遣唐使船 千年の時を超えて  
 

単濤=文「遣唐使船再現プロジェクト」実行委員会事務局・単濤=写真

7世紀から9世紀にかけて、当時の日本は海外の情報や先進的な文化を求め、遣唐使を乗せた船を十数回も派遣して、唐代の中国を目指した。710年、平城京に都を置いて以来、遣唐使による中国と日本の交流はますます盛んになった。両国の友好交流に大きな役割を果たした遣唐使の派遣、その歴史と意義は今でも両国の人々の心に刻まれている。

再現された遣唐使船

上海万博開催の今年は、平城京遷都1300年の記念すべき年でもある。これを機に角川文化振興財団は「遣唐使船再現プロジェクト」を発案、遣唐使船を現代によみがえらせた。再現された遣唐使船は大阪港を出発し、当時の航路をたどりながら上海万博の会場を目指す。

知恵と工夫が凝集した再現遣唐使船

再現された遣唐使船は日本の主催側がデザインし、中国江蘇省の張家港市にある長明造船所で建造された。これまで、遣唐使船に関する史料はいろいろあったが、今回のプロジェクトで再現された遣唐使船は従来の説だけでなく、多くの専門家による最新の学説や見解を加えながらデザインされた。船体は長さが30メートル、幅が9.6メートル、船体の塗装は白を基調に赤と緑を配した明るい色調に仕上げられた。帆は二本のマストに竹で編んだ網代帆、さらにメインマストには麻布製の帆も加えた。左右の舷側にはそれぞれ十人ずつの漕ぎ手が乗る櫓棚を備え、手漕ぎもできる設計になっている。

船上には航海の神である住吉大神を奉斎する千木と鰹木を備えた社殿も設けられ、鳳凰かたどった船首など、再現された遣唐使船にはさまざまな発想と工夫が注がれている。造船現場に立ち合った遣唐使船中国側船長の王志強さんは「日本の設計担当者の意見に基づいて船を何回も解体したり組み立てなおしたり、ひとつひとつの部品にまで細かくこだわった」と、日本側スタッフの真剣さに感服した様子で語っている。

新たな思いを載せて上海万博へ

再現された遣唐使船は大阪港を出発して当時のように瀬戸内海から長崎・五島列島を経る航路をたどりながら、六月十二日の上海万博「ジャパン・デー」に合わせて上海に到着する予定である。日本側のゼネラルプロデューサーで角川文化振興財団理事長の角川歴彦氏は「上海万博の日本館は『つながり』を一つのテーマとしている。日本と中国のつながりの歴史を考える上で欠かせない『遣唐使船』を再現し、上海万博の成功に寄与したい」と、このプロジェクトに託した願いを語った。

この船に乗船するのは中日両国から選ばれた船員たちである。当時の衣装を身につけた現代の「遣唐使」たちはわくわくした表情で大阪港からの出航に臨んだ。

当時の衣装を着てあいさつする角川歴彦ゼネラルプロデューサー

 乗船する遣唐使船の船員たち

かつて船上勤務もしたことがある辻泰行さんは遣唐使船の日本側船員として久しぶりに船に乗った。懐かしい乗船でわくわくする彼は「ロマンあふれる航海は日中友好の新たな一歩につながります。プロジェクトへの参加は非常に意義があることなのです」と興奮気味に話していた。

六人の中国側船員を率いる王志強船長は二十一年の航海経験を持っている。「これまでの航海に出た時の気持ちと違って今回は使命感がより強く感じられます。中日友好の歴史を象徴する遣唐使船に乗って当時の航路をたどるのですから、きっとすばらしい思い出になるでしょう」と語る王志強船長は、「当時の遣唐使は中国の文明を日本に持ち帰った。千年以上の時が経った今、ハイスピードで発展する中国は日本から先進的な技術や経験を学んでいる。互いに学び合うことが両国の未来の発展にとってもっとも大事なのです」と力強く話を結んだ。

 

人民中国インターネット版 2010年6月11日

 

 
 
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