上海万博の旅  
 

中川美術館館長 中川健造

待ちに待ったその日が…

私にとって最も憧れの都市が上海であった。その上海に一九七六年、初めて訪問し感激したものである。黄浦江沿いのバンド(外灘)に立ち並ぶ石造り壁の高層ビル街に私は立ちすくんだ。蘇州河に架けられた外白渡橋で何故か涙がにじみ出て、しばし思いに耽ったこともあった。その大好きな上海で万国博覧会が開催されるのだから、今から私はワクワクしている毎日である。上海を訪ねたら「これもしたい」「あれもしたい」と、計画している。まず、世界最高の上海テーラーでカシミアの上着を仕立てることである。上海テーラーの技術と伝統は最も優れている。私が初めて上海に行った時に仕立てたのが上海テーラー仕立てのカシミアの上着であった。このカシミアの上着は、襟の部分には馬の尻尾の毛が埋め込まれて仕上げられたもので、型崩れせず、今でも軽やかに着こなしている。今回もぜひ仕立てたいと思っている。  

万博会場で買い求めた記念品

豫園の湖心亭で「茶芸」を堪能

上海は食文化もきわめて素晴らしい。食欲旺盛な私は今から舌なめずりしている。宿泊するホテルもクラシックホテルに滞在する予定だ。歴史的に伝統のある設備の豪華なホテルでホテルライフも楽しみたい。実は上海風呂にも強い興味を持っていたので、最初に上海を訪問した時に路地を通り、上海洗堂を訪ねたのである。身体がすっきりとして、青春がよみがえった状態になり、上海風呂のフアンになった。今回の上海訪問でも行きたい場所である。耳掃除、爪切りをして、身体を世界最高の上海風呂で洗いたいのである。有名な茶館のある豫園で風情豊かな庭園を眺めながらティータイムも楽しみたい・・・、など。  

私は上海万博に備えて計画を練っている。上海には夢があり、何でも叶えてくれる街、そして日々生まれ変わる街である。

今回上海万博に付随するいろいろな楽しみを紹介したが、次回は万博探訪記をお知らせしたい。皆さんもきっと上海の魅力の虜になることだろう。 

今見て 今語りたい 

午前5時起床し、ホテル周辺を散歩した。緑に茂った街路樹に囲まれた歩道をゆっくり歩いてまわった。私には憧れの上海であり嬉しくて、どんどんと歩いたものだ。心地よい散歩疲れの身体でホテルに帰り朝食をとった。さあ!今日は待望の上海万博の参観である。私は午前8時ホテルを出発し、専用タクシーで万博会場に向かう。30分で万博会場に到着した。大勢の入場者でごった返していた。私は、まず日本館に向かった。紫色のドーム型に作られた日本館では長い行列が出来ていた。続いてベトナム館、そして何かと話題の北朝鮮館に向かった。シャッターが降りているのかと思ったが来館者を迎えていた。ピョンヤンの街が壁面に映し出されシンボルの塔が作られていた。私は、小泉総理と金正日主席との記念切手を買い求めた。最初の買い物であった。続いて蒙古館に入り、ビルマ館にも入る。ビルマ館でヒスイがあったので購入しようと交渉したが値段が高額で断念した。

会場内を走る無料バスに乗って。娘が地図を参考に、次の見学パビリオンを案内してくれた

会場で昼食をとり一服した後、万博会場の真ん中を流れている黄浦江を連絡船で渡り、対岸の産業館地区に向かった。船のデッキでさわやかな風を受け新鮮な気持ちになる。会場内のテーマ館を見て回り、電気バスに乗り移動をした。連絡船に乗り少し一服し、電気バスで回ることをお勧めしたい。

私の最も興味を持っていた中国上海館「城市足跡館」に入った。敦煌の壁画や第226窟の釈迦、迦葉など五尊像などがあり私は目を皿にして見入ったものだ。そして紀元前700年の楽器、曹公乙墓の編鐘32鐘が展示され、演奏していたのでこの音色が聞けたことで私は興奮した。既にドレミハの音階がなされていたことには驚嘆したものだ。加えてチベットの至宝の仏陀像などが展示され、圧倒された。上海万博の最高の見所であろう。もう外は日が落ちていたが長時間鑑賞し大満足であった。食事の場所も十分あり、サービスも良くて、しかも適切な入場料だった。報道で知らされていたのとは違って、素敵な上海万博会場であった。                 

魅力的な上海の街  

上海万博を堪能した翌朝さわやかに目が覚めた。今日は上海市街を観光するので、朝から御機嫌である。ゆっくり朝食を食べたのち、淮海路通りの高級店舗街に出かける。私は上海で念願であった背広を誂えたいと上海高級テーラーに足を運んだ。すばらしい店構えで一瞬戸惑ったが店内に足を踏み入れた。店内の雰囲気は良くて、店員の対応も適切であった。世界最高といわれる上海技術者の採寸を終え、洋服生地は英国製の生地でしっかりしたものに決めた。仕立て上がりが楽しみである。30年前、上海テーラーで、私はカシミアの生地で替上着を誂えたが今でも当時のままで型崩れしない上海テーラーの抜きんでた技術である。注文を終えホッとして、錦江飯店に向かったが、私の好きなティールームでピアノ演奏も行われており、龍井茶の新茶を注文し楽しい時間を過ごした。ここで一服するのが大好きなのである。あなたも上海万博参観の際には立ち寄られては如何ですか。

上海市内の里弄(横町)料理の店で、名物の「小籠包」を注文した。

万博会場で中国館をバックに記念写真

一服の後、豫園に向かう。歴史があり、造りの素晴しい建物の豫園で、名物の小籠包を食べ、満腹になり屋根が反り返った湖上茶館に入る。この二階にある湖上第一茶楼に入ると歴史の重みと豊かさがあり、大富豪になった気分である。鶉卵や粽などが出され銘茶・大紅袍を飲みながら茶館で過ごす時間は、まさに至福のひと時である。十分に満喫した後に南京路に行く。歩行者天国となっており商店街での買い物でわくわくする。買い物好きの私は土産の小物を沢山買った。どれも美的センスが良くて、あれもこれも購入した。買い物天国の南京路は大好きな通りで何度来ても新鮮である。私の好きな紫砂の急須は高価であり、値が張ったが、万博記念に求めた。大事に使いたいものだ。アンティークな文物、現代アートなど貪欲に鑑賞した。そして歴史の風格と近代的な建築に圧倒されながら過ごした上海万博の旅であった。再び訪問したいものだ。

 

人民中国インターネット版 2010年6月16日

 

 
 
人民中国インタ-ネット版に掲載された記事・写真の無断転載を禁じます。
本社:中国北京西城区百万荘大街24号  TEL: (010) 8837-3057(日本語) 6831-3990(中国語) FAX: (010)6831-3850