ぞっとする魚の活けづくり

 

かつて私はテレビで、「活頭煎魚(焼き魚の活けづくり)」という特別な料理の作り方を見たことがある。この料理は「八仙煎魚(八仙の活けづくり)」とも言われ、魚は神仙のように不死身であるという意味だ。

その作り方は、まず濡れたガーゼで魚の頭を包み、魚の頭を手でしっかりつかんで、熱い油の中に魚の身を入れて揚げるように焼く。食卓に出された魚は、身はこんがり焼けているのだが、口をパクパク動かしている。

日本や一部のアジアの国でも、こうした「活けづくり」の料理がある。例えばイセエビを生で食べているとき、薄く切られた肉が、頭と殻だけになり気息奄々として活きているイセエビといっしょに食卓に出される。イセエビの脚や触角は、断末魔の苦しみにあがいている。

こうした調理法は、最初は珍しさや新機軸を求めて生み出されたものだろう。だが、それが行き着いた先は、身の毛のよだつ料理になってしまった。

こうした「活けづくり」は、中華料理の伝統にはなく、こんな料理を注文する中国人もほとんどいない。中国の多くの仏教徒は、殺生をしないよう戒められている。活きている魚を「放生」するのを善行だと考えている人もいる。

ドイツの市場でも活きた魚を売っているが、売子は魚に電気ショックを与え、一瞬にして殺した後、客にその魚を持って帰らせる。その理由を聞かれたら、ドイツ人はこう答えるだろう。「それは臨終前の魚の苦痛を減らすためだよ」と。

1982年に国連で採択された『世界自然憲章』には、次のような一章がある。「生命のさまざまな形態はすべて独特のものであり、それが人類に対してどのような価値を持つかにかかわらず、すべて尊重されねばならない。生命のさまざまな形態が尊重されるために、人類の行為は必ず道徳規範の支配を受けなければならない」

生命を尊重し、動物を愛護する──これは現代社会の一つの進歩的な考え方なのである。

趙啓正

 

 1963年、中国科学技術大学核物理学科卒業。高級工程師などを経て1984年から中国共産党上海市委常務委員、副市長などを歴任。

 

 1998年から国務院新聞辦公室・党中央対外宣伝辦公室主任。

 

 2005年より全国政協外事委主任、中国人民大学新聞学院院長。

 

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