挨拶は多すぎても困る

 

英国のある旅行社が、新しい観光ルートを開発するため、海南島の三亜市を視察にやって来た。旅行社の人たちは、三亜が風光明媚で海水も澄んでいるうえ、ホテルの設備も整っているので、英国人の観光に適していると認めた。

しかし旅行社側は「英国から外国に観光に出かけるのはお年寄りが多い。生涯かけて稼いだお金だから、サービス全体の質に対する要求も高い。中国側にはもう少し改善してほしいことがある」という。そしてその一つとして、「挨拶が多すぎる」ことを挙げた。

なぜ旅行社はこう指摘するのか――。彼らが泊まった三亜ホテルの朝食は、地下にある「沿海大ホール」に用意されているが、客室からはかなり遠いので、そこに行くまでにたくさんのボーイやウエートレスたちと顔をあわせる。客は部屋から一歩出ると、「グッド モーニング」を十数回も浴びせられ、いちいちそれに答えなければならないので、本当に煩わしいというのだ。

もともと「礼多人不怪」(礼儀はいくら多くても、とがめる人はいない)と言われるが、「礼多」がとがめられる場合もあるのだ。当然、この問題は簡単に解決できる。ホテルのマネージャー、この問題の背後にはカルチャー・ギャップがある。

人は、個人の生活空間ではリラックスでき、他人から邪魔されないことを望む。外国でも中国でも、高級レストランの従業員は、黙々と店の中をよく観察しながら行動し、いつでも客の要求を満たし、できるだけ客の食事に影響を与えないようにしている。

ところが中国のレストランの中には、まるでわが家に帰ってきたときのように賑やかに客をもてなすよう求めたり、従業員に何度も大声で「いらっしゃいませ、中へどうぞ」と叫ばせたり、メニューの料理名や金額を大声で告げたりするものがある。こうしたことは、静かに食事をしようとする客にとっては、まったく迷惑な話である。

実は、サービスを新たな段階に高めることが求められているのだ。基本的な礼儀も尽くさなければならないが、同時にサービスを客が自然だと感じているかどうか、もう一度考えてみるべきだ。挨拶の言葉を言うのはいいが、「口先ばかりで心がこもらない」挨拶なら、客にも温かさが伝わらないし、その効果もない。

実際、挨拶にはさまざまなやり方がある。スマイルでも会釈でも、親しい気持ちを表すジェスチャーでも、熱い気持ちや礼儀を表すことができる。その場にふさわしいものでありさえすればよいのである。

趙啓正

 1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。

 1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。

 2005年より全国政協外事委主任、中国人民大学新聞学院院長。

 

人民中国インターネット版 2009年12月26日

 

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