戦争用語でサッカーを語るな

 

サッカーの試合では、よく暴力事件が発生する。悪名高い英国のフーリガン(サッカーの試合で、熱狂のあまり乱闘などを起こすファン)のせいで、英国人は全世界で面子を失った。一時期、「英国はもはやジェントルマンの国ではない」と言う人さえ出てきた。

英国の上流社会の人たちと会ったとき、もし「英国のサッカーが好きだ」と言ったら、彼らはきっと皮肉を言われたと思うだろう。フーリガンの悪行の故に、英国のサッカーチームは全世界で試合禁止にされたこともあったし、今でも「不名誉なサッカーファン」として警察のリストに載せられた者は、試合を見に外国へ行くことが許されていない。

どうしてこんな暴力的気分になってしまうのだろうか。一部のサッカーファン自身が教養がないこともあるが、メディアの伝え方にも責任がある。

スポーツ記者たちのいま流行りの見方の1つは、「サッカーは平和な時代の戦争だ」というものだ。だからサッカーの報道には、血なまぐさい戦争用語が氾濫している。例えば、「報復する」「血戦する」「全軍壊滅」などである。

こうしたことが続くと、人は次第にサッカーの本質から離れ、試合の勝ち負けを国の外交問題や国際政治の勝ち負けと関連付けてしまうようになる。オリンピック精神などはほとんど失われてしまうのだ。

例えば、英国とアルゼンチンの間には領土をめぐる争いが存在するが、両国のチームがサッカー場で顔をあわすと、世界のメディアは試合の中の「戦争ファクター」を大いに誇張し、ファンの激情をいっそう煽るのだ。

だからスポーツの試合を伝えるとき、どのような言葉を使うかは非常に重要である。もっと友好的で穏やかな報道を願いたいものだ。

だが、サッカーファンによる騒ぎが起こり、サッカー場内外での衝突事件が起こると、一部のメディアの報道は真実を伝えていないケースが多い。そのため、速やかに和解し、事態を解決することができず、逆に騒ぎを大きくし、チームとチーム、ファンとファンの間の溝と対立を激化させている。これは当然、社会の調和に不利な影響を及ぼす。

中国のサッカーの健全な発展は、多くのニュースメディアの支持や監督によるところが大きい。優れたサッカー報道は、中国のサッカーの進歩を促すばかりでなく、中国と世界のサッカー界の関係を改善し、中国のサッカー選手や多くのサッカーファンと、世界各国のスポーツファンの間の友好を強化するに違いない。(趙啓正=文)

趙啓正

 

 1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。

 

 1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。

 

 2005年より全国政協外事委主任、中国人民大学新聞学院院長。

 

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