上海の美しい奥座敷――蘇州  
 

沈暁寧=文・写真

中国四大名園の1つ、留園は明代に創建された(CFP)

中国にはこんな俗説がある――「上に天国あり、下に蘇(州)・杭(州)あり」。風光明媚な西湖で名高い杭州とみやびな庭園が集まることで名を馳せる蘇州は地上の天国も同じだ、というのである。古来、中国の人々は蘇州と杭州を江南地方の精緻をきわめ柔和で美しい文化の特色を有する街と認めてきた。杭州を湖に小船を浮かべて蓮の実を採る清純な少女にたとえるなら、蘇州は音曲もたしなむ娘にたとえられもしようか。ロマンチシズムと心地よい快感をもたらす江南の代表的なふたつの街、それが蘇州と杭州なのである。

中国四大名園の一つ――留園

留園は、北京の頤和園、承徳の避暑山荘、同じ蘇州の拙政園と並ぶ中国四大名園の一つとして、中国の伝統的な庭園芸術を代表する。留園は江蘇省蘇州市の閶門外に位置し、史料の記載によれば創建は明の天順四年(1460年)。清代には劉蓉峰の私邸となって寒碧山荘と改称され、俗に「劉園」とも呼ばれた。清の光緒二年(1876年)に中国近代の著名な実業家・政治家である盛宣懐の父親、盛旭人の所有になり、留園と改称されて今日に至っている。

静けさの中に続く曲がりくねった道

留園の敷地面積は約3万平方メートル。園内に建ち並ぶ建築物の数は蘇州にある庭園のなかでももっとも多く、楼閣、回廊、白壁、洞門などが築山、池、花木などとあいまって大小数十の異なる庭園風景を作り出す。園内の中央部は築山と池が織り成す山水の景で、清らかな水が山の峰を囲み、古木が高くそびえる。東部は建築が主で、江南様式の楼閣が軒を連ね、建物の間を回廊がめぐる。西部は木々が生い茂って山林の趣がある。北部は竹の垣根に囲まれた小屋が点在する農村の光景で、田園の風情が濃い。山水、田園、山林、庭園の四つの異なる風景が一つの園内に集中しており、中国の伝統的な造園技術の高度なテクニックと江南園林建築の芸術的な風格が存分に発揮されている。

正門から一歩園内に足を踏み入れただけで、留園の建築芸術における処理が並々でないことが分かる。入り口は狭く、両側の高い壁の間を50メートルほどの細い曲がりくねった道が続くが、園内の山水の光景が壁にうがたれた透かし窓越しに見え隠れする。やがて道が尽き、眼前に園内の景色がぱっと広がる。まずは抑える、という芸術効果が遺憾なく示されるのである。

留園を鑑賞するなら、建築から始めるのがいい。亭台、楼閣などの建築が敷地面積の三分の一を占めているからだ。園内の異なる景色は黒瓦を葺いたしっくい塗りの白壁で仕切られており、回廊でつながっている。白壁には二百余の造形もさまざまな透かし窓がうがたれていて、壁の両側の景色を点綴し、隔たれてはいても相互に景色が共鳴しあう。入園者はここに身を置くと目に入るのは、回廊が曲がりくねり、建物が奥まで続く極めて変化に富む建築の連なりであって、その妙に心を揺さぶられるに違いない。

 

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