浙江館 「竹立方」は江南のイメージから  
 

孫玲=文

このような小さな町は浙江省内のどこでも見られるだろう。人々は水に寄り添い、河辺で暮らす。浙江の人々がここに来ると、郷里のイメージそのままであると言うに違いない。

「竹立方(キューブ)」の外観(東方IC)

万博会場のセメントや鉄筋コンクリートの建築群の中に、静ひつな山間の眺めを探すことができるとは想像しがたいだろう。浙江館では、このような山紫水明の趣に満ち溢れた江南の町を奇跡的に復元している。

夢の中の江南がここに

浙江館は「竹の立方(キューブ)」と呼ばれる。江南の町の含蓄に富む人文の趣を体現するために、浙江館芸術総合設計士である中央美術学院公共芸術学院院長の楊奇瑞教授はイメージをふくらませた。なぜ、竹を選んだのか。楊教授の考えによると、「浙江は山水に恵まれ、至るところに竹があり、人々に愛されている。竹は一年中みずみずしい緑で、生き生きとし、浙江省の人々の精神を体現している」からである。実際は、これらは本当の竹ではなく、ステンレス鋼板を材料として、変化するLED照明を内蔵して、「彫塑式建築」の方式で造られている。白、薄緑、深緑、黄土色と、「竹の立方(キューブ)」は絶えず色を変え、まずは視覚の上で人々の目を引き付ける。

照明を使って再現された登り窯の大型模型(東方IC)

青々と生い茂る竹林を通り抜けると、目の前には幅5メートル、長さ20メートルほど続いた灰色の石畳を敷いた道が現れる。その両側にはくねくねと流れている小川があり、水の底には形もさまざまな青磁の器と玉石が見え隠れする。川岸に沿って埠頭から始まり、酒楼、茶館、米屋、雑貨屋、扉を閉めている民家、楼閣などが並んでいる。この濃縮されている江南の小町は、浙江のあちこちで見ることができるものだ。

巨大な青磁の碗の秘密

浙江館の中で技術的にもっとも感動した展示品は、口径八メートルの巨大な青磁の碗である。碗の表には彫刻がほどこされ、満開の蓮の花が描かれている。反射する光の中で「河姆渡遺跡の曙光」「西湖の名勝」「銭江の大潮」などの十幕に及ぶシーンが投影によって、水が満ちた巨大な碗の中に映し出される。碗の周囲の観覧台から八十人ほどの観衆が同時にこの美しい景色を見ることができる。十幕の景色の後は、碗の中にある蓮の葉が広がり、蓮の花が満開になり、ホールの周りの壁一面に桃の花と緑の柳が現れ、小雨が降り詩情に満ちた江南の風情が次々とかもし出す。

浙江は青磁の発祥地で、青磁を用いて浙江の美を代表させているのは意味深い。「碗には米があふれ、都には民があふれる」。楊教授は、巨大な碗は西湖であり、江南の水の調べでもあると語っている。同時にこの「碗」には浙江の人々を育んだ山水のイメージが表現されている。

展示されている「鶏毛換糖」に用いられる道具など 巨大な青磁の碗

エスカレーターで二階まで上ると、来場者は11個の口径一メートルほどの青磁の碗を見ることができる。映像では絶えず11の地区と市の姿が映し出される。これらの美しい景色を鑑賞し終わると、来場者には一杯の龍井茶のサービスがあり、そして茶を味わったあと、青磁の碗は記念に持ち帰ることができる。浙江館には30万個の龍泉窯特製の青磁小碗が用意されているという。

選ばれた浙江の六家庭

家庭は社会の基本的な単位だ。浙江館では六家族のもっとも浙江らしい家庭を選び出し、これらの家庭の歴史的変遷を通じて浙江の都市の変化を紹介している。

この六家庭は、武義兪源という古村の読書人の家柄である兪家、代々青磁の窯元である張家、杭州の絹織物の名家である汪家、臨海の古い街で古民家に暮らす載家、舟山で代々漁師である周家、そして義烏の「鶏毛換糖」(飴を持って鳥の羽などと交換する行商)を初めて行った周家。設計チームは六つの家庭の生活のシーンをつぶさに撮影して、都市がますます繁栄し、農村もますます豊かになる、歳月の移り変わりを表現した。都市と農村がともに繁栄する浙江のモデルを、この生き生きとした映像から知ることができよう。

 

人民中国インターネット版 2010年7月10日

 

 
 
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