

だから、国際的な大手のメディアを通して世界を読み解こうとするとき、しっかり覚えておかなくてはならないことがある。それは、メディアはいつも「平面鏡」であるとは限らない、時には歪んだ鏡の「びっくりミラー」にもなるということである。

趙啓正

 1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。

 1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。

 2005年より全国政協外事委副主任、中国人民大学新聞学院院長。

 

人民中国インターネット版 2009年6月

 

人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850