「退耕還林」が農民にもたらす増収

文・写真=張春侠

陝西省の宝鶏市から出発、曲がりくねった山道を二時間あまり進むと、渭河南岸の陳倉区坪頭鎮大坪村に到着した。

車を降りると、爽やかな空気が漂い、あたり一面の山椒が気分をすっきりさせてくれた。私たちはちょうど剪定作業をしていた王根科さんに出会った。最近数年の「花椒」(殻つきの山椒の実、調味料などに使う)の収入を聞くと、王さんは笑いが止まらない様子である。一家は、あわせて6ムー(1ムーは、約6.667アール)の耕地を持ち、以前、雑穀を栽培していた時期は、各種雑費をひくと、一家5人の一年の全収入は、わずか1000元だった。2002年、国家は、「退耕還林」の政策を実施し、王さんは呼びかけに応じ、以前の麦畑を山椒に変えた。

「退耕還林」により、王さんの生活は日々向上している

そのとたん、1ムーあたりの収入は2000元近くとなった。現在、二人の娘さんは結婚し、24歳の息子さんは、成都に出稼ぎにいき、家には二人の老人が残り、500株余りの山椒の面倒を見ている。「今年は山椒を売って、信用社に9000元の貯金ができた。息子は毎月3000元余りを稼ぎ、日々、暮らしはよくなっている」と王さんはいう。

農民が雑穀を栽培しないと、日々の食糧はどうなるのだろうか?私が質問すると、王さんは笑い、「売られている雑穀を買えばいい、いまは政策が良くなったので、何でも買える。毎日が旧正月のようだよ」という。

当初、山椒の苗は自分で買わなければならなかった。王さんは次第に技術を学び、苗は自分で植え、自分で移植する。また、以前の生産量の低い山椒を淘汰し、鳳県から「山椒の王」と呼ばれる「鳳椒」を導入している。現在では、王さんの山椒は西北地域で広く売られている。

王さんと同じく、大坪村の多くの農家の収入は山椒による。楊小虎さん夫婦は、山椒のために地面を耕している。昨年、楊さんの家では山椒の販売による純収入が1万元近くになった。

大坪村では、王さんのような農民は228戸である。全村に916ムーの耕地、4300ムーの林がある。現在、全村の山椒は3300ムーまでに発展し、そのうち「退耕還林」にあたるものは、850ムーである。全村の山椒生産量は、80トン余りになり、160万元の販売収入をもたらしている。収入の増加の大部分は、「退耕還林」による。村長によれば、「退耕還林」により、大坪村の村人の純収入は、2002年の1600元から2009年の3200元に上昇している。坪頭鎮の責任者によれば、「退耕還林」プロジェクトが実施された10年来、全鎮ではあわせて1万6991ムーが「退耕還林」となり、うち、耕地を林に戻したのは、8617ムー、荒地に植林したのは、8374ムー、それは全鎮の21村、2258戸に及ぶ。「退耕還林」は、農民に収入の増加をもたらすだけでなく、水土の流失をおさえ、環境保護にも良好な成果をあげている。

 宝鶏市「退耕還林」の状況

  宝鶏市は中国の西部にあり、水土の流失が比較的深刻な地区であり、全市1万8172平方キロメートルのうち、水土の流失面積が1万2075平方キロメートル、総面積の66.4%を占める。1964年8月、国では、黄河流域の水土の流失の重点県を138県確定したが、宝鶏市はそのうち7県を占める。

1999年より、宝鶏市は、「退耕還林」プロジェクトを実施している。十年来、「退耕還林」の累計は、210万4900ムーとなり、林草に覆われる面積は3.6%増加し、プロジェクトに応えた農家は、一人あたり、6830元収入が増加している。

 

人民中国インターネット版 2009年1月7日

 


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