バーで楽しむ上海の夜  
 

 

「上海の夜」と言えば、ほとんどの人はみなライトアップされた外灘(バンド)のきらびやかさと美しさを思い浮かべるだろう。この街は眠らない。日が暮れても、街のいたるところが静まり返ることなく、昼間よりさらににぎやかになる。普段忙しく走り回ってたまったストレスや疲れを、人々は夜のイベント、パーティーなどの楽しい集まりで、こころゆくまで発散させる。上海の夜にはきらきらとまたたく星空はないけれど、そのかわりに煌々と輝く街の明かりがある。

寒い冬の美しい夜を、ほろ酔いムードで楽しもう。

クラウド9

夜の上海黄浦江を見下ろす

ガラスの向こうに上海の街が見渡せる「クラウド9」

夜景を眺めながらお酒を楽しむなら、金茂上海君悦大酒店(グランドハイアット上海)の「クラウド9」が最高だ。まずエレベーターで54階のホテルのロビーへ、さらに別のエレベーターに乗り換えて85階へ。そこからさらに、専用エレベーターに乗ってようやく、87階にある「クラウド9」にたどりつく。乗り換えを繰り返しているうちに、次第に周囲の客の姿がまばらになってゆく。最後にはひとりになって「クラウド9」の入り口に立つ。このプロセスで、なんともいえないVIP待遇を受けているような気分になり、そこに至るまでの面倒な道のりさえ、十分に価値のあるものだと思えてしまう。

地上から330メートル離れた空にあるこのバーでは、周囲の巨大なガラスを透かして上海の全景を楽しむことができる。窓の外にはライトがきらめいている。目の前では、それぞれのテーブルの上に置かれた小さなキャンドルが、ほのかな炎をゆらめかせ、テーブルの向こう側に座っている人の顔を照らしている。音楽が流れてはいるがとても静かで、心のうちをすべてさらけ出してしまいたくなるような衝動にかられる。夜9時を過ぎると、店内ではマジックショーが行われる。あなたを喜ばせようと、マジシャンはテーブルの前までやってくる。

それでもまだもの足りなさを感じるようであれば、56階に降りてみるといい。そこは「クラウド9」と同じ系列の「パティオ・ラウンジ」がある。その中央に立って頭の上を見上げれば、そこにさらなる驚きが待っている。

MURAL BAR

バーストリートと呼ばれる衡山路一帯に位置する「MURAL BAR(摩硯)」は、一見、まったくといっていいほど目立たない店構えである。しかし、店内のインテリアは非常に凝っている。店のオーナーの中国伝統文化へのこだわりが、いたるところに感じられる。

まず入り口のところに、『道徳経』にある「三は万物を生ず」を意味する3つの円が壁に描かれている。甲骨文字の「水」をかたどった階段に沿ってホールへと進んでゆくと、目につくものはすべて仏像、碑文の拓本、敦煌壁画、仏教の銘文などの文物である。それぞれの空間は、それぞれが小さな洞窟のように隔てられ、プライベートなスペースになっている。初めてここに足を運んだ人はみな、思わずためいきをつく。「まるで莫高窟をそのまま運んできたみたい」

店内のインテリアはゴージャスだが、リーズナブルな価格で楽しめる店である。特に毎週金曜日は100元で飲み放題となり、多くのサラリーマンたちが集まって、大変なにぎわいとなる。

芷江夢工場

真夜中になるとさらににぎわう「MUSE Club」(同楽坊提供)
「芷江夢工場」(Zhi Jiang Dream Factory)は上海靜安区の同楽坊にある。この場所には、もともと小さな町工場が集まっていた。2005年以降、これらの古い工場が次々にリノベーションされ、今やおしゃれなトレンドスポットとなっている。

現在ここには、香港スターのカリーナ・ラウ(劉嘉玲)がオーナーの高級バー「MUSE Club」やモデルエージェンシーのELITEがオープンした「Elite Bar」など、たくさんのバー、レストラン、ギャラリーが集まっている。だが、一番特色ある、足を運ぶべきスポットといえば、芷江夢工場であろう。

ここはもともとの工場の空間構造を残し、周囲をすべて暗色に塗った。バーであると同時に、上海では有名なライブハウスでもあり、国内外の歌手やバンドがここでライブを行う。

ときには、小劇場の舞台となることもある。客が三々五々群れを成して乾杯し、楽しく飲んでいるうちに、役者たちはひっそりと客の中に紛れ込む。ふいにライトが点き、客の中に紛れ込んでいた役者たちが演じ始める。いくつかの組に別れ、それぞれの劇を演じるのである。そのすべてを見たいと思ったら、何日も続けて通わなくてはならない。そのせいか、なんとなく未練をひきずってしまう店なのである。(高原=文・イラスト 馮進=写真)

 

人民中国インターネット版 2010年4月19日

 

 

 

 
 
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