「対話」をテーマとするイスラエル館  
 

賈冬婷=文

イスラエルにとって、政治は非常に敏感な話題であると同時に、どうしても避けられない話題でもある。イスラエル館は「対話」というある種の解決方法、少なくともある種の態度を示しているのである。

ユダヤ人の「陰陽図」

一年前のある日の夕方、イスラエル館の建築士Haim Dotanさんは、古城の古い木船で友人と酒を飲みながら、イスラエル館はどのような形であるべきかを想像した。そして、地中海の原石や貝殻、青い空はすべて設計図の中に描き入れらたのである。Haim Dotanさんは当時の下書きを見せてくれた。下書き中のイスラエル館は、緩やかなカーブを描く二つの建物から構成されており、その形は海の中の貝に似ていた。このデザインは、ユダヤ人が持つ伝統的な心象からきているという。例えば、何かを包み込むような両手の形や、安息日やユダヤ教の祝祭日に食される縄編み状のパン・ハッラー、あるいはハヌカーの祭に点す蝋燭など。「もちろん、中国哲学の太極陰陽図を想像してもかまいません」と。

Haim Dotanさんは「今日、『ある角度から見ると心臓のように見える。特に、夕日がそれを赤く染めている時』と言う人がいました」と話した。イスラエル館は、いくつもの異なる建築材料が採用されているが、それは「融合」の表現の一つである。二つの異なる素材の建物のうち、一つは石造りになっており、全体的に落ち着いた感じを与える。これはユダヤ人の起源と歴史を表しており、この石造りは現在も続くエルサレムの伝統様式をもとにしている。エルサレムの家屋はその外壁が当地の原石で造られていて、日が差すとうっすらとした金色のベールに覆われているかのように見える。これが「黄金のエルサレム」の呼び名の所以である。建物のもう一つの部分はガラスからなっていて、透明で開放的、かつ精巧な印象を与え、イスラエルの革新技術と未来を象徴している。

このように、イスラエル館はまったく違った二つの素材で、流線型を成す建物が組み合わさった形をしているが、これがまさに「対話」を表しているのである。つまり、人と自然、過去と未来、瞬間と永久、大地と天空、虚と実の間の対話であり、人と人、人と地球、国家と国家の間の関係を暗喩している。イスラエルにとって、政治は非常に敏感な話題であると同時に、どうしても避けられない話題でもある。イスラエル館は「対話」というある種の解決方法、少なくともある種の態度を示しているのである。

「一連の『対話』は、イスラエルの各方面に現れています。遠い昔から現代まで、そして神聖な世界から世俗にまでです。地理的には、アジア、アフリカ、ヨーロッパの三つの大陸の間に位置しており、世界三大宗教の合流する聖地でもあります。南側は砂漠、北側は山脈、東側は死海、西側は地中海です」。上海のイスラエル総領事館のAmir Lati総領事は、「私の家族を含む大部分のイスラエルの家族は、世界各地から移民としてやってきた人たちで、80%がユダヤ人です。残りの20%の非ユダヤ人もお互いの差異が大きく、敬虔な信徒もいれば、無神論者もいます。イスラエルは人口が700万人ぐらいで、実質国土面積も1.52万平方キロですが、その複雑性は世界においても最たるものとなっています」と語る。

小国の大革新

曲線的な歩道から建物内の「ささやきの花園」へとたどりつくと、花園にはイスラエルの自然を代表する54本のイスラエル特産のオレンジの木が植えられている。「54は18の3倍です。数字『十八』は中国の『八』と似ていて、ユダヤ人にとって幸運を表す数字です」と、Haim Dotanさんは説明した。

死海は地上でもっとも低い場所にある、塩分濃度の非常に高い湖である。死海はイスラエルの唯一の自然資源で、このほかには特別な自然資源はあまりない。国土面積の三分の二が砂漠や荒山であり、それに一年のうち七カ月は雨が降らないので、一人当たりの水資源が270トンしかなく、世界平均レベルの3%のみである。「ささやきの花園」ではマルチメディア形式により、砂漠におけるターニングポイント、特に農業革命を起こしたハイテク灌漑技術である点滴灌水を展示する。Amir Latiさんは、「この技術は偶然に発明されたのです。1962年に、南砂漠のある農民が水道管の水が漏れている部分の農作物がとてもよく育つことを発見しました。その後試験を重ね、点滴灌水は蒸発を減少させ、効率のよい灌漑と水や肥料、農薬をもっとも効果的にコントロールする方法であると証明されました。点滴灌水はまた、水資源の多くの利用技術を導き出し、それによりイスラエルの70%の水が再利用できるようになりました」と紹介した。

点滴灌水は、イスラエルが数十年という短い期間で飛躍的な経済発展を遂げるのに大きな役割を果たした一つの典型的な例である。Amir Latiさんはまた、「代々のイスラエル人は、強制的に自分の大脳を開発、生きる道を探すようにしました。それにより、イスラエル館のテーマを革新に決めたのです。独立していながらもつながっている空間、つまり『光のホール』と『革新ホール』を通しての展示です。ガラスからなる『光のホール』では歴史を展示し、原石からなっている『革新ホール』では未来を展示します。これも内容と材質の間の『対話』です」と説明した。

「光のホール」の上へと伸びる空間は人と人との関係を表している。自然の光がガラス窓からこぼれおちる様子は、未来やオプチミズム、飛躍を象徴している。カーブする壁に沿ってなされるマルチメディアは、4000年に渡るイスラエルの歴史が展示される。

革新ホールはイスラエル館のメインホールである。数多くのライトボール、フォト・スフィアが空中で漂い、その一つひとつに人物の姿が現れる。それにはイスラエルの人物もあれば中国の人物もあって、それらの人物がヘブライ語と中国語で挨拶を交わす。そしてそのフォト・スフィアは動き出し、3D空間に広がる360度パノラマビジョンとなって、考古学、農業、食品、医薬、環境、音楽、文学など多分野における革新の旅がスタートする。夜になると、外壁の石の表面にイスラエルの観光名所の映像が現れ、さながらエルサレムのダビデの塔で毎晩行われているライトショーようである。

絶えず行われる「大脳開発」の過程を通じて、イスラエルは小国の大革新を実現した。イスラエルの第二代移民であるAmir Latiさんは、たった一世代の努力によって実現された奇跡をとても誇りに思うと語った。例えば、イスラエルは約3000社ハイテク企業及び新興企業を有しており、その密度はアメリカのシリコンバレーに次ぐ世界トップクラスに位置する。投資ファンドもわずかな差でアメリカに次いで二位となっている。また、ナスダックで上場した会社数は、アメリカとカナダを除けば世界最多数である。

イスラエル館:

位置:Aゾーン

テーマ: より良い革新、より良い生活

デザイン特長:両手で何かを包み込むような、2つの流線型の建物が重なり合う形。

ナショナルデー:5月6日

パビリオンの面積:1200㎡

 

人民中国インターネット版 2010年5月11日

 

 
 
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