「変形」する北京館  
 

文=龔海瑩

北京館は万博建築の伝統を打ち破り、史上初の「変形」できるパビリオンとなった。伝統的な建築物「天壇」から現代的な国家水泳センター「水立方」、国家大劇場、そして国家スタジアム「鳥の巣」へ。わずか5分17秒の間に、感動、ロマン、落ち着き、そしてミステリアスへと次々とその雰囲気を変えていく。この「変形」はまさに多元的で変化に富んだ北京の魅力を示している。

青空、白い雲、鳩笛から流れている笛音……。そこにそびえたつ、幾重ある宝塔は天壇だ。北京名物の物売りの声が聞こえたかと思うと、天壇は身をすぼめていき、ラッパの口のような形をした「鳥の巣」へと姿を変える。続いて登場するのは一面の青い、「水立方」が出現する。そして夜が到来し流星が流れると、星空の下には国家大劇場が現れる。方形のデザインから瞬く間にドームへと変わり、音楽とともに光があふれだす……。

ここで描写したのは、上海万博の北京館の不思議な「変形」の一部始終だ。北京館は万博建築の伝統を打ち破り、史上初の「変形」できるパビリオンとなった。古い「天壇」からモダンな「水立方」、国家大劇場、「鳥の巣」へ。わずか5分17秒の間に、感動、ロマン、落ち着き、ミステリアスと次々とその雰囲気を変えていく。この「変形」はまさに多元的で変化に富んだ北京の魅力を示している。

万博は建築家の競技場でもある。北京館のメインデザイナーはまだ30歳になったばかりの新鋭。デザインチームのメンバーはみな1980年代生まれた若者。彼らにとって、シンプル調、レトロ調、あるいは民族調などの伝統的なデザインはあまりにも画一的に見えた。彼らが目指したのは完全に新しいデザイン。2008年5月から2009年5月までの一年間、デザインチームはアイディアを練り、「トランスフォーマー」と呼ばれる「動く建築プラン」を作り上げた。外壁を覆うLEDスクリーンが前後に移動し回転することで、600平米の建築物を円形から方形へと「変形」させる。

この構想が北京市の2010年上海万博「出展活動協調組」の目に留まった。150年以上続く万博の歴史にも、外観が「変形」する展示施設は一つもなく、きわめてオリジナリティーが高い。いわば命ある建築であり、北京市が持つ生命力を体現するとともに、日進月歩の発展と革新という市の理念を象徴するプランといえる。来場者が館内に入らなくとも、外観だけでも北京市の魅力について理解できる点も興味深い。北京館のコンペには37の著名建築事務所による二十一のグループが参加したが、これらの特徴が「変形」プランが選ばれる要因となった。

「変形」を実行するのはLEDスクリーンを支える伸縮可能なロボットアームだ。北京館の外壁には80枚のスクリーンが使われている。音楽と動画に合わせて、球面から平面に変化させなければならない。ロボットアームに要求される基準はきわめて高い。まず決めなければならなかったのは液圧にするか、ギアにするかという動力伝達方式。そして50キロもの重さのLEDスクリーンを支えなければならないだけに、アームを伸ばした時、どうしても沈み込んでしまう。この問題を解決する必要があった。そしてもっとも困難な課題はデザイン以外の分野からやってきた。「低炭素モデル」を推し進める上海万博では、各パビリオンに厳格な省エネ基準が課せられている。省エネであり、かつ騒音を出さないようにしなければならない。この厳しい課題ゆえに「変形」プランは危うく中止されるところだったという。

騒音と省エネという課題から、最終的にロボットアームはアルミ合金構造が採用された。上下二組のロボットアームにより操作される。動力伝達手段はワイヤーローブとギアを組み合わせた電動方式で、端につけられたジョイントが回転を制御する。ロボットアームは最大2.5メートルまで伸ばすことができ、スクリーンは最大左右45度、上下90度まで回転が可能だ。

機械制御技術の専門家である華中科学技術大学の張華書さんによると、アルミ合金の剛性は鋼構造に劣るという。ロボットアームが最大限に伸びた時にも、スクリーン端のジョイント部の沈み込みは15ミリ以下に抑えなければならない算定だった。ミリレベルの判断が必要な精密機械にとって、剛性はきわめて解決できない課題となった。結局、アルミ合金に新技術による材料を添加することで剛性の強化に成功。沈み込みは六ミリにまで押さえることができた。

さまざまな形に「変形」するデザイン。そこには、伝統と近代、古めかしさと新鮮さ、昔ながらの情緒と日進月歩の発展とが同居する、3000年以上の歴史を持つ古都・北京の魅力が込められている。「変形」する北京館に足を踏み入れれば、この特別な魅力をさらに堪能することができる。

前部展示ゾーンでは四合院、胡同、そして「全聚徳」などの老舗が目玉。1950年代から2010年までの各時代の大事件と歴史的瞬間を流しているモニターで埋められた壁があり、北京の歴史を伝える。中心展示ゾーンでは中低速リニアから北京市の名前をつけられた人工衛星、地下水を保護する透水性レンガなど十以上もの代表的な北京のハイテクプロジェクトや新技術の展示が連なる。北京五輪や新中国成立60周年祝賀式典、チャン・イーモウ監督のショートフィルム『魅力の首都』など生き生きとした現代北京の魅力を見ることもできる。後部展示ゾーンでは未来の北京イメージを描いた壁や景観をかたどった彫刻など文化作品が展示され、来場者は世界的都市を目指す北京の壮大な未来像を目にすることになる。

見どころ

 1 チャン・イーモウ監督のショートフィルム『魅力の首都』

『魅力の首都』は著名映画監督のチャン・イーモウさんが北京館のために制作したショートフィルム。中心展示ゾーンにある80人収容の映画館で常時上映されている。放映時間は5分前後。「北京の音」を探し収録するレコーディングエンジニアとその助手という外国人の目から見た北京を描いている。「北京の音」を頼りに、都市のさまざまな場面が映し出される。

2 「インタラクティブ」に北京を体験

中心展示ゾーンではインタラクティブ体験が楽しめる。ボタンを押すだけで、エコロジーなナノテク技術を用いたアルミ製版を作ることができ、低炭素で環境にやさしいエコ技術が体験できる。また北京五輪聖火リレーで使われたトーチも展示してあり、入館者はトーチを掲げての記念撮影ができる。聖火リレーの思い出を振り返り、神聖な五輪精神に触れることができる。

3 見どころいっぱいの「イベントウィーク」

「北京イベントウィーク」では民俗イベントとパレードが開催される。「古い北京、新たな感動、流れる紫禁城」をテーマに、北京の「新十六景」が展開される。さまざまな服飾のパレードや無形文化遺産の展示から、北京の多元的な文化が味わえる。

●山車パレード ダンスと書のコラボレート 1400メートルのパレードには、飾り付けられた山車が登場。その場で山水画を描くパフォーマンスアートも同時に行われる。6台の山車には北京を象徴する人物、道具、アニメがいっぱい。車の回りではさまざまな衣装で着飾った出演者が、2009年に選ばれた北京の「新十六景」のパフォーマンスを展開する。

●舞台イベント ステージ「魅力の北京」 5月4日から8日にかけ、宝鋼大舞台と慶典広場の舞台で、1日2回、ステージ「北京の魅力」が開催される。室内の宝鋼大舞台は1回90分。慶典広場では1回45分のショーとなる。

●無形文化遺産 「北京茶館」宝鋼小舞台では「北京茶館」がオープンする。含灯大鼓(火をつけたローソク台を口にくわえ、歯で打ち鳴らす音で演奏する芸)、碗琴(お碗を叩いて演奏する芸)、太極長嘴壺茶芸(注ぎ口が数十センチもあるやかんを使い、アクロバチックなポーズで客の湯飲みにお湯を注ぐ芸)、民族音楽など伝統的な北京の芸能が披露される。

●合同経済説明会 5月5日には「魅力の首都・経済説明会」、翌6日には「プロジェクトマッチング商談日」が開催され、北京市の各区・県がすべて参加する。中関村を中心とした京北現代ハイテク産業ゾーン、亦荘開発区を中心とした京南現代製造業新区、そしてCBD(中央ビジネス地区)、金融街、凌空発展区、通州新区などが中心に紹介される。

 

北京館テーマ 首都の魅力――文化の北京、科学技術の北京、エコの北京

イベントウィーク 5月4日~8日

面積 600㎡

 

人民中国インターネット版 2010年5月13日

 

 
 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850