5月3日午後 会場入り  
 

岡田紘幸=文・写真

作者
開幕の数日前に、上海へ。これからどんな万博ドラマが繰り広げられるのだろうか。とても楽しみである反面、初の海外生活に慣れるまでは苦労しそうだ。

案の上、数日間は慌ただしかった。まだ地下鉄の路線を把握するのにも一苦労で、夜は街で友人との会食の店へ行く道に迷い、また近くに大型スーパーがあるため、万博期間の生活のために下調べを兼ねて出かけているうちに、あっという間に開幕は直前だ。

開幕の前日。会場では夜の開幕式時、盛大に花火が打ち上げられる情報を得て、私は開幕式の一時間ほど前に南京路へ向かった。地下鉄2号線「南京東路」の駅ホームを降りると、大混乱の人だかり。「いよいよ中国十三億人のパワーが集まる万博の幕開けだ」と大げさに思い、一人興奮していた。なんだか、年越しを迎える気分でもあった。

待ちに待った、五月一日の開幕初日。私の気持ちの中では正月。この三日間、中国のゴールデンウィーク期間のためであろう、街は大勢の人でにぎわいを見せていた。しかし街中を少し外れると、外国人観光客の行かないと思われる場所などは、普段と変わらない風情があるように感じた。

開幕直後の万博体験記。ひとつ紹介したい。五月三日午後、会場入り。

日本の友人たちに、一番多く質問された心配事がある。それは「トイレは清潔かどうか」、中国には清潔なイメージがない声を多く聞く。そこはしっかり準備した万博、一部チェックしたところ、キレイで普通に使いやすかった。清掃員の配置も各トイレにあるようで、力を入れている様子がうかがえた。

ほか、会場内のイスやごみ箱は、今のところ問題なし。ただ、名古屋に住む私にとっては分別習慣があるため、何もかもを分別せずに捨てることに、そもそも抵抗あり。あとは、ゾーンを移動するため黄浦江(川)を渡る際に利用するフェリー(無料)に、食べ残し残骸を発見。中国を何度か体験した私にとっては、許せる範囲だが、初めて来た日本人はどう感じるだろうか。

と考えた時、中国が衛生面にさほど気を配っていないのか、日本が極端な清潔好きなのか、疑問に思うことがよくある。日本の基準が正しいのか、ただの価値観の違いか、世界レベルではどうなのか、半年間を通じて感じてみたい。

 開幕初日の南京路

また、会場内にいる情報インフォメーション担当のボランティアたちに着目。愛知万博の四倍もある会場内、地図を見てどれだけ予習しても、把握できない。そこで、目的地までの道を何度か聞いた。

日本語を使えるスタッフには出会えず、中国語か英語のみ。私は「こんにちは」程度の中国語と、地図を用いて片言の英語を使いながら、困った時は筆談で会話を試みた。でも、さすが万博前の研修を行い、かつボランティアを志願した若者たち。私の求める回答を懸命に理解しようとしてくれた。あたたかさを感じた瞬間だ。

この日、日本産業館やベストシティプラスティック区の大阪館も回った。そのレポートは次回に。やっぱり万博っていいなぁ、初めて目にするものが多くて、歩くたびにわくわくする。と同時に、語学の必要性を感じた。もっと万博スタッフと触れ合いたい!

ふと、今の上海暮らしを軸に将来を考えてみた。上海をはじめ中国で働くのも、ひとつの選択肢。ただし、昨年から数回に分けて上海へ足を運び、現地の日本人と話をしていると、確固とした軸がある人ばかりではなく、拘束から逃れて自由気ままにいたいから上海にいる、という人も多いように思う。外国なのに日本人とばかり付き合い、住んでいる国に対して興味は薄く、面白おかしく日々が過ぎていくだけだとしたら…。

そんな半年間は絶対にもったいない。まずは、語学学習だ。(つづく)

 

人民中国インターネット版 2010年5月18日

 

 
 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850