注目されるCO2吸収林  
 

王新玲=文

万博開催の半年間、会場に訪れた来場者の使用する交通機関は大量の二酸化炭素(CO2)を排出する。このため、上海市環境保護局など多数の関係部門は「万博緑色出行(エコ外出)林」プロジェクトを推進し、来場者と公衆が自主的に「万博エコ外出低炭素交通カード」を購入して、交通が生み出すCO2の排出を抑制し、かつ企業がこのために尽力するよう唱導している。全長98.9キロ、幅500メートルの「万博緑色出行林」は、その中和できるCO2の排出量が、万博開催期間中に産出される数百万トンのCO2に相当する。焼け石に水の分量といえなくもないが、別の意義もある。これによって多くの公衆がこれまで知らなかった概念――CO2吸収林(以下は「CO2吸収林」と略す)について理解し始めることになるだろう

メディアが「ゼロ炭素」や「低炭素」などをテーマとするパビリオンなどを次々と報道し、低CO2といった概念にどんなに盛り上がっても、ひとつの事実を覆い隠すことはできない。私たちにはCO2を一切排出しないなどということはできないということだ。たとえ、私たちが毎日小排気量の車を運転し、常に節水、節電、天然ガスの節約に気を使っていても、私たちはとどまることなくCO2を排出し続けている。

二〇〇六年、中国の三人家族の家庭の平均的なCO2排出量は二・七トンであり、当面、この数字は三~四トンに上昇している。中国では九億人が農村に住んでおり、彼らのCO2排出量は、はるかに都市住民に及ばないため、専門家の計算によれば、北京、上海、広州などの大都市における一世帯あたりのCO2排出量はすでに十トン近くになっているという。さらに、多くの企業ではどのようにしてもCO2排出量を削減することはきわめて難しい。

私たちはこのすでに既成事実となったCO2排出に向き合い、「処理」すればよいのであろうか? CO2吸収林は私たちにひとつの選択肢を与えてくれる。

CO2吸収林について

普通の人にとっては、CO2吸収林というのは非常に耳慣れない「専門用語」だろう。あるいはこのためか、中国の民間環境保全組織である山水自然保護センターの何毅さんは、多くの人はCO2吸収林に対してあまり詳しくなく、少しばかり知識がある自分のような者は専門家とみなされてしまうと、話した。

CO2を吸収し、酸素を排出するというのは通常の意味における森林の使命であるが、通常の森林のこの「機能」はただ環境をよくするためだけに使われ、商品にはならないことに対し、CO2吸収林は商品になることができる。「CO2吸収林は造林する前に相応の調査を行っており、CO2を吸収する目標は非常に明確になっている。したがって、CO2吸収林が形成する吸収量は認証を経てCO2排出権市場で交易できる。普通の森林は科学的な計算と評価を行っておらず、第三者機関の評価を経ていないために、それが吸収するCO2の量を取引することはできない。

多くの専門家は、CO2吸収林についての明確な定義はないと言う。私たちが実際、目にするCO2吸収林には主として二つの状況がある。ひとつは国連のCDMまたはVCSが認証した取引することのできる、もっとも専門的な意味でのCO2吸収林であり、もうひとつは、むしろより一般的に見られるような植樹・造林を通して公衆に対して行うCO2吸収の教育であり、これはなんらの認証も経ておらず、国際機関の評価も必要はないのである。

この二番目の行動を提唱していくことは大いに意味がある。というのも『京都議定書』の下では、私たちにはCO2排出の削減に責任は一切なく、人々の排出削減の行為はすべてボランティアのものであるため、CO2の排出量が認証を経るかどうかはそれほど重要ではなくなる。もし企業が単に責任の一端を履行しようとする場合、植樹・造林だけで十分。もし私たちの実施項目を国際企業や排出権の買い手に売りたいのであれば、国際的な第三者機関の認証を経ることが必要になる。

見直すべき植樹

一般の一世帯が出したCO2は、一体何本の木を植えることで吸収できるのだろうか? 山水自然保護センターによる中国西南部のCO2吸収林における実績値を参考にすれば、一本の木を植えて、三十年に0.111トンのCO2を吸収することができる。したがって、三人家族の家庭は毎年約五百本の木を植樹しなければ、彼らが一年間に排出するおよそ五トンのCO2を吸収できないのである。

まして、時間、樹木の種類、地方によって、実現できるCO2削減量も異なる。CO2の吸収の能力がもっとも強い樹木は、専門家は例外なく成長の早い種類の樹木を挙げている。「一本の木を掘り出してみてその重さを計ってみることを思い描いてみて、重ければ重いほど、その木のCO2の吸収能力は高いことになる」と、北京市園林緑化局CO2吸収林弁公室の何博士は語った。

しかし、私たちはCO2吸収のためだけに盲目的に成長の早い樹種を選択することはできない。「速生種の樹木のCO2吸収力はもっともよいが、植樹にあたっては、CO2吸収以外にも、生態を保護する必要がある。これらの速生種は外来種なので、中国に入ってくると、生態に好ましからざる影響を与えることがあり、マイナスの影響を与えることもある。「緑の砂漠」とはこのような樹木からなる林を指す。したがって、何を植えるかは多くの要素によって決まってくる。一面において、CO2の吸収力が強い樹木を選ぶ必要があるが、他面においてできるだけ当地の樹木を選ぶ必要がある。

選んだ樹木や植樹する時期が適切でしなければ、CO2を吸収する効果にもよくないかも知れない。CO2固定の効果が薄れ、CO2を吸収する効果がよくてもその他の面でよくない影響が出たり、生態に悪い影響が出たりする可能性もある。これらのことを十分に考える必要があることから、低炭素生活に植樹を通して貢献したいと考えている人々や企業は、専門機関の助力を求めるべきであると、何毅さんは提案している。中国石油公司が出資して、国家林業局が創設した「中国緑色炭基金」は選択のひとつとなろう。特に植樹を行ないたいが、量的には少ない人々にとってみれば、比較的適した選択肢である。このプラットホームでは多くの人々の力をひとつにまとめることができる。「そのCO2吸収林プロジェクトはまだ国連の認証を経ていないものの、比較的に信頼できるものである」と。

米国の自然保護協会、中国の山水自然保護センターなどの機構も、一般庶民が参加できるCO2吸収林プロジェクトを開発しようとしている。山水自然保護センターの「パンダ 排出CO2吸収プロジェクト」もそのひとつであり、このプロジェクトはすでに国連のCDM認証を得ている。四川省のパンダが生息している地方で、CO2を吸収するほか、パンダの本来の生息状態を回復することも目的のひとつとなっている。

現在、私たちはいったい何をすべきなのか? CO2の吸収量を算定する権威ある専用計算機をもってきて、私たちの日常生活がどれだけのCO2を生んだかを計算でき、その排出に対してそれなりの責任を担って考えてみよう。

 

人民中国インターネット版 2010年5月17日

 

 
 
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