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立春には肝臓 雨水には脾臓を養う

 

郭冷秋=文

立春

プロフィール
黒龍江中医薬大学、漢方薬薬理教育研究室副主任、医学博士。漢方の食事療法、養生の研究に従事、黒龍江漢方医薬科学技術進歩一等賞を受賞。
立春は24節気の最初で、毎年太陽暦2月5日前後になる。「立」は「始まる」という意味で、立春はつまり春の始まり。昼間が少しずつ長くなり、気温がだんだん温かくなり、農作業にとりかかる。

北京の立春の日。春を迎え、福を祈る民俗活動。「鞭打春牛」などいろんな民俗行事を楽しむ市民たち
立春は大事な歳時の祭りである。3千年前には早くも、中国には立春に農業を取り仕切る春の神「芒神」を祭る習俗があった。文献の記載によると周代(紀元前1046〜同256年)では、天子は立春の3日前から斎戒を始める。立春の日、天子は自ら三公九卿諸侯大夫を引きつれて、東方8里の郊外に出向いて春を迎え、豊作を祈った。清代(1616〜1911年)以降、迎春の儀式は社会が注目し、すべての民が参加する重要な民俗活動に変わっていった。民間では、立春の日には家々では春餅(小麦粉を湯でこね、薄くのばして鉄板で焼いたものに、春の新鮮な野菜を入れて巻いたもの)を食べるが、俗称は「咬春」ともいい、これで病を防ぐだけではなく、新春を迎えるという意味もある。また、立春の日に春を祝う「春帖(家の門や蚊帳などに詩句を書いた赤い紙や切り紙)」を貼ったり、郊外にピクニックに行って「鞭打春牛(豊作などを祈って牛を鞭打つ)」など一連の伝統行事を行ったりする。漢族だけではなく、多くの少数民族も立春をとても大事にしている。たとえばペー(白)族は立春の日を「催春節(春を促す祭日)」といい、トン(侗)族は立春に春牛舞を演じる。

漢方では立春から春の養生を始める。春は陽の気が生じ、万物が生まれる。養生はこの春の特徴にしたがうと、心が大きく、楽観的で前向きに、喜びの気持ちが持てるようになる。それと同時に春に人体の新陳代謝が活発になる機をとらえて適当に調整をすれば、人体の代謝機能を健康的にすることができる。

立春の日、北京の春餅を出す料理店は、どこも人でにぎわう。人々は「春を食べて」春の息吹を感じる

立春には、肝臓に優しい、肝臓を養う、肝臓の滞りをなくす生薬や食品を選ぶ。生薬は、クコ、鬱金、丹参、延胡索など。食品は、辛温発散の機能のある乾燥ナツメ、豆豉、ネギ、ニラ、落花生など。臨機応変に組み合わせて食する。とくに初春に生長するネギやニラは、栄養豊富で健康に良い。ネギは、発汗して邪気を取り除き、寒を散じて陽を通わし、殺菌解毒、血液循環を促進し、消化液の分泌を増やし、食欲を高める。ニラはまたの名を起陽草と言い、古くから長寿の野菜とされ、肝臓を温め、陽を助け精を固め、脾臓や胃を強め、逆気を降ろし、鬱血を散じ、元気をつけるものである。その豊富なカロチンは、上皮細胞の癌化を予防することができる。ビタミンCとビタミンEは、酸化を防ぎ、人体の免疫力を高め、老化を予防する効果がある。

雨水

雨水の後、人々は春の農耕を始める

毎年、太陽暦の2月18日前後が雨水にあたる。このころ、春風が吹き渡り、氷や雪が融け、雨水が増えることから、雨水と言う。人々はよく、「立春過ぎれば日々暖かくなり、雨水は忙しく肥料を施す」と言う。土の表面が夜凍り昼融けて、柔らかくなり始め、小麦の発芽によいので、種まきに適する季節である。唐代の詩人杜甫の詩に「好雨時節を知り、春に当たりてすなわち発生す。風に随いて潜かに夜に入り、物を潤して 細やかにして声なし」という。これは、農耕時代の人々が雨水を心待ちする気持ちを表現している。民間の諺にも「一場の春雨 一瓢の油(春雨は油の如く貴いものだという意味)」という。

雨水の節気になると空気が潤い始め、照りつける暑さもなく、養生にとってよい季節である。漢方では、体に栄養をつけるため、まず脾臓と胃を保養すべきとする。現代医学の実験で、脾臓・胃を保養すれば、体の免疫力を高め、老化を防ぐことが明らかになった。保養の方法は、状況に応じて飲食と薬物で調整する。精神的な調節は、元気を養うため、雑念を払い、欲望を押さえ、仕事に没頭し過ぎないことも心がける。

雨水節気の後、子供たちは戸外で運動し、年寄りも外に出て散歩する。しかし、この時期は寒気団が依然ひんぱんに活動し、天気が落ち着かず、一年で寒波が最も多い時節の一つなので、人の情緒の波動と心身の不安が、体の健康に影響を及ぼす。高血圧、心臓病、喘息の患者はとくに注意が必要。持病の再発や新たな病を誘発することもある。温かくして寒さを防ぐこと。中国人は古くから「春は厚着、秋は薄着」という。できれば、進んで養生鍛錬法を取り入れて気分の安定を保つのもよい。雨水の時節の栄養補給は、軽くて吸収しやすい食品がよく、濃い味、脂っこい物は避ける。伝統的に、この節気は、地黄粥、防風粥、紫蘇粥を食べ、脾臓や胃を養う。ニラ、チャンチン、百合、山芋、大根など、脾臓の気を養うものを使ってもよい。

 

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